DXを進める課題とは?多くの企業が失敗しがちな5つのポイント

今や日常生活や行政レベルでも話題になっているDX(デジタルトランスフォーメーション)。日本では2018年に経済産業省がDXに関するレポートを発表して以降、国内企業でもここ3年ほどDX推進の取り組みが加速しています。しかしニュースなどでは「DXの成功事例!」のような華々しい話題よりも、「DXの遅れ」「DXの課題」など、ややネガティブな話題が多いのも実情です。もし今後自社でDXに取り組むとしたら、果たして他社ではどのようなことに苦労しているのかは、ぜひ事前に知っておきたいポイントでしょう。まずは自社が課題を乗り越えられるかどうかを検討するのがDXの第一歩目となります。

「世間で話題になっている‟DX”だが、自社もそろそろ取り組むべきなのだろうか」
「日本企業でDXがうまく行っていないとよく聞くが、一体なにが原因なのだろう」
「もし自社でDXに取り組む際は、何に注意したらうまくいくのだろう……?」

今や日常生活や行政レベルでも話題になっているDX(デジタルトランスフォーメーション)。
日本では2018年に経済産業省がDXに関するレポートを発表して以降、国内企業でもここ3年ほどDX推進の取り組みが加速しています。

しかしニュースなどでは「DXの成功事例!」のような華々しい話題よりも、「DXの遅れ」「DXの課題」など、ややネガティブな話題が多いのも実情です。
実際、DXに取り組んでいる企業のうち、成果を感じている企業は40%と半分に満たない調査結果もあります。

出典:『日本企業の経営課題 2021』 調査結果速報 【第3弾】|一般社団法人日本能率協会

もし今後自社でDXに取り組むとしたら、果たして他社ではどのようなことに苦労しているのかは、ぜひ事前に知っておきたいポイントでしょう。

DXを推進するにあたっては、多くの企業が共通でつまずく5つのポイントがあります。
拙速にDXを進めるのではなく、まずは自社が課題を乗り越えられるかどうかを検討するのがDXの第一歩目となります。

DXを進める上での5つの課題
  • 経営戦略上でのDXの位置づけが不透明
  • IT人財を確保できない
  • 外部べンダーに依存し過ぎている
  • 既存システムがブラックボックス化している
  • IT投資が進んでいない

ここまで読めば、一般的なDXの課題と、自社が重点的に克服すべき課題の目処がつきます。
しかし実際にDXを推進していくためには、課題の理解だけでなく、課題を乗り越える必要があります。

記事の後半では、実業務としてDXを進める上での課題の乗り越え方や事前に準備すべき内容も踏み込んでお伝えします。

DXを進めるために
  • 日本のDXの現状や取り組まないと起こること
  • DXの課題の乗り越え方
  • DXの推進の準備ステップ

最後までお読みいただければ、通り一遍のDXの課題を知るだけでなく「自社の場合、どのような段取りでDXを進めていくか」という目処が立てられるはずです。

これだけ世間を賑わせているため、DX化はどんな企業でも重要課題であることは間違いありません。しかしうまく行っていない企業が多いのは、共通してつまずくポイントへの対処が不十分なことが考えられます。

今回の記事でDXの課題のリアリティを高めていただき、自社で推進する際には少しでも成果を出せるような実践的なDX取り組み計画を組んでいただければ幸いです。

 

1. DXを進める上での5つの課題

DXを進める上での課題は細かく見ていくと各企業でさまざま異なります。 ただし多くの企業でつまずくポイントを見ていくと、以下の「方針」「体制」「システム」に関する5つの課題に集約されます。

<DXに関する5つの課題>
方針に関する課題 体制に関する課題 システムに関する課題
  • 経営戦略上でのDXの位置付けが不明確
  • IT人財が確保できない
  • 既存システムのブラックボックス化
  • 外部ベンダーに依存し過ぎている
  • IT投資が進んでいない

