AdventHealth、人財採用と人財定着を強化するため AI を活用
AdventHealth の人事部門の責任者である Tom Nesteruk 氏に、人事業務モデルの変革と、AI の活用により、ヘルスケア業界最大の課題である看護師や医療従事者の採用と定着を成功させたことについて、詳しく伺いました。
AdventHealth の人事部門の責任者である Tom Nesteruk 氏に、人事業務モデルの変革と、AI の活用により、ヘルスケア業界最大の課題である看護師や医療従事者の採用と定着を成功させたことについて、詳しく伺いました。
この記事は、HiredScore.com のブログに 2024 年 1 月 19 日付で公開されたものです。
AdventHealth はセブンスデー・アドベンチスト教会が運営する、医療に特化した非営利組織で、フロリダ州アルタモンテ・スプリングスに本部を置き、プロテスタント系非営利ヘルスケア プロバイダとしては米国最大級の規模を誇ります。9 つの州に点在する 50 以上の医療機関で構成されるネットワークを擁しており、年間 670 万人以上の患者に医療サービスを提供しています。この非営利組織の使命の中核となっているのは、様々な分野の専門家で構成される専属チームが支援する、包括的なケアへの取り組みです。
しかしヘルスケア業界は全体的に、主に定年退職、燃え尽き症候群、業界特有の課題による深刻な労働力不足に直面しており、AdventHealth も例外ではありません。米国保健福祉省の報告では、現在看護師が 10 万人不足しており、今後 10 年間、1 年につき正看護師が 6 万人以上不足することが予測されています。
このような課題に向き合った、AdventHealth の人事部門シニア バイス プレジデントと副最高人財責任者を兼任する Tom Nesteruk 氏は先日、HiredScore (Workday グループ企業) の創設者 Athena Karp と共に登壇した Web セミナーで、自社の革新的な人事戦略について概説しました。
この Web セミナーの主題は、ポストコロナの課題とヘルスケア業界の慢性的な労働力不足への対応策として AdventHealth がどのように AI を活用したのか、ということでした。この Web セミナーの要点を以下にまとめます。さらに、このような重要な問題に対応する上での AdventHealth の革新的な人事業務モデルと、部門横断的な人事部門の役割について、深く掘り下げてご紹介します。
1.AdventHealth では、どのように AI を導入することにしたのですか?その理由について、特にビジネス課題に的を絞ってご説明ください
AdventHealth の Tom Nesteruk 氏は次のように話します。「コロナ禍の時期に、給与が高い派遣会社に転職した看護師が大勢いました。これにより、ヘルスケア システムのコストが上がり、現在の労働力不足につながりました。当組織は 50 以上の医療機関を運営しており、各医療機関に各施設を運営する最高経営責任者がいます。彼らと話したところ、人財の採用と定着が最優先事項だということがわかりました」
さらに同氏は次のように話を続けます。「このような状況を踏まえて、人事戦略に着目し、高度な組織戦略と整合させた結果、人財の採用と定着に重点を置いたことは当然の帰結だと言えます。テクノロジーの観点から言うとこの時点から、具体的に HiredScore の検討を始めました」
AdventHealth が AI 導入を決定する決め手となった要因は以下のとおりです。
マクロ環境の課題: パンデミック後、AdventHealth は複雑な財政状況に対応しつつ、看護師と現場で働く医療従事者の採用と定着という業界独自の課題の解決に取り組んでいました。このような問題に対処するには、革新的な人事部門の戦略に加え、変化するヘルスケア業界の状況に合わせて、以下の面で運営方法を調整する必要がありました。
高度な組織戦略: 主に人財の採用と定着に重点を置いた AdventHealth の人事戦略を高度な組織戦略と整合する必要がありました。ここでテクノロジー、特に AI が極めて重要な役割を担いました。AdventHealth は、採用プロセスを改善するため、HiredScore など最先端のテクノロジーを導入する必要性を認識していました。
人事プロセスの迅速化:同氏は次のように話します。「当組織の採用担当者だけではなく、採用マネージャも HiredScore などの AI ツールを使用するメリットを実感しています。たとえば、採用マネージャにとっては候補者の絞り込みや合否の決定が大きな課題でした。おそらくこれは、多くの企業が抱えている問題だと思います。このことが特に、採用プロセス全体を遅らせる原因となっていました。7 か月前に HiredScore を導入してからは、採用マネージャが履歴書に目を通し、面談の日程を決め、候補者を採用するまでにかける時間が 40% 短縮されました。採用プロセス全体のスピードアップに大いに役立っています」
さらに HiredScore の機能により、AdventHealth の採用担当者は既存の候補者データベースに再度アクセスできるようになりました。これは従来、時間がかかり過ぎてできなかったことです。おかげで、資格を有する約 300 人の看護師を採用することができました。職務補充依頼の 35% をこれでカバーすることができましたし、組織の最も重要な職務を担ってもらっています。
さらに、AdventHealth の採用担当者が 90 日間で完了できる職務補充依頼の件数が 2 倍になりました。これは、AI が採用担当者の運用に大きな影響を与えていることを示しています。
「7 か月前に HiredScore を導入してからは、採用マネージャが履歴書に目を通し、面談の日程を決め、候補者を採用するまでにかける時間が 40% 短縮されました」
Tom Nesteruk 氏
人事部門シニア バイス プレジデント兼副最高人財責任者
AdventHealth
2.どうすれば人事部門リーダーと人事担当者は事業とつながり、事業について理解した上で完全に連携してサービスを提供できるでしょうか?
