AI の影響に関する日々の報道の陰で、静かながらも働き方が根本から見直されつつあります。

この状況の変化を形成する要素として、人口動態の大きな変化、新たな人財への期待、グローバル規模の経済動向、組織のアジリティに対する継続的な要求が挙げられます。  これらの強力な風潮は、役割の再定義を促し、意思決定を加速させています。また、この風潮をうけ、企業はスキル、公平さ、リーダーシップに、より深く向き合うようになっています。 

これらの要因が重なって生じる連鎖反応は莫大です。 

ここで紹介する 20 のトレンドは、この大きな変化がすでに職場をどのように変え始めているのか、何が変わりつつあるのか、何がうまく機能しているのか、意図を持って取り組むことで、どこへ向かうのかについて、現実的な視点で明らかにしています。

これらを総合すると、仕事の方向性が見えてきます。そして、リーダーが今日から準備すべきことが明確になります。

AI 主導の組織改革

リーダーシップの役割は変化し、企業はデータ戦略を再定義しています。そして AI は孤立した実験的技術から重要なインフラへと進化しつつあります。このような傾向を踏まえると、企業がオペレーション、意思決定、説明責任のモデルを、この変化に適応させていることがわかります。

  1. 経営幹部の役割が進化する
    エグゼクティブ リーダーシップの役割 (および考え方) の変化により、社員とともに業務を行うデジタル ワークフォースの導入が進みます。リーダーは、AI の導入における倫理、インフラ、統合を監督し、部門間で連携して、継続的なイノベーションを実現するための業務プロセスを再構築する必要があります。

  2. 機会費用が競争上の優位性を高める
    単に何に投資するのかではなく、企業がどのように AI への投資を管理するかが重要になります。調査によると、AI の ROI を定期的に評価している企業では、収益の成長率において同業他社を 27% 上回っています。AI 戦略では、最高財務責任者 (CFO) は、単に短期的なコスト削減だけでなく、機会費用も考慮する必要があります。

  3. AI の導入はまだ実験段階にある
    AI が世間の注目を集める一方で、企業における導入状況は依然として一様ではありません。限定的なユース ケースとしてではなく、本格的に AI を導入している企業は 25% にすぎません。人事や財務など社内の部門では、まだ初期の試験的な導入段階にありますが、顧客対応業務への導入はゆっくりではあるものの着実に進んでいます。

  4. サイロ化したデータに対処しなければ、AI のパフォーマンスは低下する
    分断されたシステムは、AI の拡張性を妨げます。効果的な AI の導入には、データソースの統合が不可欠です。経営幹部の 71% は、企業内で AI アプリケーションがサイロ化した状態で開発されていると認めています。

  5. AI を拡大する企業が成功する
    Workday の経営幹部指標によると、AI の拡大は依然として稀なケースです。AI イニシアチブの拡大に成功している企業は、19% にすぎません。AI を大規模に導入して意思決定、ワークフロー、パフォーマンスを推進する企業に、未来が訪れます。

ワークフォースとスキルの進化

役割が変化し、自動化が拡大するにつれて、企業はスキルアップに投資し、人財の育成方法を再定義するとともに、社員のスキルとテクノロジーの活用の両方を重視する必要があります。こうした傾向は、役職ではなく、スキルが業務における新たな価値になりつつあることを示しています。

  1. 役割は設計することでハイブリッドになる
    McKinsey 社は、2030 年までに業務の 30% が自動化され、職務が複数の専門分野にまたがるハイブリッド型へと進化すると予測しています。社員は、技術的スキル、分析的スキル、人間中心のスキルを組み合わせることになります。

  2. スキルアップが未来を牽引する
    L&D 専門家の 89% が、社員のスキルを構築することは、仕事の未来を切り拓くのに役立つと述べています。部門横断的なスキルアップに投資する企業は、イノベーション、エンゲージメント、定着率の向上を期待できます。

  3. AI リテラシーはすべての従業員にとって不可欠になる
    AI が日常のワークフローに組み込まれるようになると、従業員は AI ツールを効果的に活用する能力が求められるようになります。世界経済フォーラムは、新たに必要とされる最も重要なスキル領域として、AI とビッグ データを挙げています。

  4. ソフト スキルに投資するリーダーは成功する
    AI がハード スキルを自動化するにつれて、人間ならではの能力の価値が高まります。ある調査により、エグゼクティブの 92% が、コミュニケーションやコラボレーションといったソフト スキルが、技術的スキルと同じぐらい、またはそれ以上に重要になると考えていることがわかりました。将来を見据えたチームを構築するには、メンターシップ、共感力、インクルーシブなリーダーシップが欠かせません。

  5. 創造性がコア ビジネスの優位性を引き出す
    AI は、設計やマーケティングだけでなく、あらゆる領域にわたって創造的な思考を引き出すのに役立ちます。Workday のデータによると、回答者の 83% が、AI は社員の創造性を高め、新たな形の経済的価値を創出すると考えています。

