今年優先すべき上位の人事指標

適切な人事指標を追跡することが、人財戦略の影響を理解するための鍵になります。人事部門の役割がより戦略的なものになるにつれて、適切な指標を優先することが、単なる管理業務と真のリーダー業務との違いにつながります。

 

Maria Valero 2025年 5月 15日
椅子に座って微笑んでいる黄色いシャツの女性

現在の職場環境において、人事担当者はかつてないほど多くのことを求められています。企業文化の形成、ワークフォースのスキルアップ、人工知能 (AI) や自動化によるアジリティの向上など、人事部門の役割はこれまで以上に幅広く、戦略的なものになっています。

実際に、Harvard Business Review の『The New HR Imperative』レポートによると、エグゼクティブの 82 %が、現在は人事部門が組織の戦略やビジョンに影響を与えることが非常に重要になっていると回答していますが、自社の部門においてその準備ができていると回答したのは 33% に過ぎません。

人事部門のリーダーは、どのようにしてこのギャップを埋めればよいのでしょうか。そのための第一歩として、一貫した方法で人事に関するパフォーマンス指標を測定することが重要です。

適切な人事指標を使用すれば、各社員のパフォーマンスを追跡したり、さまざまな機会を特定したり、人財戦略についてよりスマートな判断を行うことができます。つまり、人事部門が行う業務を通じて、ビジネスの成果を上げるサポートができるということです。

今年は各企業が、経済状況の変化、デジタル アクセラレーション、進化する社員の期待に継続的に対応していますが、こうした状況で適切な人事指標を優先することは、これまで以上に重要になっています。このブログでは、人事指標とは何か、なぜ人事指標が重要なのか、2025 年以降にビジネスにインパクトをもたらすためにはどの人事指標に注目すべきなのかをご紹介します。

エグゼクティブの 82% が、人事部門は組織の戦略やビジョンに影響を与えるべきだと回答しています

人事指標とは

人事指標とは、人財に関するポリシー、プロセス、戦略の有効性と効率性を評価するための定量的な指標のことを指します。人事指標により、人財の獲得、社員の定着率とエンゲージメント、学習と能力開発、組織としての健全性、ワークフォース プランニングなど、さまざまな人事業務に関するインサイトを確認することができます。

表面的な数字 (採用人数や社員数など) を追跡する運用上のデータ ポイントとは異なり、人事指標はビジネスの成果に関係しています。リーダーは人事指標により、以下のような点について深く検討することができます。

  • 適切な人財を採用しているか
  • 優秀な人財を確保しているか
  • 社員は必要なスキルを習得しているか
  • これらの成果はビジネス全体にどのような影響を与えるのか

優れた人事指標があれば、過去の実績を確認できるだけでなく、現在と将来において適切な意思決定を行うためのインサイトも取得することができます。AI と機械学習が働き方を変革している現在では、こうしたインサイトがさらに強力なものになっています。

2025 年に適切な人事指標を優先すべき理由

各業界のビジネスリーダーは、ワークフォースのアジリティ、パーソナライズされたキャリア開発、エンプロイー エクスペリエンスの強化に注力していますが、その中心になるのが人事部門です。人事部門に対する期待が高まっている現在、人事部門のリーダーに必要なものは、信頼性の高いデータドリブンなインサイトです。

ここで重要になるのが人事指標です。うまくいっていることとそうではないことを明確にすることにより、人事部門による影響力を示し、状況の変化にすばやく対応できるようになります。適切な指標を使用すれば、さまざまなケースにおいて (トレーニング プログラムの ROI の追跡、募集中の役職に対する社内人財の特定、燃え尽き症候群のリスクを抱えているチームの把握など)、具体的な目的を持って迅速に行動を起こすことができます。

多くのビジネスリーダーが、ワークフォースのアジリティとエンプロイー エクスペリエンスの強化に取り組んでいますが、その中心になるのが人事部門です

同時に、社員が期待することも進化しています。現在のワークフォースは、透明性と公平性の確保や機会の提供を求め、進歩を望んでいます。人事指標を活用すれば、責任を持って人財戦略を実施できるようになります。これにより、スキル開発や社内人財の流動性などにおける取り組みを、単なる意図ではなく測定可能な影響力に基づいて進めることができるようになります。

適切な人事指標を追跡することにより、これらの優先事項を実現するための可視性を得ることができます。しかし、人事部門のリーダーの 32% は、AI や機械学習 (ML) などの新しい技術を効果的に活用するためのスキルが不足しているかもしれないと懸念しています。これは、適切な測定方法と並行してデータリテラシーを高めることの重要性を示しています。

指標追跡の優先順位付けは、単にチェックボックスにすればいいというものではありません。指標に優先順位を設定することにより、変化に強く応答性が高いインクルーシブな組織の構築につながります。現在は適応性が非常に重視されていますが、重要な指標を明確にするかどうかが、ビジネスにおいて先行するか遅れをとるかの分かれ目になる可能性があります。

