CFO が今すぐ AI を活用するための 6 つの方法

このブログでは以下についてご紹介します。

• CFO の役割の変化
• CFO が AI を活用するための 6 つの方法
• 将来を見据えた戦略の構築

人工知能 (AI) は、企業のあらゆる分野に影響を及ぼしており、財務部門も例外ではありません。先進的な CFO たちは、AI ツールを活用して業務の拡大、精度向上、高度なデータ活用を実現し、急速に進化する業界の中で優位性を維持しています。そのためには、CFO 向けの AI の最適なユース ケースを把握しておくことが不可欠です。

Workday の調査によると、財務分野における AI のパイオニアの過半数 (52%) が、財務や調達管理の分野において、AI および機械学習は、意思決定、データ分析、生産性に最適化とイノベーションをもたらす「ゲーム チェンジャー」だと考えています。しかし、そうしたパイオニアと一般的な財務リーダーの間にはギャップがあり、AI の可能性に前向きな見解を持つ財務リーダーは 39% にとどまっています。

AI 活用が進んでいない企業は、競合他社に比べて、非効率的で不正確、かつ戦略性に欠けた財務部門となるリスクが高まります。とはいえ、社員に過度な負担やディスラプションを引き起こすことなく、CFO が AI を財務業務に統合するための有力な第一歩は存在します。本記事では、その具体的な方法について詳しく解説していきます。

AI 時代における CFO の役割の変化

CFO という役職の意味は、かつてとは大きく変わってきています。以前は主にコスト管理や予算監督といった役割に重きが置かれていましたが、現在では、CFO は戦略的な貢献者であり、意思決定の担い手でもあります。彼らは他のエグゼクティブ リーダーと協働します。最高経営責任者 (CEO) と連携してパフォーマンス管理や経営戦略を推進し、最高情報責任者 (CIO) と共に AI のようなテクノロジーを財務部門に導入する方法を決定しています。

中でも、CFO と CIO の関係性は極めて重要です。なぜなら、デジタル財務の変革は、データドリブンのビジネス環境において企業が競争力を維持するための鍵となるからです。現状では、CFO の 50% が、必要なデータが入手できず、直感に頼って意思決定をせざるを得ないと回答しています。

CFO のこの障壁を取り除く上で中心的な役割を果たすのが CIO です。適切な AI 搭載の財務管理ソフトウェア ソリューションを導入することで、IT 部門は財務部門が正確で最新かつ即時に活用できるデータを確保できるよう支援できます。これを実現するためには、CFO 自身がテクノロジーに関する基本的な知識を強化していく必要があります。AI による日々の運用を改善する方法を理解できなければ、CFO は競争から取り残されてしまうでしょう。

最も重要なのは、CFO が AI を人間の従業員に取って代わるものではなく、人間の能力を強化する存在として受け入れる文化を醸成することです。Workday の CFO である Zane Rowe は次のように的確に表現しています。「AI は、私たちが今日行っている多くの業務を補完することになるでしょう。そして、それは組織図のどの位置にいても、より多くの価値を生み出すてこになります」

CFO は、AI が財務部門にもたらす新たなチャンスに注目し、AI を活用して日々の成果をより良いものにできるよう、率先して戦略的に道を切り拓いていかなければなりません。

CFO が AI を活用するための 6 つの方法

AI の導入はまだ発展途上ですが、今すぐにでも CFO が取り組むべき重要な活用方法を 6 つ紹介します。

1.よりスマートな予測

AI を活用することで、CFO は最新のデータに基づいてリアルタイムで調整される予測を構築できます。例えば、機械学習モデルを使用すれば、売上動向、サプライチェーンの状況、商品価格などの外部要因を統合し、動的な予測を実現できます。このような予測は手動で再調整する必要がなく、データが更新されるたびに予測が自動的に調整され、状況の変化に迅速に対応できます。

これにより、CFO は例えば顧客需要の鈍化による収益の急減といったリスクを早期に把握し、事前に対策を講じることができます。AI は継続的に更新されるシナリオを提供する機能を備えているため、オペレーションや営業部門との連携も強化され、過去の推定に頼ることなく、実際のパフォーマンスに基づいたリソース割り当てが可能になります。

