CFOの役割とは?昨今求められる期待や仕事内容を解説

欧米企業の潮流を受けて、最近は日本企業でも「CEO」「CFO」などトップマネジメントをアルファベット3文字で表現する動きが生まれています。「最高財務責任者」を意味するCFOですが、財務・経理部長とは異なる大きな役割を持つ存在です。CFOは会社の全部門を見渡したうえで資金計画を統括する立場です。企業のお金の計画は、企業の未来業績を左右する生命線とも言えます。安易にCFOを設定してしまうと、本来得たかった成果を逃すだけでなく、社内で不要な軋轢なども生じかねません。最後までお読みいただければ、CFOの理解だけでなく「自社の場合はどう対応するか」という判断ができるはずです。CFOに関する基礎知識を学んでいただき、ぜひ自社にメリットがある形でCFOを設置するのか否かを検討いただければ幸いです。

「自社で初めて“CFO”というポジションを検討している」
「今も経理や財務部門はあるが、CFOは何が違うのだろうか」
「そもそもCFOは何の役割があり、設置すると今と何が変わるのだろうか……?」

欧米企業の潮流を受けて、最近は日本企業でも「CEO」、「CFO」などトップマネジメントをアルファベット3文字で表現する動きが生まれています。

「最高財務責任者」を意味するCFOですが、財務・経理部長とは異なる大きな役割を持つ存在です。
財務部長や経理部長は経理・財務部門のみを統括する立場ですが、CFOは会社の全部門を見渡したうえで資金計画を統括する立場です。

ただし、現在CFOがいない場合は、CFOが何の役割を担って、CFOがいると会社の動きがどのように変わるかがピンと来ないかもしれません。

この記事ではCFOが担う3つの重要な役割について、具体的に解説をします。

CFOの3大ミッション
  • 資金調達
  • 財務戦略立案
  • 内部統制・監査

ここまででCFOの役割が分かったとしても、自社でCFOを設定するべきかどうか、設定するならどのようなスキルの人が必要なのかが分からないと、検討も具体的に進みにくいでしょう。

記事の後半ではさらに、CFOはどんな場合にどんな人財をどういうルートで設定するのかまで解説します。

CFOを設定するために
  • CFOが必要な状況
  • CFOに求められる人財要件や調達ルート
  • CFOを設定する際の注意点

最後までお読みいただければ、CFOの理解だけでなく「自社の場合はどう対応するか」という判断ができるはずです。

企業のお金の計画は、企業の未来業績を左右する生命線とも言えます。安易にCFOを設定してしまうと、本来得たかった成果を逃すだけでなく、社内で不要な軋轢なども生じかねません。

今回の記事でCFOに関する基礎知識を学んでいただき、ぜひ自社にメリットがある形でCFOを設置するのか否かを検討いただければ幸いです。

 

1. CFOとは

CFOは「Chief Financial Officer(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)」の頭文字をとった略称で、日本語で「最高財務責任者」と訳されます。

CFO
Chief Financial Officer(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)
=「最高財務責任者」

具体的には、企業の財務・経理の戦略立案および執行面での責任者として、企業の“お金”に関わる全てを統括する役員ポジションです。

CFOは「(CEOの右腕として)経営戦略・事業戦略の立案」「財務戦略の立案及び実行」「管理部門の統括」が主な業務です。ベンチャー企業など規模が小さい組織の場合は、組織開発などHR領域まで業務が広がることもあります。

よく「CFOは経理部長や財務部長と何が違うの?」という声も聞かれます。
経理部長や財務部長は、経理・財務部門を統括する立場です。それに対してCFOは、経理・財務以外の社内の営業や管理、システム、研究・開発などさまざまな部門を見渡す必要があります。

また社内だけでなく、社外の視点も必要となります。市場の中での自社の立ち位置、あるいは市場がどのように変動しているのかなど常に把握しておくことも重要です。

【CFOと経理・財務部長との違い】
CFO 経理・財務部長
管轄範囲 全社 自部門のみ
機能 資金管理・資金調達 予算管理
視点 社内・社外(市場) 社内
ステークホルダー 社員・金融機関・VC・投資家・監査法人など 社員・取引のある金融機関