追跡すべき最も重要な人事指標

人事部門は、短期的なニーズと長期的な戦略とのバランスを取る必要があります。そのためには、ワークフォースのパフォーマンスと進化の状況を可視化する必要があります。重要な人事指標により、さまざまな業務 (採用業務の効率化、インクルーシブな企業文化の形成、将来に向けたワークフォースの準備など) の進捗状況を把握し、必要に応じて軌道修正することができます。

ワークフォース プランニングと人財獲得に関する指標

人財が不足している現在の労働市場において、ワークフォース プランニングと人財獲得に関する指標は、優秀な人財を獲得して育成する方法を理解するための極めて重要な手段です。主要な人事指標を以下に示します。

  • 採用までの期間: これは、特定のポジションが埋まるまでの平均日数を測定する指標です。採用までの期間が長い場合、採用活動の効率が低い、候補者の希望と職務内容が一致していない、採用プロセスにボトルネックがある、などが原因として考えられます。

  • 採用の質: これは、新入社員のパフォーマンスと定着率を評価するための指標です。多くの場合、パフォーマンス レビュー、育成期間、在職期間に関するデータを組み合わせたものが、この指標になります。

  • 内定承諾率: これは、候補者が内定を承諾する割合を示す指標です。企業のブランド力と報酬の競争力を評価する場合に役立ちます。

  • 採用単価: これは、採用活動にかかった総費用を採用人数で割った値です。この指標により、採用活動の効率性と有効性のバランスをとることができます。

現在は、ソーシング、スクリーニング、フォーキャストに関する業務で AI を導入する企業が増えていますが、AI を活用した採用活動に関する新しい指標が出てくることが予想されます。

定着率とエンゲージメントに関する指標

定着率は、離職率よりも重要な指標です。定着率により、人財が会社に残る理由や退職する理由だけでなく、どの程度の意欲を持って業務に取り組んでいるかを把握できます。以下の指標に注目する必要があります。

  • 自己都合の離職率: これは、自分で退職を選択した社員の割合を示す指標です。自己都合の離職率が高い場合、企業文化やリーダーシップに問題がある可能性があります。

  • 社員ネット プロモーター スコア (eNPS): これは、社員エンゲージメントと、社員が自分の会社を働きやすい職場として友人などに勧める可能性を測定するための指標です。

  • 社員満足度: これは、社員エンゲージメントとは異なる重要な指標です。社員満足度は、チーム メンバーの日常業務における満足度を測定するための指標です。

  • 社内人財の流動率: これは、既存の社員によって補充されるロールの割合を追跡するための指標です。この指標は、社員の成長のサポート、定着率の維持、リソースの節約に役立ちます。

人事部門リーダーはこれらの指標を組み合わせることにより、思い込みにとらわれることなく、社員の忠誠心、活力、成長の要因を理解し、それを改善するための行動を起こすことができるようになります。

学習、能力開発、スキルに関する指標

スキルが新しい通貨となるビジネス環境において、人事部門は、学習の成果とワークフォースの能力を明確に可視化する必要があります。トレーニングや能力開発を追跡するための重要な指標には、以下のような指標があります。

  • トレーニング修了率: これは、必須の学習プログラムまたは任意の学習プログラムを修了した社員の割合を示す指標です。

  • スキルの習得速度: これは、優先度の高いスキルの習得速度を示す指標です。評価やスキル クラウド データを通じて測定されます。

  • スキル ギャップ指標: これは、現在のワークフォースのスキルと、将来的なビジネス目標を達成するために必要なスキルを比較するための指標です。

  • 将来的に必要なスキルを持つワークフォースの割合: これは、変革に対する準備状況を示す複合的な指標です。

スキルに関する指標を一貫した方法で測定することにより、イノベーションの速度に合わせて人財の潜在能力を引き出すことができるようになります。

組織の健全性に関する指標

社員が安心して仕事ができるようにするには、社員のライフサイクル全体に組織の健全性指標を組み込む方法が効果的です。人事部門のリーダーは、以下の指標を優先する必要があります。

  • 給与公平性指標: これは、給与の公平性を確保するための指標です。年次報酬レビューで給与の格差を特定して対処します。

  • 公平な昇進率: これは、組織における昇進機会の公平性を評価するための指標です。

  • インクルージョン調査スコア: これは、業務における社員の帰属意識、尊重意識、心理的な安全性を把握するための指標です。

これらの指標の追跡は、よりインクルーシブな職場環境の構築に役立ちます。

ワークフォースの生産性と業務効率に関する指標

AI、自動化、デジタル ツールは、私たちの働き方を変えつつあります。こうした技術が生産性と効率性にどのように影響するかを理解するため、人事部門は以下の指標をモニタリングする必要があります。

  • スパン オブ コントロール: これは、マネージャ 1 人当たりの直属の部下の平均人数を示す指標です。この人数は、マネージャのキャパシティとチームのダイナミクスに影響します。

