人事向け AI エージェント: 主なユース ケースと事例

AI エージェントは人事部門がすばやく行動し、スマートに業務を行い、状況に即した的確なサポートを社員に提供できるよう支援します。エージェントが人間中心の人事を全社規模で実現する方法をご紹介します。

 デスクで話している 2 人の男性

エージェントはビジネス環境を大きく変えている最新の AI ツールです。そして人事 (HR) 部門はエージェント導入の最前線に立っています。Newsweek 誌は、どの業界のユース ケースにおいても AI エージェントはリクルーティング ツールとして「最も成熟している」と述べています。また、その主な理由として応募者のスキルのマッチング、職務内容の生成、スキル アーキテクチャの構築、人事サービス サポートなどの機能を挙げています。

しかしワークフォース管理と人財戦略を中心に据えた人事部門で、人間の関与をあまり必要としない AI エージェントを使用することの意味は何でしょうか?

AI エージェントのベスト プラクティスや実用性は、その自律性の基盤の上に実現します。ここで自律性とは、状況を分析して意思決定を行い、効果的にアクションを起こして、エンドツーエンドのワークフローを実行する能力を意味します。しかしこれらのアクションが組織の人財に直接影響を及ぼす場合は、目的を持って慎重に導入することが重要になります。 

先進的な組織は、エージェント型 AI で人間のつながりを置き換えるのではなく、人間のつながりを拡大・強化することにより、人事部門の応答性やパーソナライズ能力、サービス中心の文化を促進しています。この記事では、導入を予定しているリーダー向けに AI エージェントの主なユース ケースと実際の導入事例をご紹介します。

人事部門リーダーは AI が人事部門にもたらすポジティブな効果を認識しており、AI のパイオニアの 54% は AI が戦略的価値の向上に貢献していると述べています。

人事向け AI エージェントとは

社員が提出する申請の管理、ポリシーの配布、面接の調整、記録の更新など、人事部門は大量の反復作業を処理する責任を常に担ってきました。従来のビジネスプロセスの自動化は、最も予測可能なルール ベースの業務を自動化することにより、仕事量の拡大に貢献してきました。

しかし人事部門が最終的に対処するのは、プロセスではなく人財です。あらゆる問題は状況が異なり、多くのやり取りは明確なワークフローに当てはまりません。曖昧なポリシーに関する問い合わせへの対応から、職場のデリケートな問題の解決に至るまで、人事部門は通常業務を処理する場合と同じくらい多くの時間を例外的な処理に費やしています。しかし標準的な自動化では、例外的な処理に対処することはできません。

人事向けのエージェント型 AI は、このようなギャップを解消します。ニュアンスを解釈して動的に意思決定を行い、多段階プロセスを通じて自律的にアクションを実行し、BPA では処理できない複雑な処理に対応します。たとえば、エージェントは福利厚生の申請プロセスの逸脱や、改訂が必要な曖昧なポリシーを検出し、自身で調整を行うか、問題に対処するよう人間の注意を喚起できます。

すでに人事向けエージェントによって実行されている重要な業務をいくつかご紹介します。

  • 求職者のスクリーニングと面接のスケジューリング
  • 有給休暇、福利厚生、ポリシー関連の申請の処理
  • オンボーディング、オフボーディング、トレーニング エクスペリエンスの提供
  • エンゲージメントのモニタリングと離職リスクの可視化
  • ワークフォース プランニングとモデリングの支援

AI エージェントを適切に導入すると、人事部門は多くの時間を戦略に使用し、他部門とより良い関係を構築できます。エージェントは継続的に監視しなくても事務作業を処理するため、人事プロフェッショナルは、コーチング、離職防止、文化の促進など、より複雑な人間中心の業務に専念できます。このようにエージェント型 AI は社員を置き換えるのではなく、社員のパフォーマンスを強化する機会を提供します。

人事部門はこれまで人間主導のポリシーやガバナンスに従ってオペレーションを進めてきたため、人事担当者によっては AI システムの導入に躊躇するかもしれません。しかしエージェントのような AI ツールを先駆けて使用している革新的な人事部門は、その効果を裏付けています。実際、54% の回答者は、組織に高い戦略的価値を提供するために AI エージェントが直接貢献していると述べています。

LinkedIn のリクルーティング エージェントは、1 週間あたり 1 日分に相当するリクルーターの作業時間を節約します。そのためリクルーターは、関係構築やイノベーションの創出に専念することができます。

人事向け AI エージェントのユース ケース トップ 3

エージェントを使用している多くの組織では、人事部門の役割が事後的なサービス提供者から、インサイトを事前に提供してワークフォース管理戦略をサポートするパートナーへと変化しています。このようなユース ケースを知ることで、実際の問題 (採用意思決定の加速化、ワークフォース可視化の向上など) を解決するため、今日の組織がどのようにエージェントを適用しているかを理解できます。

1.人財の獲得とリクルーティング

遅延やミスマッチが高額なコストにつながる採用は、莫大な規模とプレッシャーが常に伴います。人事向け AI エージェントは現在、質を損なうことなくすばやく大規模に採用戦略を実行できるよう人財チームを支援しています。エージェントは人間の介入なしで応募書類と職務内容を比較・審査し、有望な候補者を特定し、面接のスケジュールを設定します。 

LinkedIn 社で英国担当責任者を務める Janine Chamberlin 氏は先日、Workday の仕事の未来 ポッドキャストに出演し、同社のリクルーティング エージェントが 1 週間あたり 1 日分に相当する作業時間を短縮しており、リクルーターが関係構築、革新的な戦略など、より意味のある業務に時間を割けられるようになったと述べています。