5つの課題について、詳細に内容を解説していきます。

1-1. 経営戦略上でのDXの位置づけが不透明

やや厳しい言い方となりますが、DXという流行り言葉に踊らされてしまい、経営戦略レベルにDX化の方針が組み込まれていない企業は一定数存在します。

経営レベルで「DXを進めて実現したい姿」が明確になっていれば、予算や体制を整えた上で、経営上優先順位を上げて強固に推進が進むはずです。
しかし何となくDXを始めてしまうと、プロセスで何か予想外の出来事や環境変化などが起こると、推進は頓挫することになってしまいます。

経済産業省のDX推進ガイドラインの序文にも、「デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかについての経営戦略や経営者による強いコミットメント、それを実行する上でのマインドセットの変革を含めた企業組織内の仕組みや体制の構築等が不可欠である」と明記されています。

経済産業省のDXガイドラインとは
経済産業省は2018年12月に、DXを推進することを目的として「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を公表しました。

内容は、大きく「(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「(2)DXを実現する上で基盤となる IT システムの構築」の2つの項目で構成されています。

◆ 参考:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」

経営層がDXをビジネス変革レベルではなく、単なる業務のデジタル化として捉えてしまうと、推進プロセスがスムーズに進まず課題現象として表出しがちです。

  • 【よくある課題現象】
    • 方向性レベルでは経営承認が下りていたのに、進捗報告の過程で「やる意味あるの?」と経営から横槍が入る
    • 各部署が自部門最適で動き出し、判断の拠り所となる大きな経営戦略がない

経営レベルにこだわる理由は、DX化今現在は問題現象が起こっておらず、緊急度が高くない取り組みであることが多いからです。
数年に渡って取り組む中では、ビジネス上緊急度が高い案件が飛び込んで来ることもあるでしょう。その際、経営レベルでDX化の方針が強固でないと、DX推進は後回しになってしまうからです。

1-2. IT人財を確保できない

「IT後進国」と呼ばれる日本では、DX化をしたいと思い立っても、推進できるIT人財を確保できない企業が多い実情があります。

外部から採用しようにも、国内ではIT人財の不足は深刻です。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によれば、2030年には45万人以上のIT人財が不足すると推計されています。
あらゆる企業がDXを推進するために必要なIT人財の数が足りておらず、今後ますますIT人財の獲得競争は激化するでしょう。

参考:IT人材需給に関する調査【経済産業省】

さらに悩ましいのが、DXに必要なのは単なるITエンジニアではない点です。DXの推進にはエンジニアだけでなく、ビジネスをデザインできる人財やイノベーターが必要となるので、さらに人財確保の難易度は上がります。

  • 【よくある課題現象】
    • DX推進のためにIT人財を外部採用しようとしたものの、人財獲得競争が激し過ぎて採用フェーズでDX計画が止まってしまった
    • システム部門の既存社員にDXを担わせたのだが、機能改修レベルの提案しか出てこない

外部からDX推進人財を採用するには、他社に負けない採用条件を準備する必要があります。かといって既存のIT社員をDX推進人財に育成するには、多大な時間やパワーが発生します。
IT人財を確保する壁が高すぎて、描いたDX計画が遅々として進まない企業が散見されることになるのです。

1-3. 外部べンダーに依存し過ぎている

システムを使う企業の多くは、システム開発や運用を外部ベンダーに頼る傾向があります。その影響で、いざ自社でDXを進めようとすると、外部にかなりの範囲を依頼せざるを得ない状況に追い込まれます。

DX化が既存システムの機能改修レベルなら良いのですが、新規でシステム開発をするとなると膨大なコストが発生します。さらに外部ベンダーに依頼する際は、社内の業務プロセスをゼロから理解してもらうための工数も発生します。

  • 【よくある課題現象】
    • 外部にシステム開発依頼をしたものの、社内でコストの妥当感を判断することが難しくなり、開発会社にコストもプロセスも丸投げするしかなくなった
    • 既存の社内システムの保守ベンダーにDX化の依頼をしたものの、結局ゼロから社内の業務プロセスを説明する工程が発生した