CFOは、これら社内および社外の環境を踏まえて、企業活動をお金の面からマネジメントしていく立場なのです。

 

2. 他役員とCFOとの違い

最近は日本企業でも「CxO」という役職をニュース等で見聞きすることが増えました。

CxOとは、「Chief x Officer」の略称で、Chief=組織の責任者、Officer=執行役を意味しています。xはそれぞれが担当する業務を表しており、「x」に入るアルファベットによって内容が異なります。

CFO以外に、代表的な4つの「CxO」を紹介します。

  • CEO(Chief Executive Officer)=最高経営責任者
  • COO(Chief Operating Officer)=最高執行責任者
  • CTO(Chief Technical Officer)=最高技術責任者
  • CIO(Chief Information Officer)=最高情報責任者
  • CMO(Chief Marketing Officer)=最高マーケティング責任者

最近は企業独自の「x」の肩書きを作る企業も増えていますが、まずは代表的な4つのポジションを覚えておくようにしてください。

2-1. CEO

CEOはChief Executive Officerの略で、日本語では「最高経営責任者」と呼ばれています。

CEOは会社の経営における全責任を負う立場にあり、経営や事業運営における最終の意思決定をおこなうポジションです。

日本のCEOはいわゆる社長や代表取締役を指すことが多く、会社の顔としての役割が求められます。社内の最終決定者としての判断力と責任が求められ、社外では会社の代表としての立ち振る舞いが注目される、社内で一番責任の重いポストです。

CEOとCFOの関わりイメージ
CFOは、CEOが掲げるビジョンを具体的な財務計画に落とし込み、資金を集め、財務面から事業リスクについてしっかりと指摘していく役割があります。

財務面をCFOがしっかりと管理することで、CEOは事業を作るという本来の業務に集中できるようになります。このような理由から、CEOとCFOはよく「経営者コンビ」と称されます。

2-2. COO

COOはChief Operating Officerの略で、日本語では「最高執行責任者」と呼ばれています。

COOは事業運営における業務執行を統括する役員であるため、最高経営責任者であるCEOのナンバー2としての役割を担っていきます。COOには、CEOが会長であれば社長、CEOが社長であれば副社長やそのほかの部長クラスなどが就任するケースが一般的です。

このCEOとCOOの頭脳プレイと実行プレイが会社の運営に大きく影響を及ぼすため、この2ポストは会社のカラーを左右するといわれています。

COOとCFOの関わりイメージ
CFOはCOOから指示をされた事業の執行計画をもとに、資金調達を行ったり各部門の財務計画への介入を行ったりします。

アメリカでは、意思決定のスピード感を持たせるために、「Cクラス型経営体制」と呼ばれるCEO、COO、CFOからなる3名の経営体制が採用されることも多いです。

2-3. CTO

CTOはChief Technology Officerの略で、日本語では「最高技術責任者」と呼ばれています。

国内では主に技術や開発を統括する役職にあたり、技術的な方向性、研究開発を監督するポジションです。ITエンジニアリングや特定分野への専門性が認められ、抜擢されることが多い役員です。

昨今はどのような業界であっても、ITやデジタル戦略が経営上の重要案件になる潮流があります。そのため、CTOはレベルの高い技術力が必要とされながらも、経営者視点も求められることになります。

CTOとCFOの関わりイメージ
CFOとCTOは直接的に業務で関わることは、それほどありません。

しかしIT投資は高額であることが多く、昨今は企業の将来的な成長に大きく影響を与える投資案件となります。CFOはCTOの描くIT投資戦略を資金面でアドバイス、あるいは指摘する関与が求められます。

2-4. CIO

CIOはChief Information Officerの略で、日本語では「最高情報責任者」と呼ばれています。

組織における情報の管理者として、情報の蓄積や体系化、保存、処理、分析計画の立案、そして管理を行います。情報こそがグローバル経済における通貨となりつつある今、情報を理解し管理するという独自の能力をもつ CIO の役割はより戦略的なものへと変わってきました。