  • 社員 1 人当たりの収益: これは、ワークフォースの規模をビジネスの成果に関連付けるための概要的な生産性指標です。

  • 欠勤率: これは、予定外の休暇の割合を示す指標です。欠勤率が高い場合は、ウェルビーイングやエンゲージメントに問題がある可能性があります。

  • AI の導入と使用に関する指標: 人事部門が AI ツールを導入する場合、その使用率と成果を確認するのが ROI を理解するための鍵になります。

  • マネージャの有効性スコア: この指標は、社員の声を聞き、改善の機会やリーダーシップ能力の開発が必要な箇所を特定する場合に役立ちます。

これらの指標により、業務がどのように処理されているのか、どこに効率化、自動化、投資の余地があるのかを包括的に把握できるようになります。

測定のベストプラクティス

各種の指標は、データドリブンな意思決定と同じように有用なものです。データが豊富でペースの速い現在のビジネス環境では、有益な指標は単なる数字ではなく、戦略的なシグナルとして扱う必要があります。人事部門はこうした指標を活用して、隠れたリスクを発見し、ビジネスの進歩につなげることができます。しかし、適切な方法で活用しないと、有益な指標であっても効果が出ない場合があります。

人事指標の価値を高めるには、以下のベストプラクティスに従ってください。

  • 指標をビジネスの目標に合わせる: 測定自体が指標を測定する目的にならないようにしてください。顧客満足度、イノベーション、成長など、ビジネスにとって重要な成果に指標を関連付ける必要があります。
  • データの品質と一貫性を確保する: 唯一の正しい情報源を確保することが重要です。データがまとまっていない場合、判断に迷い意思決定が遅くなります。
  • アクセスしやすいアクショナブルな分析に投資する: 人事部門とビジネスリーダーに、人財分析のインサイトをリアルタイムで示すための直感的なダッシュボードを提供する必要があります。
  • 人事部門全体のデータリテラシーを高める: 人事担当者は、データを解釈して的確な質問を行い、行動を起こすためのスキルを習得する必要があります。
  • 継続的に改善する: 指標を活用する目的は、単に報告を行うだけでなく、人財戦略について学習して反復し、進化させることです。

状況に応じた測定を行い、その結果をシステム間で接続することにより、人事部門は状況の変化に対応できるだけでなく、変化を先取りするための透明性とアジリティを確保できます。

よりアジャイルなモデルや新しいテクノロジーを導入する企業が増えていますが、それに伴って人事指標の測定の内容と方法も進化していくことが予想されます

今後の動向: AI が普及したスキル重視のビジネス環境における人事指標

未来の人事指標は、適応性が高くインテリジェトで非常に人間的なものになります。よりアジャイルなスキルベースのモデルと新しいテクノロジーを導入する企業が増えていますが、それに伴って人事指標の測定内容と測定方法も進化していくことが予想されます。これからの人事指標は、すべてのレベルにおいて、さまざまな情報に基づいた迅速な意思決定を可能にする、将来を見据えた資産になります。

今後の人事部門の役割は、さらに動的かつ予測的でパーソナライズされたものになっていきます。AI 機能と ML 機能の進化に伴い、人事部門は以下のことができるようになります。

  • キャリア開発と人財異動のためのインテリジェトな提案を作成する

  • 社員のセンチメントとエンゲージメントに関する異常やリスクを検知する

  • ワークフォースの正確な需給予測を行う

  • リアルタイム データを使用して、指標の追跡とレポート作成を自動化する

今後は、人間の目を通して価値を測定する方法を再定義できるようになります。この進化を受け入れることにより、変化を予測して迅速に対応し、人財戦略を中心としてビジネスを成功させることができるようになります。

人事指標をビジネスに活用する

現在の人事部門リーダーは多くの複雑な状況に直面していますが、こうした状況に対処するためのツールも、かつてないほど充実しています。人事指標は、単に社員のパフォーマンスを確認するための方法ではなく、人事部門とビジネスの真の価値を一致させるための方法です。適切な指標を適切な方法で使用すれば、何かが起こってから行動するのではなく戦略的に行動できるようになり、直感に頼るのではなくインサイトを活用できるようになります。

変革をベースとする環境では、最も重要な指標を測定することが競争上の優位性になります。重要な指標を測定することにより、迅速な対応、効果的なサポート、ワークフォース ニーズの変化の先取りが可能になります。これは、スキル、公平性、成長における進歩について、人事部門が責任を負うということでもあります。

人事部門のリーダーにとっての今年の課題は、人事データでどのような問題を解決できるか、どのような行動を起こすことできるか、人財戦略が会社に与える影響をどのようにレベルアップできるかを理解することです。

リーダーは、正確な比較データ、一貫したベンチマーク、強固な分析機能を使用することにより、自信を持って変革を推進し、その効果を測定できるようになります。Workday Peakon Employee Voice の詳細をご確認ください。

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