外部ベンダーに依存し過ぎると、プロセスにおいて思った以上のコストやパワーが発生します。想定していなかった事態に怯んでしまい、DX推進計画そのものもストップしてしまうケースもあります。

1-4. 既存システムのブラックボックス化

社内でこれまで活用してきた既存システムがブラックボックス化(機能や仕様が分からない状態)しているのは、DX推進の大きな障害となります。

システム内部が不透明になっていると、何か障害が起こった時の対応の遅れにつながります。障害が起こらないシステムへと改修を加えたいと思っても、仕様が分からなければなかなか手出しがしにくくなります

  • 【よくある課題現象】
    • 抜本的なDX化をはかりたいが、社内の各部署でシステムの部分改修を進めてしまったため、既存業務への影響が分からなくなっている
    • 既存の単独稼働しているシステムの改修レベルしか手をつけられず、事業成果にインパクトを与えるDX化に手を付けられない

既存システムの改修の難しいところは、例えブラックボックス化していても通常業務の一定範囲は回せてしまっている点です。
通常業務を止めてまで既存システムにメスを入れる覚悟が決まらず、思い切ったDX化に踏み切れない企業も多いようです。

1-5. IT投資が進んでいない

日本企業の多くは、IT予算のほとんどが現行システムの維持・保守に費やされています。維持・保守予算の割合が8割以上を占めるのが多くの企業の現状です。
参考:日本情報システム・ユーザー協会『企業IT動向調査2019』

システムの保守・運用に重点が置かれている状況では、IT予算の大半の使い道が既に決まっているのが難点です。DXなど攻めのIT投資を行うためには、別途予算を設けなければ実現が難しくなります。

  • 【よくある課題現象】
    • 既存のシステム保守の予算を回してもらいたいが、DX化の予算の必然性や予算根拠が示しきれない
    • DX化の予算確保はしていたものの、期中に既存システムのトラブル対応の予算に回さざるを得なくなった

日本企業の多くでは、老朽化したシステムを抱えています。攻めのDX戦略に舵を切り替えたいものの、どうしても既存システムの維持・管理という喫緊の課題に予算が回される実情もあるのです。

 

2. 日本のDX化の現状

前述した課題がありながらも、徐々に日本のDXは進み始めています。 ほとんどの企業が「DXの初期段階」「"守り" のDX中心」「従来のビジネス改善が中心」という段階です。

自社で取り組む前に、他企業がどのような段階にあるかを知っておくと、地に足の着いたDX戦略を描くヒントになります。

2-1. ほとんどの企業がDXの初期段階

経産省のDXガイドラインが発表されたのが2018年であることから、現在はほとんどの企業がDX化に着手し始めた初期段階と言えます。

2020年12月28日の経済産業省による「DXレポート2」で国内223企業の調査では9割がDX推進ができていない状況でした。その後IPAの2021白書による調査によるとDXに取組んでいる企業の割合は約56%で、半数以上の企業がDXの取り組みをしており、徐々にDX推進は進んでいる状況です。

参考:IPA DX白書2021_第1部_総論(DXへの取組状況)

それに対し米国では79%と8割近くの企業がDXを進めているのが現状です。米国など比べると、国内のDX推進状況はまだスタートしたばかりと言えます。

「DX」という言葉が先行しているため、今からDXを検討している状況ではもう手遅れではないかと思われる方もいるかもしれません。
ですが、日本企業はまだまだDXの初期段階です。従って、今からDX化の検討をスタートしたとしても、世の中の企業にそこまで遅れをとっているわけではありません。

2-2. 業務プロセス改善など "守りのDX" が中心

  • DX化には
    • 攻めのDX……ビジネスにおいて新たに利益を生み出すためのDX
    • 守りのDX……自社業務プロセスの生産性を上げるためのDX
    があります。