情報を管理するために必要となるスキルもまた変化しています。 CIO に求められる役割は、単に IT を「管理」することから、組織が競争上の優位性を活かせるようにサポートすることへと変わってきたのです。今日の経済環境では、これからの CIO が企業の戦略的成長計画を推進し、市場機会を広げていくためには、情熱やリーダーシップに加え、技術的な裏付けのあるビジネス知識を重視することが求められています。

CIOとCFOの関わりイメージ
CFOとCIOは直接的に業務で関わることは、それほどありません。

CTOと同じく、情報を統括するためのITやシステムへの投資は高額であることが多く、昨今は企業の将来的な成長に大きく影響を与える投資案件となります。CFOはCIOの描く戦略を資金面でアドバイス、あるいは指摘する関与が求められます。

CIOについてさらに詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。『これからの最高情報責任者 (CIO)』

2-5. CMO

CMOはChief Marketing Officerの略で、日本語では「マーケティング最高責任者」や「最高顧客市場分析調査責任者」と呼ばれています。

主にマーケティングの現場を取りまとめ、今後のマーケティング戦略を立案することで経営に関与する役員です。インターネットの普及や企業ブランディングの重要性の観点から、企業経営とマーケティングを連携させるミッションを持ちます。

日本ではあまり聞きなれないかもしれませんが、 アメリカのフォーチュン500社のうち、62%がCMOを導入しており、日本でもグローバル企業や外資系企業などから徐々に普及してきています。

参考:日本企業のCMOの存在と競争力【早稲田大学】

CMOとCFOの関わりイメージ
CFOとCMOは直接的に業務で関わることは、それほどありません。

ただしブランディングが重要になる企業や、EC経由の売上げ比率が高い企業の場合は、CFOがマーケティング予算の妥当性などを管理することが必要とされます。
  • 〜その他のCxO〜
    その他にも、一般的にいわゆるCxOと言われる役員があります。ここでは名前のみ紹介させていただきます。

    • CHRO(最高人事責任者)
    • CDO(最高デジタル責任者)、(最高データ責任者)
    CFOは企業全体の「財務」を担うため、その他役員が「投資」や「資金」に関する課題を抱えた際に関わりが生まれます。企業によって役員の呼称、各役員の有無に違いはありますが、CFO自体の役割は変わりなく、企業全体への影響力を期待されます。

 

3. CFOの重要な役割3つ

いよいよCFOの重要ミッションの話に移っていきます。昨今特に重要視されているCFOの3つの役割は以下の通りです。

  • 資金調達
  • 財務戦略の立案・実行
  • 内部統制・監査

この3つについて、詳しく説明していきます。

3-1. 資金調達

企業は、事業を成長させるために資金調達を行います。CFOの重要ミッションは、借り入れを行って資金を調達を行い、事業成長を加速させることです。

資金調達には「融資」と「出資」の2種類があり、前者は金融機関などからの借り入れ、後者はベンチャーキャピタルや投資家に対して第3者割当増資(新規株式)を発行して出資を受ける形式を指します。

融資を受けるためには、財務諸表を整理したり、現実的な返済計画を提出したりする必要があるため、ファイナンスに関する知識が重要となります。 一方出資の場合は、ベンチャーキャピタルや投資家の候補リストを作ったり、発行する株式の数や種類について交渉したりといった業務が中心になります。

【CFOがいることで実現すること(例)】

  • 社外から資金調達を行うことで、社運を左右するレベルの大型の新規開発が行える
  • 借り入れの条件(期間や金利)を社外機関に交渉を行うことで、自社に有利な借り入れができる
  • 特定の金融機関に依存せず、状況に応じて取引する機関を柔軟に使い分けすることができる
財務部長は社内の資金管理がメインでしたが、CFOがいれば必要に応じて社外から資金調達を行ってダイナミックな事業運営ができるようになります。

~ バブル崩壊後、特に資金調達の役割の重要性が増した ~

日本では古くから外資企業による買い占めや乗っ取りを防ぐため、株式持合構造がとられてきました。しかし、経営上マイナス面も多くあるため、バブル崩壊とともに株式持合構造は崩壊しました。

