ビジネスの DNA を書き換えてスピードとアジリティを実現する

当社は McKinsey 社の 2 人の専門家にらせん型組織モデルについて話を伺いました。このモデルが流動的なビジネスの需要に適応できるワークフォースの育成にどのように役立つかをご確認ください。

アジリティは単なる目指すべき目標ではなく、企業の存続・繁栄に必要不可欠なものになりつつあります。一方、アジリティが現代の組織の喫緊の課題として受け入れられているにもかかわらず、人事部門リーダーはアジリティを拡張/持続可能にするという次の課題に立ち向かわなければなりません。

そのためには、会社の組織構造、つまり社内のレポーティング構造やマネジメント階層にアジリティを組み込む必要があります。仕事の未来はもちろん、変化の激しい破壊的な「今」を生き抜くため、あらゆる企業はアジリティを維持することができる一貫したアプローチを必要としています。

当社は、持続/拡張可能なアジリティを維持するために検討すべき構造、つまりらせん型組織モデルについて、McKinsey 社の人財・組織パフォーマンス プラクティスのパートナーである Kirsten Weerda 博士と Andy Fong, 氏から話を伺いました。

McKinsey 社によって開発されたこのモデルは、安定性に裏打ちされた部門横断的なアジリティを促進するように設計されています。別の言い方をすれば、このモデルは集中化 (効率的で安定的) と分散化 (スピード、柔軟性、起業家精神の確保) のバランスを適切にとることを目的としています。

アジャイルな働き方のニーズを後押しする不確実性

アジャイルなオペレーションはビジネスで常に必要とされてきましたが、要求の変化や前例のない需要が常に発生する今日の企業においては、最優先事項となりつつあります。アジャイルなオペレーションには、新たなテクノロジーへの適応、デジタル ビジネスモデルへの迅速な移行、増加するリモート/ハイブリッド ワーク体制への対応などが含まれます。

「アジリティは安定性と相関関係にあります」

John Kirsten Weerda 博士 McKinsey 社パートナー 人財・組織パフォーマンス プラクティス

自動車業界では、自律走行、エレクトロモビリティなど、テクノロジーが大きく変化していると Weerda 氏は説明します。同時に、新しいテクノロジーの需要がいつ市場で高まるのかは不確実です。実際、多くの製造企業は、コロナ禍において電気自動車の需要が急速に高まったことに驚いています。2024 年に入り、電気自動車の需要は鈍化すると予想されています。

「各製造企業は、電気自動車と従来の内燃自動車の両方を並行して開発する必要があります。そのためには、適切なワークフォースを他の領域に配置転換する必要があります」と Weerda 氏は述べています。「不確実性やコストに対応する必要がある一方で、柔軟かつスピーディな働き方を求める声が高まっています」

組織のアジリティは迅速な対応を意味しますが、必ずしも何かを打破したり、混乱を引き起こしたりすることを意味しません。

「安定性だけを重視すると、組織が非常に官僚的になるおそれがあります。一方で流動性のみを重視すると、スタートアップ企業のように役割の変動が激しくなる可能性があります」と Weerda 氏は述べています。

Weerda 氏によると、アジリティを実現するためには両方の要素が必要になります。安定性とは、一貫した開発プロセスを確立し、企業内のあらゆる役割と責任を明確にすることを意味します。流動性には、開発組織内で人財を配置転換し、新しいチームをすばやく作成して、コラボレーションを促進させる能力が含まれます。

Weerda 氏が言うように、「アジリティは安定性と相関関係にあります」。

「アジリティと安定性は密接に関連し合いながら強化されます。このような相関性を強化するには、組織の枠組みとその定義を明確化し、組織の構造、プロセス、働き方を統一し、優先事項の認識を一致させる必要があります。この包括的な枠組みは、混乱を招くことなく、個人が柔軟に行動して意思決定を行えるようにします」と Weerda 氏は述べています。

従業員がリモート環境で作業している場合、従来の指揮命令系統の構造を使用している組織では、マネージャが日々の指示を一任される可能性があります。しかし対面でのやり取りができない環境では、このレベルの指示を行うことが難しい場合があります。

一方、アジャイルな機能を持つアジャイルな組織モデルは、個人の自主的なマインドセットを育成することを目的としています。人財はマネージャからの指示を待つことなく主体性を発揮し、チーム メンバーと協力して日常レベルの問題を解決するよう奨励されます。

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仕事の未来を支援: アジリティを促進するらせん型組織モデルとは

リーダーは、イノベーションと変革がデジタル トランスフォーメーションの成功の鍵であることを認識しています。デジタル トランスフォーメーションを成功させるためには、ビジネスの優先事項を遵守しつつ、個人が迅速に異動できるようにする必要があります。 

McKinsey 社はこのニーズに着目し、あるアプローチを開発しました。柔軟性と安定性のバランスを明確化するらせん型モデルです。

らせん型組織モデルとはどのようなものでしょうか。

価値創造マネージャは社員の日常業務を推進する一方、能力マネージャは業務の遂行方法を推進します。

 

らせん型モデルは二重らせん構造を備えており、各らせんはさまざまな管理業務が関連付けられた個別のレポーティング ラインを表します。レポーティング ラインのひとつは、個人の能力と優れた機能性の開発に主眼を置いています。この役割の監督者は、業務の遂行方法の基準を設定する「能力マネージャ」とみなされます。このレポーティング ラインは「能力」ユニットと呼ばれ、社員の安定した「ホーム」と考えることができます。 

能力マネージャの主な職務は 2 つあります。1 つは、人財が適切な能力を維持できるようにし、適切な人財を適切なタイミングで価値創造の現場に配置することです。もう 1 つは、現場を適切に把握している人財が能力を最大限に発揮できるようにするため、優れた機能性や最先端のプロセス/ツールを提供することです。

