人事部のあるべき姿とは?今求められる役割と実現のための方法を解説
人事部のあるべき姿とは「経営目標を実現させるため、自社人財の能力を最大限に活用する戦略を立てて実行できている状態」です。実際に、成功している企業の人事部はそういった限定的な考えから脱却し、会社全体の経営戦略に基づいて人財を育成したり、パフォーマンスを向上させるための施策に取り組んだりしています。最後までお読みいただけると、人事部のあるべき姿を理解した上で、今求められている役割から実際の業務内容までを知ることができます。
人事部のあるべき姿とは「経営目標を実現させるため、自社人財の能力を最大限に活用する戦略を立てて実行できている状態」です。実際に、成功している企業の人事部はそういった限定的な考えから脱却し、会社全体の経営戦略に基づいて人財を育成したり、パフォーマンスを向上させるための施策に取り組んだりしています。最後までお読みいただけると、人事部のあるべき姿を理解した上で、今求められている役割から実際の業務内容までを知ることができます。
人事部のあるべき姿とは「経営目標を実現させるため、自社人財の能力を最大限に活用する戦略を立てて実行できている状態」です。
この認識が欠けていると「人事部は採用や研修などの業務を滞りなく回す、オペレーション部門に過ぎない」という考えにとどまり、会社へ充分な貢献ができなくなってしまうことでしょう。
実際に、成功している企業の人事部はそういった限定的な考えから脱却し、会社全体の経営戦略に基づいて人財を育成したり、パフォーマンスを向上させるための施策に取り組んだりしています。
そこでこの記事では「人事部のあるべき姿を知り、理想の組織・会社を実現したい」と考えている人に向けて以下の内容を解説していきます。
|
この記事を最後までお読みいただけると、人事部のあるべき姿を理解した上で、今求められている役割から実際の業務内容までを知ることができます。
さらに「人事部のあるべき姿を実現するための方法」も紹介するため、具体的な道筋もイメージしやすくなるでしょう。
理想的な「人事部のあるべき姿」を実現することで、会社全体の成長に貢献していきましょう。
冒頭でもお伝えした通り、人事部のあるべき姿とは「経営目標を実現させるため、自社人財の能力を最大限に活用する戦略を立てて実行できている状態」のことを指します。
人事部のあるべき姿とは |
|
ただし、現状はこのように「人事部は戦略部門である」という認識を持っている会社ばかりではなく、どちらかというと「業務管理中心の部門である」というイメージを持っている会社のほうが多いのではないでしょうか。
そうすると、「現状」と「あるべき姿」の間に以下のようなギャップが生まれてしまいます。
人事部のあり方についての考え方や仕組みが、左側の「現状」の項目のままでは、今後その企業の成長は見込めないということは明らかではないでしょうか。
指示待ちの単なる業務遂行部署のままでいるのではなく、経営方針に沿って会社全体の成長に貢献する戦略部署になることが、人事部のあるべき姿だといえるでしょう。
人事部のあるべき姿について、概要はご理解いただけたのではないでしょうか。
そこで次は「そんな人事部に求められる役割とはどのようなものなのか」という点について解説していきます。
アメリカの「最も影響力のある経営思想家トップ50名」に選出されたこともある、ミシガン大学教授デイビッド・ウルリッチ氏は、著書「MBAの人財戦略」の中で人事部の役割を以下の4つの機能に分けてまとめています。
① 戦略パートナー (Strategic Partner) |
会社の経営目標を達成するための人事戦略を立てて実現する |
② 変革エージェント (Change Agent) |
企業理念やバリューに沿った人財戦略を推進するために組織の変革を促進する |
③ 管理エキスパート (Administrative Expert) |
組織や人を取りまとめ、適切に業務管理を遂行する |
④ 従業員チャンピオン (Employee Champion) |
現場の意見に耳を傾け、その声を人事戦略や施策に活かすことで社員の意欲や能力の向上を狙う |
これは、横軸に「管理するもの」、縦軸に「時間軸」を置いて、以下のように4象限で整理することができます。
出典:デイビッド・ウルリッチ「MBAの人財戦略」
上記の図から、人事部には「採用や人事異動などの業務管理」だけではなく「会社の経営目標や将来の方針と連動して戦略を立て、変革を推進していくこと」が求められていると見て取れると思います。
ウルリッチ氏は、人事はこの4つの機能をしっかりと果たすことが重要であると提唱しています。
そこでこの章では、人事部に求められる役割をこの4つの分類に基づいて解説していきます。
「戦略パートナー」の機能とは、以下のように「会社の経営目標を達成するための人事戦略を立てて実現すること」を指します。
戦略パートナーとは |
|
そのため、「経営層と同じ目線を持ち、理想の経営を実現するための人事戦略を立案・構築し、能動的に実行していくこと」が求められます。