バブル崩壊後は、株式持合やメインバンク制度が機能しなくなったため、間接金融に頼ることなく企業自身の力で資金を調達することを余儀なくされました。
投資家を重視する財務戦略が求められるようになり、専門的な知識やスキルを持ったCFOというポストの重要性が増したのです。

3-2. 財務戦略の立案

自社が利益を生み、成長していけるような経営・財務戦略を立てて実行することがCFOの役割です。適切な予算を組み、部署ごとに必要な資金を設定して配分します。

資金調達ができても、適切な予算配分を行わなくては、資金はすぐに底をついてしまいます。収益性の分析やコスト管理も行いながら、将来的に会社がどのようにお金を使っていくかを決める仕事もCFOが担います。

【CFOがいることで実現すること(例)】

  • 各部署からの希望予算の積み上げではなく、トップダウン方式で各部署で使える予算を割り振ることで、全社のコスト管理が強固になる
  • 見えている範囲のコスト予測だけでなく、将来的に起こり得るあらゆる要因を考慮した高度なコストシミュレーションが実現する
財務部長であれば、会社の予算オペレーションがメイン業務ですが、CFOの場合、会社の損益状況を把握するだけでなく、要因分析及び中長期の戦略立案までが期待されます。

3-3. 内部統制・監査

企業が健全に組織運営を行うために、CFOは内部統制・監査を行い組織基盤を盤石にする必要があります。

内部統制とは、企業の事業目的や経営目標を達成するために必要なルールや仕組みを構築し、適切に運用することを指します。ルールや仕組みには、業務の有効性・効率性、事業活動に関わる法令遵守、財務報告の信頼性、資産保全なども含まれているため、ほかの部門の社員とも連携や調整をしなければなりません。

また、企業内部だけでなく市場関係者や投資家との話し合いも重要です。上場企業であれば、企業の業績は株価形成に影響するので、企業の方向性や戦略的な考え方を持って適切に対応する必要があります。

【CFOがいることで実現すること(例)】

  • 健全な資金管理だけでなく、国際会計基準(IFRS)など今後のマーケットで必要となる新たな基準を取り入れた内部統制ができる
  • 株価に影響しそうな事業の展開を見越して、先んじて社内の部署に軌道修正などの介入ができる
財務部長も資金管理の観点で内部チェックを行いますが、CFOはさらに「企業価値が下がらないように」という観点を持ち、強制力を保ちながら内部統制する役割を持ちます。

 

4. CFOを設置した方がいい状況

CFOを設置した方がいいと思われる状況は、主に以下の3つとなります。

  • 資金繰り・資金調達が必要な場合(主に創業期)
  • 財務戦略・資金管理が必要な場合(主に業務拡大期)
  • 内部監査・内部統制が必要な場合(主に上場前)

詳しく3つのケースを説明していきます。

4-1. 創業期で資金繰りが必要

事業を成長するために資金調達が必要な場合はCFOを設置すべきでしょう。分かりやすいケースとしては、起業したばかりのスタートアップ企業で運転資金が少ない場合などです。

会社の創業初期であれば、CEOが投資家や市場関係者に企業のビジョンや期待できるリターンを説明する役割を担うことが多いかもしれません。
しかし、事業拡大するにつれ、資金調達の専門性や負担は高まります。そこでCFOに資金調達を任せて、CEOが企業経営に集中する体制が取られるのです。

ベンチャー企業に限らず、資金投入さえすれば事業がさらにスケールする期待がある場合は、CFOを設置して資金調達を進めるのがよいでしょう。

4-2. 拡大期で財務戦略・資金管理が必要

急激に事業が拡大すると、財務関連の業務量と管理する分野が大幅に増加します。全社の予算を適正に管理する必要がある場合は、CFOの設置を検討すべきといえます。

例えば、管理する科目が「従業員の雇用による人件費」「オフィス賃料」「広告宣伝費」「技術開発費」など多岐に渡る場合は、各科目について経営視点でチェックする必要があります。時には経営戦略をもとに、各部門の予算の使途についてトップダウンで降ろすこともあります。