日本のDX化の対象は、社内業務や体制に対する "守りのDX" に該当するものが中心です。 その理由は守りのDXが「自社でコントロールできる改革」であり、比較的着手が容易だからです。

なかには、業務の一部を「デジタル化」をしただけでDXが完了したと認識している企業もありますが、あくまで目的は業務のデジタル化を通じて生産性が向上したり、社員の意識変革が起こったりすることです。

DXに向けてなにも行動を起こしていない企業と守りのDXの一歩を踏み出した企業とでは、DXの進捗率に大きな差が生まれます。
守りのDXと同時に攻めのDXにも着手するのが理想の流れですが、とにかくDXへの一歩を踏み出したいと考えている企業は、まずは守りのDXのプロセスから着手するといいでしょう。

2-3. 従来のビジネスの改善が中心

"攻めのDX" として、ビジネスそのもののDXに着手している企業も一定数存在しますが、その対象は従来のビジネスとなっているのが、日本企業に見受けられる状況です。

昨今盛んなオープンイノベーションなどの取り組みを通じて、DX化の一環で新規事業やマーケット創造を起こしている企業も一定数は存在します。しかしその多くは、DXという言葉が出現するもっと前から、デジタルをビジネスに活用している先進企業ばかりです。

もし社内の業務プロセスなどのDX化が完了している、あるいは問題が見当たらない場合は、次のステップは現在の自社顧客にDXを通じて何が貢献できるかに視野を転じてみると良いでしょう。

2-4. 小規模で限定的なPoCに終始している

  • 多くの企業で各部門が部門予算で出来る範囲の小規模なDXのPoC (Proof of Concept) を場当たり的に実施している状態が見受けられます。
    • 「会社としてのDXのロードマップが不明瞭なのに、経営層からは何かDXに取り組むよう現場にプレッシャーをかけられている」
    • 「組織横断のDX推進チームが存在しない」
    • 「経営層のコミットメントがなく大きな予算が付かない」
    など、その企業ならではの事情が存在するためです。

このようなバラバラの取り組みは非効率であり、部門内での限定されたDXに終わってしまうケースも多いようです。もっと具体的に言うと、現場の「やっている感」を出しているだけでビジネスや経営にはあまり寄与していないというケースもおおく見受けられます。

 

3. DXに取り組まないとどうなるか

次にDXに取り組む必要性を理解いただくために、DXに取り組まないと起こり得る事態について解説していきます。
具体的には以下の現象が想定されます。

  • 「2025年の壁」問題による損害が生じる
  • ビジネスモデルの変化に対応できず、機会損失になる
  • ニューノーマルな働き方に対応できず、人財獲得力が低下する

具体的に解説していきます。

3-1. 「2025年の壁」問題による損害が生じる

「2025年の崖」問題は、DXを進めなかった各社に経済的な損失が降りかかることを意味します。

「2025年の壁」とは
具体的には、日本には21年以上稼働しているシステム(通称「レガシーシステム」)がシステム全体の6割を占めると言われます。これらのシステムの刷新に乗り遅れた企業が被る損害の総称が「2025年の壁」です。

既存のITシステムの課題を各企業が克服できなかった場合、2025年以降に発生が懸念される巨大なリスクが「2025年の壁」と呼ばれています。経済産業省が発表した「DXレポート」では日本企業がこのままDXを推進できなかった場合の経済的な損失を、最大で年間12兆円と算出しています。

経産省が発表した12兆円は日本全体の損失額になりますが、多くの企業では個別具体的な損失が生じることを意味します。

  • 具体的な現象としては、以下のようなことが考えられます。
    • システムが事業部門ごとに構築されているため横断的なデータ活用ができなくなる
    • 度重なるカスタマイズを加えたことでシステムの維持管理に大きなコストが必要となる
    • 既存システムの運用が人依存となっており、現担当以外への継承が困難になる

これらの現象が金額的にどの程度のインパクトを与えるかは各社で異なります。
特に老朽化システムが多い企業やEC販売などシステムが直接ビジネスに影響を与える企業は、損害額が大きくなります。