生成 AI を活用すれば、従来の予測 AI モデルを超えた複雑なシナリオのシミュレーションも可能です。例えば、投入費用の変動、金利の上昇、サプライチェーンのディスラプションといった要因に対して詳細な What-If 分析を実行します。この機能により、CFO は複数の結果を同時に比較検討でき、自信を持って最適なアクション方針を選択できます。

したがって、CFO は推測ではなく正確な分析に基づく意思決定が可能となり、財務部門は予算を動的に調整し、リターンを最大化する資本配分ができるようになります。 

2.戦略的プランニング

市場拡大や設備投資などのイニシアチブの評価において、AI は数千もの変数を基に潜在的な結果をモデル化します。例えば、CFO が新市場への参入を検討している際は、AI を使用して、運用コスト、為替リスク、さらには競合他社の動向に対する収益拡大の予測まで分析できます。その結果、より迅速かつ正確な財務計画と意思決定が可能になります。

また、AI により複数のシナリオを合理的にテストできるため、CFO は複数のモデルを手動で構築するのではなく、多くの条件にわたってリスクとリターンを数分で評価できます。財務リーダーは、長期目標に沿って戦略を改良し、新たな機会や制約に迅速に対応できるようになります。

3.プロセスの最適化

AI は、財務プロセスの摩擦を軽減し、戦略的成果を生み出す余地を創出します。例えば、決算処理プロセスでは AI が照合を自動化し、複数のシステム間で仕訳入力を統合します。CFO は手動による更新を待つ代わりに、差異に関するリアルタイムのインサイトにアクセスできるため、問題が深刻化する前に解決に先手を打つことができます。

予算のレビューも AI が価値を付加することのできる領域です。AI が過去とリアルタイムの支出データを分析し、重複するソフトウェア契約や未活用のリソースのような非効率な支出を特定します。CFO はこのようなインサイトを活用して契約を再交渉したり、より価値の高いイニシアチブに予算を再配分したりできます。

さらに、AI は財務運用を構造化します。例えば、企業全体のキャッシュフローのパターンを監視し、企業間取引の最適なタイミングを提案することで、手数料の削減や流動資産の換金能力の向上を実現します。CFO は、手元資金が効率的に配分され、なおかつ日々の業務ニーズが満たされているという安心感を得ることができます。

4.報告の強化

AI は財務レポートに待望の変革をもたらします。データ集計や検証を自動化することで、AI ツールはシステム全体で手動での情報の確認作業を削減し、エラーを減らして決算サイクルを大幅に短縮します。CFO にとって、これは正確な財務結果をより迅速に提供することを意味し、それによって企業がインサイトに基づいた行動をより早く取れるようになります。

AI はまた、鋭い異常検知機能を備えています。膨大なデータセットをスキャンし、手動のレビューでは見逃しがちな不整合や異常な入力にフラグを立てます。例えば、支出の傾向が想定されていたパターンから逸脱している場合、AI はそれを即座に表示し、報告期限前に財務部門が調査できるようにします。

さらに、AI は財務データの伝達方法も強化します。AI を搭載したプラットフォームは、複雑な指標を明確なアクショナブル インサイトに分解したダッシュボードを生成します。CFO はこれらの表示を、採算性に焦点を当てた取締役会でのプレゼンや、予算差異に関する部門別の要約など、様々なステークホルダーごとにカスタマイズすることができます。これにより、財務部門以外の意思決定者でも数値の背景にあるストーリーを理解できるようになります。 

5.運転資本の管理

AI は CFO にキャッシュフローのリアルタイムな可視性を提供し、それにより運転資本をより正確に管理できるよう支援します。定期的なレビューに頼るのではなく、AI は資金の流入、流出、支払いパターンを継続的に分析し、最適化の機会を特定しながら不確実性を低減します。