部門最適で予算を申請・管理をしており、全社最適の視点が足りないと感じている場合は、CFOによる強力な介入が必要といえるでしょう。

4-3. 上場前で内部監査が必要な場合

上場を目指す企業は、CFOを設置してグループ会社を含めて内部監査・統制の整備にも力を入れる必要があります。

上場準備段階に来ると、CFOの業務は主に「内部統制構築」「監査法人・証券会社等の選定および渉外」となります。利害関係者(IR・財務・経理・管理・法務など)の増加と業務の複雑化に伴って、常勤のCFOが必要となるケースがほとんどです。

内部監査を厳密に行うためには大量の業務が発生します。CFO設置はもちろんのこと、企業規模によっては内部統制構築のために専属担当チームの結成も検討しなければいけません。

 

5. CFOに求められる知識・スキル

CFOに求められる代表的な知識・スキルとしては以下の5つがあります。

知識面 スキル面
  • 会計・財務知識
  • 法令知識
  • 組織運営スキル
  • コミュニケーションスキル
  • 経営意識・リーダーシップ

一つずつ詳しく説明していきます。

5-1. 会計・財務知識

CFOは、「企業会計」と「企業財務」のプロフェッショナルであるため、会計・財務部門の専門知識が求められます。

理想を言えば、上場企業の会計・財務部門やIR部門で実務経験を積んでいること、企業のIPO経験を有していること、税務知識に長けていること、などが挙げられるでしょう。

さらに、CFOには単純にデータ計算してまとめる能力だけなく、財務を分析して経営戦略に活かす知識や経験が必須です。
企業が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していくためには、分析データをもとに、戦略的・計画的に設備投資・研究開発投資・人財投資等を行っていかなければなりません。

また、グローバル化に伴って英語力や海外で仕事をした経験が評価される場合もあります。昨今では海外での決算業務や財務担当経験を持つ人財が重宝される傾向が強くなっています。

5-2. 法令知識

財務会計の実務知識だけでなく、その背景となっている法令知識も昨今のCFOには求められます。

具体的には、金融商品取引法などの法体系をはじめ、銀行法、保険業法などのファイナンスにかかわる事業者の業界に関する法令知識が必要となります。

またコンプライアンスの観点から、金融法規だけでなく、労務に関する法律や個人情報保護法についての知識もあるとなお良いでしょう。

5-3. 組織運営スキル

CFOは会社全体の部門予算に関与をするため、組織運営スキルも求められます。

CFOの役割を適切に果たすためには、経理部・財務部・法務部・経営企画部などさまざまな部署の人に協力を仰ぐ必要があります。 会社としての目標を達成し成果につなげるため、CFOは各部署に分担された業務がスムーズに回るよう全体を見渡してマネジメントを行わなければなりません。

企業のビジネスモデルと業界を深く理解し、各部門に建設的な提案を行うためには、経営視点と現場視点を両立した高い組織運営スキルが必要となります。

5-4. コミュニケーションスキル

CFOは社内だけでなく社外のステークホルダーと関わる機会が多いため、コミュニケーションスキルが求められます。

CFOが行う仕事の内容は企業会計と企業財務であり、会社における仕事の中でも専門性が高い内容といえます。財務計画を説明し、納得した上で社員に実行してもらうためには、専門的な内容であっても分かりやすく伝えるコミュニケーション能力が必須です。

またCFOは社内だけではなく、金融機関の担当者、投資家、VC(ベンチャーキャピタル)の担当者など社外の人との接点も発生します。外部の方に自社の財務について協力を仰いだり、そのための適切な説明を行ったりしなければなりません。

自社と社外の人たちの間で信頼関係を構築し、財務計画について安心感を持ってもらうよう配慮しながらコミュニケーションを行うのが、CFOにとって大切なスキルだと言えます。

5-5. 経営意識・リーダーシップ

CFOは財務の責任者であると同時に、企業の意思決定をおこなうための経営者です。そのため、経理や財務の経験だけでなく、経営意識を持って周囲を束ねるリーダーシップが必要となります。

企業を取り巻く市場の大きな流れの中で、自社の企業価値を高めていくためには、他社とどのように協業するか、不採算事業を売却するかなど、経営陣としての視線を持って考えていく必要があります。