まずは自社がDXを進めなかったことによる損害額をシミュレーションし、経営上許容できる範囲かどうかを確認してください。

3-2. ビジネスモデルの変化に対応できず、機会損失になる

既存システムが作られた数十年前と今では、人々の生活スタイルは大きく変化しています。旧来の生活様式を想定して作られたシステムのままでは、現代及び今後のビジネスモデルに対応できないリスクがあります。

例えばインターネットは今やビジネスの現場に浸透しています。消費者やクライアントとのやり取りは20年前と様変わりしているでしょう。

  • 具体的な現象としては、以下のようなことが考えられます。
    • 電子決済やID認証システムを入れられず、新規の顧客獲得数が鈍化する
    • 顧客から要望があったビジネスプロセスに対応できず、ロイヤル顧客が離反していく
    • 海外のベンチャー企業が参入し、一気に業界のポジションを奪われる

この問題は、同業他社がどれだけDXを進めているかによって、自社への影響が変わってきます。
仮に競合他社が現代に合わせたDXを強力に推進している場合は、自社の売上げを徐々に侵食される可能性があります。逆に競合他社がそこまでDXを進めていない場合は、今後自社がビジネス上有利な立場になることを示唆します。

3-3. ニューノーマルな働き方に対応できず、人財獲得力が低下する

新型コロナウイルスにより一変したニューノーマルの世界では、働き方でも大きな変化を迫られました。ニューノーマルの働き方に対応できないと、現社員の離職のみならず新規採用にも弊害となる恐れがあります。

リモートワークを中心とした働く場所や時間の選択はもちろん、マネジメントや人事評価、コミュニケーションの仕方まで、その影響は計り知れません。こうしたニューノーマル時代の働き方や組織には、DXの推進が欠かせません。

  • 具体的な現象としては、以下のようなことが考えられます。
    • 社内のイントラネットしかセキュリティ対策をしていないため、社内PCがあるオフィスに出社しなければならない
    • 出退勤システムが旧来型のため、社員は出先から直帰することができない
    • リモートワークを実施しても、マネジメントは承認印を押すためだけにオフィスに行かなくてはならない

この問題は、ダイレクトに響くのは離職や採用などの人財リソースの獲得ですが、じわじわと企業ブランディングにも影響を及ぼします。
"ワークライフバランス" や "健康経営" が叫ばれる昨今においては、社員の働きやすい環境を整えない企業のイメージは世間的に低下することに繋がるからです。

 

4. DXの課題を乗り越える4つのポイント

前述の課題を乗り越えるためには大きく4つのポイントを意識する必要があります。

  • DXで目指す姿の経営レベルでの共有
  • 既存システムの「見える化」
  • ベンダーや社内体制の見直し
  • DX推進リソースの確保

どれも一朝一夕で解決できるものではありませんが、まずは自社はどの課題を重点的に対策すべきかという注力ポイントだけでも見出してください。

4-1. DXで目指す姿を経営レベルで共有する

DXを進めた結果「何を目指すのか」というビジョンは、経営レベルで強い認識を持つことが望ましいでしょう。DXの推進は各事業部の現場の協力はもちろん、経営トップのコミットメントが不可欠だからです。

DXを成功させるためには、経営トップがDXでどのような価値を生み出し、どのようにビジネスを変革するのかを認識する必要があります。その認識があって初めて、DX推進のための人財や予算を割り当て、現場との意思疎通を図り、社内全体の意識を変えていくことにつながります。

またDXの推進はすぐに完了・成功するものではなく、数年がかりのプロジェクトになることを見据えて進めなくてはなりません。経営トップのリーダーシップのもと、全社を挙げて中長期的な視点でDXを推進していくことが重要です。