LinkedIn 社だけではありません。NBC News 社の最近の記事によると、エージェントは候補者とのビデオ面接をすべて執り行い、候補者にリアルタイムなフィードバックやトランスクリプトを提供しています。このような完全にインタラクティブなユース ケースへの適用はまだ初期段階にありますが、McDonald’s 社、Zillow 社、Boston Red Sox 社などの大手企業は、同様の方法でエージェントを活用するユース ケースをすでに試験し始めていると NBC 社は述べています。

2.社員エンゲージメントとワークフォース管理

エージェントは採用された社員をオンボーディング全体を通してサポートできます。プロビジョニング、ポリシーの確認、トレーニングのリマインダー、基本的な Q&A は、すべて AI エージェントが年中無休で処理できます。エージェントは、役割、地域、マネージャに基づいて社員のオンボーディング エクスペリエンスをパーソナライズすることもできます。一貫性は維持され、ニュアンスが損なわれることもありません。

それだけではありません。エージェントはチェックインやフィードバックをモニタリングして意欲低下の兆候を検出し、燃え尽き症候群が発症する前に対処するよう提案することもできます。自然言語処理などの AI 機能は、兆候が最初に現れた時点で社員満足度の変化を検出できます。たとえば低いフィードバック スコアが続いた場合、エージェントは人事部門に警告することも、コーチング対話をするよう提案することもできます。

また、エージェントは日常的な事務作業の間接費を削減します。リクエストを処理し、ポリシーの詳細を確認し、福利厚生に関する質問の優先順位を判断できます。たとえば、IBM 社では「AskHR」エージェントを導入し、270,000 人以上の社員から寄せられる質問を毎日処理しています。このような質問の内容は、出産休暇ポリシー、報酬、雇用証明など、多岐にわたります。このようなレベルで事務作業を軽減できることにより、人事担当者は専門知識が求められる価値の高い業務に専念することができます。

3.ワークフォース プランニングとシナリオ モデリング

ワークフォースのニーズが急速に変化する中、人事部門リーダーは将来を予測する優れたツールを必要としています。エージェント型システムは、HRIS、財務ツール、オペレーション ツールから継続的にデータを引き出すことにより、ワークフォースの需要と供給に関するモデルをリアルタイムに維持します。

たとえば、ある部門で離職が急増した場合、エージェントはヘッドカウント予測を調整し、潜在的なパイプラインのギャップを警告し、ソーシング アクションを提案します。四半期半ばで予算が変更された場合は、同じエージェントがシナリオ モデルを実行し、採用プランや配置転換をどのように進めるべきかを明らかにします。

このようなエージェントは静的なヘッドカウント プランを応答性の高いシナリオ モデルに変換し、人事部門が事後的に対応するのではなく、アクションを起こせるようサポートします。Mercer 社のグローバル変革リーダーを務める Ravin Jethuson 氏は、エージェントがいかに先見性を高めるかについて先頃 SHRM に概説しています

「複数のエージェントが 1 つの役割を担うこともできます。たとえば、あるエージェント グループが外部データを収集し、別のエージェント グループがそのデータからインサイトを導き出し、さらに別のエージェント グループが異なるステークホルダー間の仲介役を果たすことができます」

その結果、戦略的なワークフォース管理を実現し、社内の他部門との連携をスムーズに行えるようになります。人事部門は他のビジネスリーダーと容易に調整を行い、組織が成功するために必要なスキルやチームを確保できます。

LinkedIn 社や IBM 社などの大手企業は、人事向け AI エージェントを使用して社員のエンゲージメントを高め、事務作業の支援を拡張し、先を見据えたプランニングを実施しています。

将来に目を向ける: 企業のエージェント導入を推進するリーダーとしての人事部門

人事部門は、全社規模のエージェント導入を責任を持って主導する独自の立場にあります。人事部門のオペレーションは複雑で人財への配慮が欠かせません。このような性質を持つ人事部門は、自動化と共感、スピードとコンプライアンス、効率性と信頼性のバランスを図りつつ、エージェントを大規模に導入する試験環境となります。

人事部門はすでに財務、IT、法務、各拠点と部門横断的に連携しているため、エージェントの導入、管理、拡張の基準を全社的に設定するために必要となるシステム統合と組織的影響力の両方を備えていることが少なくありません。リクルーティングからワークフォース プランニング、エンゲージメントに至るまで、エージェントは人事のあらゆる側面に関与します。チームが導入プロセスを通じて学んだことは、他部門がエージェントの導入に取り組む際の資料になります。

人事部門リーダーがメリットを最大限に活用するためには、エージェントの仕組み、エージェントが最大の効果を発揮するユース ケース、エージェントを広範なワークフォース戦略に組み込む方法を把握する必要があります。また、投資を行ってチーム全体の AI リテラシーを高め、人財と AI の連携をサポートする明確なワークフローを確立し、人事目標と照らし合わせて成果を継続的にモニタリングする必要もあります。

Workday Agent System of Record などのツールは、責任あるエージェント導入を可能にする企業レベルの集約基盤を提供することにより、このような変革をサポートします。しかしツールだけでは不十分です。ビジネス環境が急速に変化する中、人事部門は変革の推進者として行動し、AI を活用して戦略的なサポートを提供することの意義を今こそ実証する必要があります。

最高経営責任者 (CEO) の 98% は、AI の導入がビジネスに即時的なメリットをもたらすと予測しています。このレポートをダウンロードしてご覧ください。2,355 人のグローバル リーダーから得たインサイトを確認し、AI が組織にもたらす潜在的なメリットを理解いただけます。

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