時にはコストカットなどシビアな要望を各部門に強いねばならない場面もあります。そんな時も会社のリーダーとして、説得力を保ちながら全社を引っ張る強さが求められます。

以上、CFOに求められる知識・スキルについて解説してきました。

CFOは財務諸表だけでなく非財務指標に目を向けることも必要です。「人的資本」への投資などの非財務情報の開示ルールは2022年中に策定予定で、外部への情報公開に向けたデータの整理や可視化も求められています。企業全体への関わりを持つCFOに求められる知識・スキルの範囲は幅広い分野になります。

 

6. CFOを設置する方法

CFOのポジションを新設する場合は、主なルートとしては以下の3つがあります。

  • 内部の人間の育成
  • 外部調達
  • 社外CFO・業務委託CFO

一つずつ詳しく説明していきます。

6-1. 内部の人間の育成

従来からある「財務部長」「経理マネージャー」などのポジションの人財を、CFOとして育成する方法です。

ただしCFOは経理や財務部長の延長線上の位置付けではありません。
経営戦略をまとめ、マーケティング、ファイナンスなど多岐にわたる知識を駆使する必要があります。CEOの参謀として財務戦略を実現するレベルに達することは相当の学習期間とコストが必要です。

また、CFOとなるに当たっては、CEOやCOOに対して意見が言える必要があり、内部昇格でCFOに就任した場合に取締役会等で高度な立場から意見が言えるかは未知数となります。

メリット デメリット
  • 外部採用ほどコストが発生しない
  • 社内事情に精通している人財がCFOポジションを担える
  • 育成に時間がかかるため、急いでCFOポジションを作るには不向き
  • 既存権益や習慣に引っ張られるリスクがある

前述したようにCFOは経理や財務部長とは異なる知識やスキルが必要となるため、OJTのみで育成をするのは困難と言えます。
外部のCFO育成講座など専用プログラムを受講する場合、一般的に期間は半年~1年程度必要となり、受講料も100万円ほど必要となります。

6-2. 外部から調達する

社内ではなく、外部の転職エージェントやヘッドハンターを通じて、社外の人間をCFOとして採用する方法です。

昨今では公認会計士や金融機関出身者等スペシャリティ人財を専用とした転職エージェントがあります。社内からCFOを育てられない場合や、CFOに相応しいバックボーンを持っている人財へのルートがない場合は、エージェントを頼るのも一つの手段です。

メリット デメリット
  • 社内にいない専門性を持った人財を採用できる
  • CFO設置を急ぐ場合でも、即戦力人財が確保できる
  • コストが発生する
  • 経歴や専門性などを適正に評価することが必要(でないと、社内に軋轢が生じるリスクもある)

エージェントを利用すると、採用者の年収の20%~30%をマージンとして支払うのが一般的です。
仮に年収1,000万のCFOを採用する場合、人件費1,000万だけでなく、200万~300万はエージェントへのフィーが発生することになります。

6-3. 社外CFO・業務委託CFOを設置する

フルタイムでの社員雇用ではなく、社外CFOや業務委託などスポットでCFOを設置する方法です。

昨今はコーポレートガバナンス意識の高まりから、あえて社内の人間でなく社外の専門家の観点を導入する企業が増えています。2014年時点で、東証一部上場企業の社外取締役の導入企業は74.3%となっています。

参考:「社外取締役の導入と企業価値」(三菱UFJ信託銀行)

社外CFOを活用することで、採用コストや人件費を抑えることができるとともに、業務に合わせた最適な人財を雇用することができます。

メリット デメリット
  • ピンポイントでCFOが必要な場面のみサポートをしてもらえる
  • 該当人財がいれば、即戦力人財が確保できる
  • コストが発生する
  • 契約形態によっては、期間が限られる(相手の事情で契約期間が終了することもある)

社外CFOや業務委託CFOを設置する場合、候補となる人財に心当たりがあるかどうかが重要となります。地道ですが、他社CFOからの紹介や現在他社で社外CFOを担っている人への声がけなど、人のサーチから始める必要があります。

 

