前述の課題を乗り越える目処がついたとして、次に進めるのは今後進めるDX計画の準備です。
ここでは「経営レベルでDX計画の合意を得る」を一つのゴールとして、準備をすべき5つのステップを紹介します。
- 現状分析
- DXのターゲット決定
- DXのロードマップ作成
- DXの運用体制検討
- DX計画の経営承認
一つずつ解説していきます。
5-1. 現状分析を行う
ひとことで「DX推進」と言っても、対応範囲は多岐に渡ります。まずはDXが必要な箇所を洗い出すための現状分析を行います。
現状分析は「定量」「定性」の両面からアプローチするようにしてください。
現状分析をきちんと行っておけば、経営にDX化の提言をする際の説得材料となります。それだけでなく、DXを進めたあとにどの程度の効果があったかという効果測定にも活用できます。
5-2. DX化のターゲットを決める(優先順位を決める)
現状分析の結果をもとに、DXを進める対象や順序を組んでいきます。
優先順位を決める際は「緊急度」「重要度」×「発生コスト」「見込み利益」の観点をもとに検討を進めると良いでしょう。
【優先順位の考え方の例】
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発生するコスト
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見込める利益 |
緊急度の高さ
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緊急度が高くコストがかからないものは着手しやすい
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緊急度が高いが利益が見込めないものは要検討
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重要度の高さ
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重要度が高いがコストがかかるものは要検討
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重要度が高く見込める利益が多いものは優先順位が高い
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上記の考え方はあくまで一例です。実際には「コストも発生し利益も見込めるが、今すぐ着手しなくてもいいもの」など、解釈が色々生まれるかと思います。
とかく重要度や緊急度は各人によって捉え方が異なるため、何かしらのフレームをもとに検討を進めると、議論の空中戦を避ける効果はあるでしょう。
5-3. DXのロードマップを作る
優先順位を決めたあとは、「いつ」「誰が」「どのように」DXに取り組むかのロードマップを作成します。
DX化の特徴は、最終的に目指す姿に到達するまでには長い年月がかかる点です。
最終ゴールが見えずに単年度の取り組みを積み重ねると、都度都度取り組み内容が変わったりして対応が場当たり的になることです。
環境変化が激しい昨今では5年後の状況など見通せないことも多いかと思います。それでも現時点での最終ゴールとロードマップは用意するようにしてください。
環境変化があったとしてもベースとなるロードマップがあれば、それを拠り所にブラッシュアップが加えられるようになります。
5-4. DXの推進体制を確立する
DXの取り組み規模にもよりますが、本気で取り組む場合はDX専任のチームを組閣することがおすすめです。
組織には定期的な人事異動があります。各部署に「DX推進担当」などを任命したとしても、組織改編のたびに人員をアサインするのは不安定な上に、推進のパワーが低下します。
人事異動に左右されない専任チームを設けることで、新たな採用など思い切った動きも取りやすくなります。また専任にすることでチームのモチベーションが上がり、良い意味で責任を持ってDXを推進してくれる期待も持てます。
5-5. 経営にDX計画の承認を得る
最後に、これまでまとめた内容を自社の経営レベルに審議を諮るようにしましょう。
持ち込み方は各社異なりますが、定期的に経営会議が開催されているなら、DX計画の議題申請をするようにしてください。
声の大きい役員などの個別の根回しなども必要かもしれませんが、審議は経営ボードメンバーが集まる公の会議が望ましいでしょう。なぜなら、前述したようにDX化は緊急度が高くないため、着手後に別案件の影響で頓挫するケースが多いからです。
経営メンバー全員の合意が取れれば、全社的な重要取り組み事項としてオーソライズされたと見なされます。多少の経営環境の変化があっても、計画が覆りにくくなるでしょう。
6. まとめ
今回の記事では、どの企業でも関心事であるDX推進について、一般的に起こっている課題の実情についてお伝えしました。
あらためてこの記事のポイントをまとめます。
◎ DX推進の課題は以下の5つです
方針に関する課題
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体制に関する課題
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システムに関する課題
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◎ ほとんどの企業が、現状は「DXの初期段階」「"守り" のDX中心」「従来のビジネス改善が中心」です。
- ◎ DXを進めないと起こり得るリスクは以下の通りです
- 「2025年の壁」問題による損害が生じる
- ビジネスモデルの変化に対応できず、機会損失になる
- ニューノーマルな働き方に対応できず、人財獲得力が低下する
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- ◎ DXの課題を乗り越えるには4つのポイントがあります
- DXで目指す姿の経営レベルでの共有
- 既存システムの「見える化」
- ベンダーや社内体制の見直し
- DX推進リソースの確保
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- ◎ DXを進めるためには以下の5つの準備が必要です
- 現状分析
- DXのターゲット決定
- DXのロードマップ作成
- DXの運用体制検討
- DX計画の経営承認
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日本ではDXへの遅れや失敗事例などのネガティブな話題が多いのも事実ですが、逆の見方をすると自社が推進する際に、あらかじめ学ぶべき先行課題がふんだんにあるとも言えます。
DXは当面の予算や体制などに影響があるので推進に躊躇する人も多いかもしれませんが、何も手をつけないと数年後には企業存続に影響を与えかねないリスクに発展する可能性もあります。
企業によって確保できる予算や、経営上の優先順位は異なると思うので、当記事でDXの課題を知った上で「自社ならどのようなDX化のロードマップが描けるか」をまずは考えていただければ幸いです。