4-2. 既存ITシステムの「見える化」を進める

ブラックボックス化しているITシステムがネックになる場合は、まずは現システムの見える化を優先しましょう。

現システムの改修の時はもちろんのこと、新システムを導入する際も現システムの仕様を明らかにすることは必要となります。どんな機能を持っているかを明らかにしておかないと、新システムで全てをカバーしているかどうかも見えなくなるからです。

現システムがブラックボックスのまま新しい仕組みを導入してしまうと、業務プロセスが混乱することにつながります。また社員からも「これまでと同じことがなぜ出来ないのか!?」という不信の声も招きかねません。

4-3. ベンターとの関係や社内の体制を見直す

現状システムの保守や運用を外部ベンダーに任せきりになっている場合は、少しずつ責任範囲を自社に戻すようにしてください。

外部ベンダーの関係見直しは、社内の体制もセットで考慮する必要があります。仮に今社内に外部が担っていた業務を担える人財がいない場合は、人財の採用や育成も視野に入れることになります。

この課題は短期で決着がつきにくいものです。だからこそ、DX推進を決めた時点から時間をかけてでも対応すべき課題ともいえます。

4-4. DXを推進できるリソースを確保する

前述した経営レベルでDX推進を決めた場合は、方針だけでなくDXに対応する人員・予算などのリソースも一緒に承認を取るようにしてください。

特に予算の確保は重要です。日本企業はIT予算を既存システムの保守に回す傾向が多いため、DXに費やす予算は新たに申請をして獲得する必要があります。

人員面で注意したいのは、人財の確保だけでなく部門横断的な権限を持たせることです。
DX推進は全社の多くの部門をまたぐケースがほとんどです。部門最適を打破して全社最適に持って行くためには、DX推進部門には強制的な力が必要となります。 「DX推進室」といった特命部門を設けることも、DX推進を成功させるために有効な手段といえます。

方針レベルではOKが出ても、リソースを確保しておかないと、進めるうちに各論NGのような事態に陥りやすくなります。むしろリソースの具体的な投資範囲を明確にしたうえで、DX化を進める意思決定を迫るようにしましょう。

 

5. DXを進める準備の5つのステップ

前述の課題を乗り越える目処がついたとして、次に進めるのは今後進めるDX計画の準備です。
ここでは「経営レベルでDX計画の合意を得る」を一つのゴールとして、準備をすべき5つのステップを紹介します。

  1. 現状分析
  2. DXのターゲット決定
  3. DXのロードマップ作成
  4. DXの運用体制検討
  5. DX計画の経営承認

一つずつ解説していきます。

5-1. 現状分析を行う

ひとことで「DX推進」と言っても、対応範囲は多岐に渡ります。まずはDXが必要な箇所を洗い出すための現状分析を行います。

現状分析は「定量」「定性」の両面からアプローチするようにしてください。

定量分析例 定性分析例
  • 現システムに関する工数分析
  • 現システムの費用分析
  • 社員への改善要望アンケート
  • 顧客への満足度調査

現状分析をきちんと行っておけば、経営にDX化の提言をする際の説得材料となります。それだけでなく、DXを進めたあとにどの程度の効果があったかという効果測定にも活用できます。

5-2. DX化のターゲットを決める(優先順位を決める)

現状分析の結果をもとに、DXを進める対象や順序を組んでいきます。

優先順位を決める際は「緊急度」「重要度」×「発生コスト」「見込み利益」の観点をもとに検討を進めると良いでしょう。

【優先順位の考え方の例】
発生するコスト 見込める利益
緊急度の高さ 緊急度が高くコストがかからないものは着手しやすい 緊急度が高いが利益が見込めないものは要検討
重要度の高さ 重要度が高いがコストがかかるものは要検討 重要度が高く見込める利益が多いものは優先順位が高い