例えば、AI は、重要な経費のための流動性を維持しつつ、早期支払い割引を最大限に活用できるよう、サプライヤへの支払いの最適なタイミングを提案することができます。売掛金の管理においても、AI は顧客の支払い行動を分析し、延滞する可能性が高いアカウントを予測し、信用条件の見直しや優先的なフォローアップといった積極的な対策を提案することが可能です。

在庫管理にも AI の効果は及びます。AI は販売予測やサプライチェーンのデータと連携することで、CFO が在庫を需要と整合させ、過剰在庫を最小限に抑え、不足を回避するのに役立ちます。これにより、運転資本が真に価値を生む領域にのみ使われ、全体的な効率性が向上します。

その結果、財務機能は、事後対応型から先手を打つ行動型へと進化します。AI を活用することで、CFO は運転資本を最適化し、借入の必要性を減らし、成長施策をサポートしつつ、キャッシュフローのディスラプションから組織を守ることができます。このような高い統制力により、財務部門は事業の安定性を維持し、採算性を推進する戦略的パートナーとしての地位を確立するのです。

6.監査とコンプライアンス

AI は監査およびコンプライアンスの複雑なプロセスを軽減し、CFO に対して精度を高めつつ、万全の体制を整えるためのツールを提供します。AI は財務取引を継続的に監視し、異常や潜在的なコンプライアンス違反をリアルタイムで検知します。

例えば、ある取引が既定のパターンから逸脱していたり、承認の上限を超えていたりする場合、AI はそれに即座にフラグを立て、迅速な調査と対応を促します。

法令遵守も AI によってより効率的に行えるようになります。AI は大量のリアルタイム データを法的要件と照合することができるため、変化し続ける税制への対応や財務開示の妥当性確認といった作業において、AI は手作業の負担を軽減し、見落としのリスクを最小限に抑えます。CFO はすべての取引や修正履歴を追跡する自動化された監査証跡に依拠することができ、これにより社内外のステークホルダー双方が求める透明性を確保できます。

さらに、AI は監査のプロセスそのものも簡素化します。サンプル データを精査するのではなく、監査担当者は完全なデータセットを分析できるため、企業の財務状況をより包括的に把握することが可能になります。これにより、従来型の監査方法に比べて時間とコストが削減され、CFO は情報提供のリクエストに迅速に対応できるようになります。

将来を見据えた AI 戦略の構築

財務部門への AI 統合の道のりは決して平坦ではありませんが、その可能性を受け入れる意思のある CFO にとっては、得られる成果は極めて大きな変革をもたらします。AI は、財務リーダーが複雑な管理をより効果的に行い、精度を向上させ、チームをより鋭いインサイトとアジリティでリードすることを可能にします。

Workday のグローバル CFO 指標調査レポートでは、AI が財務部門に広範な影響を与えていることが確認されており、収益予測、予算編成、リスク管理、シナリオ プランニング、報告など、財務に関わる複数のプロセスが AI によって大きく変革されつつあることが示されています。

財務分野における AI のパイオニアと、まだ導入に慎重な人々の間のギャップは、今が分岐点であることを物語っています。今すぐアクションを起こす CFO は、業界の流れに追いつくだけでなく、自社における成功の定義を塗り替えることになるでしょう。AI を積極的に導入している財務部門のパイオニアたちは、収益の増加やコスト削減のような自身の職務に直接関連するメリットに加えて、組織のアジリティや社員エンゲージメントの強化といった、より広範な成果を AI がもたらすと、高い信頼を寄せています。

忘れてはならないのは、AI の導入は一夜にしてすべてのシステムやプロセスを入れ替えることではないということです。重要なのは、小さく始めて、インパクトの大きい分野（収益予測、コンプライアンス、レポートなど）に焦点を当て、そこから徐々に拡大していくことです。AI を脅威ではなく強化ツールとして捉える文化を築くことが、スムーズな移行と持続的な導入を可能にします。

CFO にとって、今や AI は単なる業務効率化の手段ではありません。それは、財務部門が企業におけるイノベーションと成長を牽引するための戦略的な武器なのです。

Workday は、CFO が戦略的リーダーとして力を発揮するための業界最先端の AI 財務ソリューションを提供します。Workday と共に自信を持って未来をリードする方法をご覧ください。