全社員の声に耳を傾ける: ダイバーシティ、公平さ、インクルージョンの尊重

『社員の期待レポート (2021 年)』の調査結果によると、DE&I のトピックについてコメントした社員の割合が大幅に増加しています。このことから、ますます多くの社員が雇用主に対し、DE&I について明確なスタンスをとること、新しいイニシアチブを共有すること、あらゆるレベルで全社員の声に耳を傾けることを望んでいることがわかります。

この 1 年間、ダイバーシティ、公平さ、インクルージョン (DE&I) を取り巻く環境が劇的に変化しました。

世界的なパンデミックの最中、黒人コミュニティのメンバーに対する暴力事件が発生し、そのことが人種的不正義に対する、歴史上最も強く団結した世界的抗議へと発展しました。全米規模のロックダウンによる圧力にもかかわらず、人々は人前に出て自らの考えを主張しました。一方でこの運動は、企業が自身の DE&I へのアプローチを再評価し、社員のサポートを強化するためのターニング ポイントとしての役割を果たしました。

『社員の期待レポート (2021 年)』によると、DE&I のトピックについてコメントした社員の割合が、2020 年には 3 分の 1 以上増加しています。コメントの大幅な増加から、ますます多くの社員が雇用主に対し、DE&I について明確なスタンスをとること、新しいイニシアチブを共有すること、あらゆるレベルで全社員の声に耳を傾けることを望んでいることがわかります。

この新しいレポートは、160 か国 3,000 万人の社員によるコメントを分析して作成されたものであり、2019 年以降 DE&I に関する会話がどれほど増加したのかを示しています。

『社員の期待レポート (2021 年)』によって明らかになったインサイトを掘り下げた最初の試みでは、家族のケアをしている従業員をサポートする中での柔軟な働き方の重要性について検討しました。今回は、世界中の社員が職場における DE&I についてどのような意見を持っているのか、また、雇用主に対して今後何を期待しているのかを考察します。

「取り組みを強化し、その効果を高める必要があります。特権に対する意識を、理解やプロセス、ポリシーの構築の中心に据えなければなりません」

Rick Kershaw シニア HR ディレクター Workday

社員は社会的な問題について自身の話を聞いてもらいたいと考えている

インターネットとソーシャル メディアのおかげで、現在私たちはかつてないほど簡単に、世界中の人々と迅速かつ効果的にコミュニケーションをとることができます。しかし、これらの媒体やプラットフォーム上でしばしば見逃されているのが、ダイバーシティ、公平さ、インクルージョンに関して公平な議論を行うための機会です。社員一人ひとりが最大限に能力を発揮できるような職場環境を実現するには、すべての社員が自身の話を聞いてもらえるスペースを雇用主が作る必要があります。

調査によると、2019 年には DE&I に関連するコメントの割合が 19% 増加しています。2020 年にはさらにその倍、38% 増加しています。これらの数字は、DE&I に関する考えを社員が安心して共有できるスペースを作ることの重要性を強調しているだけでなく、社員がますます頻繁に DE&I に関するトピックを話題にしているということも示しています。

しかし、数字が上昇した背景には悲劇と憤りがあります。「人種的不平等」に関するコメントをした社員の割合を見ると、2020 年 5 月 25 日 の George Floyd 氏の死が大きく影響したことがわかります。この事件はやがて世界規模の社会正義運動に発展しました。「ブラック・ライブズ・マター」という言葉が社員のコメントに最初に表れたのは、Floyd 氏の死からわずか 1 週間後でした。

このことから引き出せる結論は主に 2 つあります。1 つ目は、過小評価されているマイノリティ グループが直面する人種差別や暴力に関する会話に参加した有色人種やその擁護者の数が、急増しているということです。2 つ目は、こうした会話は、もはや社員のプライベートな生活の中だけでなされているわけではないということです。職場でもこうした会話が行われています。

このトピックに関するコメントが急増していることから、社員が職場であってもこの会話に積極的に参加したいと考えていることがわかります。そこで、この問題に企業としてどう対応するのかが重要になります。また、その対応方法は、今後ますます社員の労働意欲や忠誠心の決定的な要因となるほか、求職者がその企業に入社するかどうかの判断材料になります。

成功の鍵はインターセクショナリティ (交差性)

DE&I ポリシーの構築方法を検討する場合は、一歩下がって全体像を見ることが重要です。レスポンシブ (敏感) であることは必須ですが、リアクティブ (受身) であってはいけません。そのためインターセクショナルなアプローチをとるのが最適です。

職場のインターセクショナリティとは、人種、階級、性別、性的指向、宗教などの個人のさまざまな側面が交差することや、これらの側面が各個人の中で重なり合うことによって、その個人が直面する固有の有利な立場や不利な立場を形成する過程を意味します。2021 年、社員は雇用主に対し、自身の日常経験全体に対して共感を持って欲しいと考えています。

ブラック・ライブズ・マター運動をきっかけに人種的不平等にとりわけ関心が集まった一方、性別的不平等は 2020 年でも引き続き社員にとっての根強い問題となっていました。DE&I に関する昨年のコメントのうち、「人種」に関するトピックを扱っていたものが 25% を占める一方、「性別」に言及していたものは 18% を占めていました。

社員のニーズを検討するときは、社員に関するすべての事柄を考慮するほか、不平等に対する戦略に複数の方法で同時に投資する必要があります。そのための鍵となるのは、データの利用を通じてどこにインターセクショナリティが存在しているのかを把握すること、定期的に各社員の固有のニーズに対して耳を傾けること、新しいポリシーや戦略が誰をサポートするために設計されたのかを具体的にしておくことです。

ダイバーシティ、公平さ、インクルージョンに関するインプットが重要

グローバルな規模で広がっている人種的不正義や性別的不平等に直面すると、気持ちが簡単に萎縮してしまうかもしれません。しかし、「私にできることは何だろうか?」と自問することが重要な最初のステップです。社員の多くは、自身の懸念が継続的に改善されることを望んでいますが、それと同程度に、雇用主が DE&I のトピックに対して真摯に取り組むことを望んでいます。

昨年の DE&I に関するコメントのうち、「リーダーシップ」や「マネジメント」などの言葉に言及したものは 43% でした。これが示しているのは、一部の社員はこの問題に関し、リーダーに対してもっと多くのサポートを求めているということです。社員が上司や指示系統に対して積極的にサポートを求めることほど明確なアクション サインはないと思われます。

前にも述べたとおり、リアクティブ (受身) なアクションをとるだけでなく、長期的な変化を考慮したアクションをとることが不可欠です。Workday Peakon Employee Voice プラットフォームの社員の労働意欲スコアを見ると、世界平均が、昨年の社会正義運動と同時に 6 月と 7 月にピークを打ち、その後横ばいになっていることがわかります。

しかし、先行きに期待が持てる点は、1 月から 12 月までの間、DE&I スコアはしっかりと上昇トレンドを描いていることです。全般的に見れば、企業は社員の期待の変化に気が付いており、グローバルな会話において例年よりも大きな役割を果たしました。企業は、外部の一般認識、すなわち DE&I に関する一般的な問題に注目するのではなく、自社の従業員のニーズに応えるために多くの注意を払いました。

それでは、では今やるべきことは何でしょうか。企業にとってきわめて重要なのは、アカウンタビリティを組み込むことです。ビジネス目標を DE&I 目標に結びつければ、企業内に持続可能な進歩を根付かせ、望ましい共通の成果に向けて全社員を団結させることができます。また、一歩踏み出して声をあげることによって、誰もが建設的かつ持続可能な組織的変化を推進する役割を果たすことができます。

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