上記の考え方はあくまで一例です。実際には「コストも発生し利益も見込めるが、今すぐ着手しなくてもいいもの」など、解釈が色々生まれるかと思います。

とかく重要度や緊急度は各人によって捉え方が異なるため、何かしらのフレームをもとに検討を進めると、議論の空中戦を避ける効果はあるでしょう。

5-3. DXのロードマップを作る

優先順位を決めたあとは、「いつ」「誰が」「どのように」DXに取り組むかのロードマップを作成します。

DX化の特徴は、最終的に目指す姿に到達するまでには長い年月がかかる点です。
最終ゴールが見えずに単年度の取り組みを積み重ねると、都度都度取り組み内容が変わったりして対応が場当たり的になることです。

環境変化が激しい昨今では5年後の状況など見通せないことも多いかと思います。それでも現時点での最終ゴールとロードマップは用意するようにしてください。
環境変化があったとしてもベースとなるロードマップがあれば、それを拠り所にブラッシュアップが加えられるようになります。

5-4. DXの推進体制を確立する

DXの取り組み規模にもよりますが、本気で取り組む場合はDX専任のチームを組閣することがおすすめです。

組織には定期的な人事異動があります。各部署に「DX推進担当」などを任命したとしても、組織改編のたびに人員をアサインするのは不安定な上に、推進のパワーが低下します。

人事異動に左右されない専任チームを設けることで、新たな採用など思い切った動きも取りやすくなります。また専任にすることでチームのモチベーションが上がり、良い意味で責任を持ってDXを推進してくれる期待も持てます。

5-5. 経営にDX計画の承認を得る

最後に、これまでまとめた内容を自社の経営レベルに審議を諮るようにしましょう。 持ち込み方は各社異なりますが、定期的に経営会議が開催されているなら、DX計画の議題申請をするようにしてください。

声の大きい役員などの個別の根回しなども必要かもしれませんが、審議は経営ボードメンバーが集まる公の会議が望ましいでしょう。なぜなら、前述したようにDX化は緊急度が高くないため、着手後に別案件の影響で頓挫するケースが多いからです。

経営メンバー全員の合意が取れれば、全社的な重要取り組み事項としてオーソライズされたと見なされます。多少の経営環境の変化があっても、計画が覆りにくくなるでしょう。

 

6. まとめ

今回の記事では、どの企業でも関心事であるDX推進について、一般的に起こっている課題の実情についてお伝えしました。
あらためてこの記事のポイントをまとめます。

◎ DX推進の課題は以下の5つです
方針に関する課題 体制に関する課題 システムに関する課題
  • 経営戦略上でのDXの位置付けが不明確
  • IT人財が確保できない
  • 既存システムのブラックボックス化
  • 外部ベンダーに依存し過ぎている
  • IT投資が進んでいない

◎ ほとんどの企業が、現状は「DXの初期段階」「"守り" のDX中心」「従来のビジネス改善が中心」です。

  • ◎ DXを進めないと起こり得るリスクは以下の通りです
    • 「2025年の壁」問題による損害が生じる
    • ビジネスモデルの変化に対応できず、機会損失になる
    • ニューノーマルな働き方に対応できず、人財獲得力が低下する
  • ◎ DXの課題を乗り越えるには4つのポイントがあります
    • DXで目指す姿の経営レベルでの共有
    • 既存システムの「見える化」
    • ベンダーや社内体制の見直し
    • DX推進リソースの確保
  • ◎ DXを進めるためには以下の5つの準備が必要です
    1. 現状分析
    2. DXのターゲット決定
    3. DXのロードマップ作成
    4. DXの運用体制検討
    5. DX計画の経営承認

日本ではDXへの遅れや失敗事例などのネガティブな話題が多いのも事実ですが、逆の見方をすると自社が推進する際に、あらかじめ学ぶべき先行課題がふんだんにあるとも言えます。

DXは当面の予算や体制などに影響があるので推進に躊躇する人も多いかもしれませんが、何も手をつけないと数年後には企業存続に影響を与えかねないリスクに発展する可能性もあります。

企業によって確保できる予算や、経営上の優先順位は異なると思うので、当記事でDXの課題を知った上で「自社ならどのようなDX化のロードマップが描けるか」をまずは考えていただければ幸いです。

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