もう一方のレポーティング ラインは、エンドツーエンドのビジネス責任 (損益や予算の責任など) を担います。社員一人ひとりの日常業務に焦点を絞り、業務をビジネスの優先事項と一致させます。このレポーティング ラインは「価値創造」ユニットとみなされ、このレポーティング ラインを代表する監督者は「価値創造マネージャ」とみなされます。

個人は、ビジネスの優先事項の変化に応じて他のプロジェクトに異動するなど、価値創造ユニット間を容易に移動できます。このようなことが可能なのは、人財の責任を担う能力マネージャが人財を縛る理由がないからです。これが硬直的なビジネス ユニット構造とは異なる点です。

「個人が上司 (従来の組織表で実線によってつながっている上司) やプロジェクトに厳格に縛られる従来の階層モデルとは異なり、らせん型モデルは流動性を促進します」と Weerda 氏は説明します。「人財はシームレスに統合され、必要に応じて能力ユニットからさまざまなプロジェクトに配置転換されます。そのため、変化する市場の需要やプロジェクト スコープに対する組織の適応性が強化されます」 

らせん型モデルと他の組織モデルとの間には、このほかにも重要な違いがあります。例えば現代の組織構造の中には、二重構造やマトリクス構造のレポーティング モデルのように 2 つの監督レポーティング ラインが存在するものがありますが、一方は隠喩的な実線のレポーティング ラインで、もう一方は点線のレポーティング ラインとなっています。これは副監督者がプロジェクトベースの業務に部分的に携わる一方、正式な業務管理や社員のパフォーマンス評価は監督者が行うことを意味します。らせん型モデルでは、両方のレポーティング ラインが説明責任を持ち、どちらも同じように重要であるとみなされます。ただし一方は人財、もう一方はビジネスの推進と予算の管理というように、管理業務が明確に区別されます。

また、「Spotify モデル」のような非常に流動的なワーキング モデルと異なり、らせん型モデルではリソースの管理権限が価値創造リーダーに完全に委ねられることはありません。そのため、メンバーが頻繁に入れ替わることで、ワークフォースが役割の存続を危ぶむような事態は回避されます。 

「人財の能力を高めてポジティブな変化を生み出すためには、目指す行動や文化の促進を後押しするプロセスやツールが必要になります」

 

Andy Fong 氏 McKinsey 社パートナー 人財・組織パフォーマンス プラクティス

業務/レポーティング構造タイプの 1 つであるらせん型モデルは、ある程度の安定性をチーム内に確保することで、帰属意識や一貫性を育むように構築されています。価値創造マネージャは、柔軟性と安定性という 2 つのニーズに適切に対応することが不可欠になります。つまり、優先事項の変化に応じてリソースをすばやく再配置し、組織にメリットを提供すると同時に、組織に混乱をきたさないように配慮する必要があります。 

価値創造プロセスの効率性と有効性を維持するためには、優先事項を明確に定義し、チームの調整を行うタイミングとその理由をメンバーに明確に伝えることが不可欠になります。らせん型モデルが他のタイプの構造と一線を画しているのは、この微妙なバランスをとることが可能な点にあります。チームの成功に必要となる安定性を犠牲にすることなく、アジリティをサポートできるフレームワークを提供します。

Weerda 氏は次のように説明します。「当社はグローバルな自動車サプライヤにらせん型モデルを導入したことがあります。らせん型モデルはこの企業にとって主に 2 つの点で効果がありました。1 つは、価値創造リーダーと能力リーダーが戦略的優先事項を明確に把握し、両者の認識を十分に擦り合わせた結果、最も価値を生み出す価値創造ユニットにリソースを配置転換できるようになった点です。もう 1 つは、同社の柔軟性が向上した点です。例えば、異なるビジネス ユニットを迅速かつ効率的な方法で統合できるようになりました」

らせん型モデルの導入を成功させるために必要なこと 

らせん型モデルなどの導入を通じて組織のサイロを解消し、複数のリーダーに責任を分散させている組織は増えています。企業は組織構造に適応し、必要に応じて組織構造を変える自信・能力を確保する必要があります。 

らせん型組織モデルを導入して成功を目指す組織は、以下の 4 つの原則を考慮すべきだと Weerda 氏は述べています。

  • 業務の優先事項とビジネス目標を一致させる: リソースが戦略的目標に従って配置されていることを定期的に確認します (四半期ごとの再評価など)。
  • スキル エコシステムを確立し、ワークフォースのスキル セットを完全に把握する: スキルや従業員の関心を可視化することで、優先順位の高い業務に人財を柔軟に割り当てることができます。
  • 社員の能力開発の重要な場面に協業的なアプローチを取り入れる: 能力マネージャと価値創造マネージャの両方が、パフォーマンス評価、キャリア成長の話し合い、報酬の意思決定に関与する必要があります。そうすることで、コラボレーションが促進されるだけでなく、社員のパフォーマンスについて包括的でバランスの取れた視点を確保し、継続的な改善やスキル開発を重視する文化を促進できます。らせん型モデルは、個人の能力、スキル、可能性を包括的に把握できるようにすることで、組織の有効性を高めます。 
  • 特定のプロジェクト/タスクの移転価格や予算編成データが保存されている財務会計システムをらせん型モデルと連携させる: これが極めて重要である理由は、人財は能力ユニットに割り当てられる一方で、人員配置や予算編成は価値創造ユニットで処理されるからです。これを可能にするには、明確に定義されたコスト配分や移転価格ロジックが必要になります。 

「必要なツールやガイダンスを提供しないで組織内の個人の行動が変わることを期待するだけでは、何も変わらないことは明らかです」と McKinsey 社の Andy Fong 氏は述べています。

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