  6. AI の導入により従業員は人間しか対応できない業務に集中できる
    日常業務の自動化がますます進むにつれ、従業員は創造性が求められる作業、戦略の策定、従業員同士のつながりに集中できるようになります。AI は代替する役割ではなく、補完する役割を担い、従業員が重要度の高い業務に集中し、他の従業員とのつながりを深めるのに役立ちます。

公平な人財獲得の重視

資格ではなく、能力が重要視されつつあると同時に、公平さも評価可能になりつつあります。そして、パーソナライゼーションが、画一的なポリシーに代わって、浸透し始めています。こうした傾向は、より公平かつ実用的で、より将来を見据えた採用方法への転換を示しています。

  1. 公平な採用では理想よりも期待を重視する
    企業は、従来の資格よりも、候補者の能力を重視する採用方法を導入しています。また、より公平かつ大規模な、そしてよりインクルーシブな採用プロセスを実現するために、履歴書を匿名化し、職務に関連するスキルを評価し、バイアスを検出するためのツールも導入しています。

  2. スキルベースの採用が標準になる
    新政権は連邦レベルで、スキルに基づく採用に重点を置くようになり、民間企業もこれに倣い、従来の資格よりも実践的なスキルの評価を優先しています。Deloitte 社は、企業の 63% が人財パイプラインを拡大するために、スキルベースのモデルを採用していると指摘しています。

  3. 出社をめぐる議論は終わりを迎え個々に合わせたデータドリブンな働き方へシフトする
    物理的な勤務地よりも、社員に与える影響に焦点が移りつつあります。Gallup 社のレポートによると、米国の正社員の約 50% が、在宅勤務が可能な仕事に就いています。AI ツールは、エンゲージメント パターンを分析し、スケジュールをパーソナライズするほか、大規模なウェルネス プログラムを推奨できるようになりました。

規制環境と倫理的配慮

AI ガバナンスからデータ プライバシー、環境責任に至るまで、企業はより高い透明性と責任意識を持って行動することが求められています。こうした傾向は、今後の規制動向や、倫理観を後回しにしてはいけない理由を浮き彫りにしています。

  1. 設計次第で AI は信頼を創出する基盤となる
    適切なガバナンスがあれば、AI はリスクではなく、企業の信頼性の源泉となります。AI を責任を持って活用すれば、意思決定の一貫性を強化し、バイアスを検出し、手動プロセスよりも迅速にコンプライアンスを確保できます。信頼の構築を副次的な結果ではなく、本質的な特質として扱う企業は、社員、顧客、規制当局のロイヤリティを獲得します。

  2. データ プライバシーへの懸念を踏まえ職場のポリシーを具体化する
    企業は、監視技術と社員のプライバシー権を両立させ、包括的なデータ保護に関するポリシーを策定する必要があります。

  3. 持続可能性はビジネスの実践に影響を及ぼす
    消費者の需要や規制要件をうけ、環境、社会、ガバナンス (ESG) に関する考慮事項は、依然として企業戦略の中心となっています。

帰属意識と影響力の再定義

テクノロジーが加速するにつれ、社員は目的、つながり、価値についてより深い疑問を抱くようになります。こうした傾向により、エンプロイー エクスペリエンス、人間を中心にした設計、感情的知性が、今後数年間に素晴らしい職場の姿を、どのように形作っていくかを探ってみましょう。

  1. エンプロイー エクスペリエンスが優先される
    WHO は、メンタルヘルスの問題による生産性の低下により、世界経済において年間 1 兆ドルの損失が生じていると推計しています。企業はこれに対応し始めており、Gallup 社の調査によると、企業の 70% がウェルビーイング、柔軟性、成長機会への投資を増やしています。よりパーソナライズされた、データドリブンのエンプロイー エクスペリエンス戦略が期待されています。

  2. AI とエンプロイー エクスペリエンスが一体化する
    オンボーディングのパーソナライズから、スケジュール管理の簡素化、ヘルプデスクの自動化に至るまで、AI は、社員が業務を進める上で中心的な役割を担いつつあります。PwC 社の調査によると、生成 AI を日常的に使用する従業員の 80% 以上が、今後 1 年以内に AI によって業務の効率が向上すると考えています。また、すべてのユーザーの半数 (49%) が、昇給につながると期待しています。AI はその変化の核心となるでしょう。

  3. 社員は人間らしさの意味を再確認する
    AI は人間の能力を代替するのではなく、その価値を一層高めます。人間が持つ、感情的知性、倫理観、対人スキルなどの能力や特質といった価値提案は、今後ますます重要になるでしょう。優れたチームは、すべてを自動化することはありません。何を自動化すべきではないかを見極めています。

最高経営責任者 (CEO) の 98% は、AI の導入がビジネスに即時的なメリットをもたらすと予測しています。このレポートをダウンロードして、2,355 人のグローバル リーダーから得たインサイトをご確認ください。AI が組織にもたらす潜在的なメリットを理解いただけます。

さらに読む