7. CFOを設置する際の注意点

いざCFOを迎えるにあたり、昨今の企業情勢を踏まえると以下の点に注意が必要となります。

  • 中長期目線でCFO設置に取り組みこと
  • データベースの仕組みを整えること
  • 組織的にCFOの教育体制を作ること

各々どのような準備が必要か解説します。

7-1. 中長期目線でCFO設置に取り組むこと

CFOの設置を検討するなら、ある程度中長期の目線で取り組む必要があるのです。

これまで述べてきたように、現在CFOがいない会社がCFO設置に取り組むことは、非常に難易度が高いことになります。

社内育成にしても半年~1年の期間を要しますし、外部採用をするにしても人口の少ないCFO候補を転職マーケットで見つけ出すのはある程度の期間もコストも必要でしょう。

つまり、CFO設置が急務になってから準備を始めても、間に合わない可能性が高いです。将来に向けてCFOの必要性を感じているのであれば、今の段階から準備を進めておくようにしましょう。

7-2. データベースの仕組みを整えること

CFOはお金を統括するポジションなので、当然データを多く扱います。社内データに容易にアクセスできるような仕組みがないと、CFOがデータ探しやデータ分析に時間が取られることになってしまいます。

またCFOは単なる予算管理ではなく「事業上、適正なお金の使い方をしているか」をチェックします。したがって、資金以外に社内人件費や発生工数など、各種データベースが一元管理されていることが望ましいです。

特に社内事情に明るくない外部のCFOを採用する場合は、データベースの仕組化を整え、CFOが本来業務に集中できる環境を整えることが重要になります。

7-3. 組織的にCFOの教育体制を整備すること

CFOは今後ますます重要性が増すポジションなので、一人のCFOに依存するのではなく組織的にCFOを育成する体制作りも重要となります。

日本CFO協会が行った調査によると、「今後CFOが対応すべき課題」として、78%の企業が「グローバル化をリードする人財の獲得・育成」と回答しています。国際競争が激化していく環境では、海外展開などを視野にいれたCFO人財の育成が急務となっているのです。

参考:企業のグローバル化に伴う財務・リスク管理体制の実態と課題【日本CFO協会】

CFOポジションを新設して終わりではなく、将来的にCFOを担える次世代リーダーが育つ環境づくりも整えるように留意してください。でないと、CFO一人に業務負荷が集中しすぎてしまい、早期離職などにも繋がりかねません。

 

8. まとめ

今回の記事では、CFOの役割やCFOを設置する方法について紹介してきました。 あらためてこの記事のポイントをまとめます。

  • ◎ CFO(最高財務責任者)の役割は3つです
    • 資金調達
    • 財務戦略の立案・実行
    • 内部統制・監査
  • ◎ CFO(最高財務責任者)を設置した方がいいのは以下3つのケースです
    • 資金繰り・資金調達が必要な場合(主に創業期)
    • 財務戦略・資金管理が必要な場合(主に業務拡大期)
    • 内部監査・内部統制が必要な場合(主に上場前)
◎ CFO(最高財務責任者)に求められる知識・スキルは以下の通りです
知識面 スキル面
  • 会計・財務知識
  • 法令知識
  • 組織運営スキル
  • コミュニケーションスキル
  • 経営意識・リーダーシップ
  • ◎ CFO(最高財務責任者)を設置する方法は以下の3つです
    • 内部の人間の育成
    • 外部調達
    • 社外CFO・業務委託CFO
  • ◎ CFO(最高財務責任者)を設置する際の注意点は以下3つです
    • 中長期目線でCFO設置に取り組みこと
    • データベースの仕組みを整えること
    • 組織的にCFOの教育体制を作ること

CFOは今の日本では馴染みの薄いポジションかもしれませんが、ビジネスのグローバル化が進む今後を考えると、多くの企業で必要となる役職でしょう。

企業の生き残りにはお金が絡むのは言わずと知れた事実です。CFOを設置することで、盤石な資金面をベースに思い切ったビジネス展開も可能となります。
ただしCFO設置は難易度が高く時間もコストも必要となるため、CFO設置を前向きに検討されている方は、当記事をお読みいただき、着手できることから準備を進めていただければ幸いです。

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