同氏は次のように話します。「当組織は派遣会社に費やす支出について 1 億ドル弱、正確には 6,800 万ドルほどと、大幅に削減することができました。言うまでもありませんが、これはささいな金額ではなく、相当な金額です。事実今年だけでも、HiredScore の導入以降は、支出額のさらなる削減に成功しています」
「当組織では、50 以上の医療機関で派遣会社の利用率がコロナ前を下回っています。これは、各施設でエグゼクティブと最高経営責任者の戦略を人事戦略と結び付けたためです。これにより、財政面ではもちろん、経験面でも当組織の各医療機関にメリットがもたらされています」
AdventHealth の人事部門が、組織のより大規模な事業戦略と連携するために実施したイニシアチブは以下のとおりです。
事業の優先事項の統一: AdventHealth の主な事業目的には、戦略的な採用を行うことで労働力不足に対応し、優秀な人財を確保し、外部の派遣会社に支払う支出を最低限に抑えることが含まれています。
人事部門の目標とより大規模な事業目的の両方を実現するツールの導入: HiredScore を導入することで、AdventHealth は、採用効率と採用成果を大幅に向上させることができました。HiredScore は、ポジション補充までの時間を加速し、候補者の全体的な体験を改善するだけでなく、離職に伴うコストの削減と外部の派遣会社への採用業務の依存率を下げることにも役立ちました。その結果、派遣会社へのコストを大きく削減し、コスト削減のような事業上の重要な優先事項とシームレスに整合させることができました。
3.医療機関の人事や人財獲得の取り組みは、顧客や最高経営責任者の成果とどう結びつくのでしょうか?
同氏は次のように話します。「当組織のネットワークを構成する施設と医療機関の約半数で、患者安全の評価値が上がりました。この評価は、当組織が Leapfrog を使用して測定している指標です。この改善は、重要な分野に十分な人財が配置されたことが大きな要因です。何人かの最高経営責任者に会いましたが、看護師はもう募集していないと言われました。ここで働き始めてから 10 年以上経ちますが、このような状況は初めてです」
同氏はさらにこう付け加えます。「当組織の施設、そして患者に対する治療とサービスに直接的な影響がありました。安全評価を通してそのことを裏付けるデータがすべて揃っています。言うまでもありませんが、多くの施設で患者の満足度評価にも影響が見られ、評価が上がりました」
4.AdventHealth でのテクノロジーのロードマップと AI の可能性についてどのようにお考えですか?
同氏は次のように話します。「最終的な目標は、当組織のテクノロジーを強化することではありません。患者をケアする現場スタッフとセルフサービス テクノロジーを活用する人事スタッフの両方を含む、人事部門のチームメンバーのエクスペリエンスの質の向上に力を入れています。すべてがつながり、シームレスで、簡単であることが重要だと考えています」
これまでの取り組み: AdventHealth は、HiredScore など高度な AI テクノロジーを業務プロセスに組み込むため、変革の取り組みを開始しました。ところがその当初、現場のスタッフがテクノロジー導入に対する抵抗感を示し、取り組みは難航しました。とりわけ AdventHealth の採用担当部門で、経験豊富で全国的に高く評価されている採用担当者の中には当初、AI を補完的なツールではなく、自分たちの専門性を脅かすものだと考えている人もいました。
AdventHealth での AI 導入において非常に大きな役割を果たしたのは、チェンジ マネジメントでした。AI ツールは、人財に取って代わる存在ではなく、人間の能力を強化し能率化することを目的としたツールであることを伝えることが重要でした。導入が進むにつれ、当初難色を示していた多くの採用担当者も、AI が効率性と効果の面で好ましい影響を及ぼしていることを認めるようになりました。
(AI の) 導入が進むにつれ、当初難色を示していた多くの採用担当者も、AI が効率性と効果の面で好ましい影響を及ぼしていることを認めるようになりました。
今後について: AdventHealth の戦略は、新たなテクノロジーの導入に留まらず、さらに拡大しています。同組織は、現代のヘルスケア行為に不可欠な要素として AI を取り入れる重要性を協調しつつ、文化の発展に取り組んでいます。
この取り組みは、AI 組み込み型のヒューマン キャピタル マネジメント システムへのアップグレードなど、より広範なビジョンの一部です。このシステムは重要な前進ではありますが、全体的な業務効率と職員のエクスペリエンスを向上させるために様々な技術を調和させることを含む、大きなパズルの 1 ピースに過ぎません。
5.人財獲得部門に初めて AI を導入しようとしている人財獲得部門の責任者にアドバイスはありますか?
同氏は次のように振り返ります。「HiredScore の導入を決めた時、人事部門の取り組みのためだけではなく、事業の包括的な意思決定として判断を下しました。この判断を下すまでには、当組織がサービスを提供している市場や医療機関の最高経営責任者など、様々なステークホルダーに意見を求め、彼らの優先事項について理解を深めました。また人事部門の目標だけでなく、当組織の全体的な事業戦略に一致する最適なテクノロジーを見極めることを目指しました」
AI を初めて導入しようとしている人財獲得部門の責任者に対して、同氏から以下の 3 つのアドバイスがあると言います。
AI テクノロジーがもたらす影響を理解すること。 AI や類似テクノロジーの導入の重要性を過小評価しないでください。このようなテクノロジーは最先端で全く新しい発想に基づいているので、その機能や業務効率を向上させる可能性を明確に説明することが極めて重要となります。
導入後の結果を評価すること。 導入後、テクノロジーが期待どおりの効果を上げているかどうかを評価することは重要です。テクノロジーが社内外の業務にもたらしている影響、特に患者へのケアと医療機関の運用への影響を確認します。
継続的に見直し、調整すること。 決定事項を継続的に評価し、AI ベンダーと連携し、当初は考えられなかったような新しい方法でテクノロジーを活用する方法を模索し続けることが重要です。
全人的ケアへの取り組みを支援するために Workday を選んだ AdventHealth の決断について、詳細はニュース記事をご確認ください。
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