具体的には以下のような役割を担います。
戦略パートナーの役割 |
|
つまり、単純に「営業部から人手が足りないと言われたから採用しよう」「最近はDXがトレンドだから研修のメニューに入れよう」というような近視眼的な仕事をするのではなく、「会社の目標や事業戦略を実現するために何をするべきなのか?」という視点で、人財の採用や育成・組織開発などの戦略を立てることが必要なのです。
上記のように戦略パートナーとしての人事は、将来の目標や経営戦略に対する「実現のための制度づくり」や「戦略構築面」にフォーカスすることが重要になります。
「変革エージェント」の機能とは「企業理念やバリューに沿った人財戦略を推進するために組織の変革を促進すること」を指します。
変革エージェントとは |
|
戦略パートナーの機能と同様、フォーカスするのは「将来のこと」ですが、その範囲は仕組みや戦略ではなく「人との信頼関係を考慮した変革」となります。
会社として組織の変革が必要になったときによくあるのが、経営側と現場側の考えに乖離があることで反発が生じ、プロジェクトが止まってしまうというケースです。
そんなときに人事部に求められるのが、両者を取り持ち変革を円滑に推進する「変革エージェント」としての機能となります。
具体的には以下のような役割が期待されます。
変革エージェントの役割 |
|
上記のように、現場の社員との信頼関係を築きながら組織の変革を進めていくという点が大きなポイントとなります。
そのため、経営層と対等に話せるビジネス的視点を持ちつつ、現場の社員のモチベーション向上や説得を行えるような心理学の知識・コーチングの技術などが求められるでしょう。
「管理エキスパート」の機能とは「組織や人を取りまとめ、適切に業務管理を遂行すること」を指します。
管理エキスパートとは |
|
上記の通り、日々の業務管理を滞りなく遂行することを指すため、「従来の人事部の業務内容」として最もイメージしやすい部分だといえるでしょう。
具体的な役割は以下の通りです。
管理エキスパートの役割 |
|
例えば、社員が勤怠を正確に記録できるようなシステムを整備したり、各自の保有している資格などをデータベース上で管理したりと、毎日の業務に直結する業務がメインとなります。
このように、日常の業務効率向上のために人や組織を管理するのが「管理エキスパート」の役割となります。
「従業員チャンピオン」の機能とは「現場の意見に耳を傾け、その声を人事戦略や施策に活かすことで社員の意欲や能力の向上を狙うこと」を指します。
従業員チャンピオンとは |
|
ただし「現場の声を聴けばいいだけ」というわけではなく、社員の代表として経営側へ意見を述べて施策に反映させていかなければなりません。
そのため社員から信頼を得ておくだけでなく、経営側からも認められている必要があります。
具体的な役割には以下のようなものがあります。
従業員チャンピオンの役割 |
|
上記のように、例えば現場の社員にアンケートを行ってどんなことに困っているのかを把握したり、先輩と後輩の交流の場を作ることで後輩社員がロールモデルを見つけられるようにしたりするなど、社員の感情に寄り添ったサポートが求められます。
このように、日常的な面で社員の意欲向上をサポートするのが「従業員チャンピオン」としての人事に求められる役割ということになります。
ここまでお読みいただいたことで、人事部に求められる役割についてはご理解いただけたのではないでしょうか。
しかしこれだけでは具体的に何をすれば良いのかわからず、実行に移すイメージを持つことができないかもしれません。
そこでこの章では、人事部の具体的な業務内容について、以下の4つの項目に分けて詳しくお伝えしていきます。
人事部の業務 |
|
それぞれの業務内容まで細かく理解することで、理想の人事部実現のための具体的な施策に着手できるようになります。
早速見ていきましょう。
人事部の具体的な業務の一つ目は「人財採用」です。
理想の経営を実現するためには、その戦略の遂行に必要な人財を確保することが非常に重要です。
特に近年は人手不足や採用難が常態化しており、頭を悩ませている人事担当者も多いのではないでしょうか。
人財採用における具体的な業務内容は以下の通りです。
人財採用における具体的な業務内容 |
|
人財の採用には新卒採用と中途採用がありますが、中途採用の場合は即戦力として活躍してもらう必要があるため、特に「会社の求める人物像」に合致した人を見つけることが重要です。
単に「優秀な人を採ればいい」ということではなく、「配属予定の部署のメンバーとの関係がうまくいきそうか」「性格や仕事の進め方は自社の企業文化に合っているか」といった部分も考慮しなければなりません。
例えば、新卒で外資系企業に入社し、成果や効率性を第一優先に考えるような働き方に慣れている人が、急に年功序列やチームプレーを何よりも重んじる部署に入れられたらどうなるでしょうか。
既存社員の考え方と異なる部分が多いため、いつまで経っても馴染めず「せっかく優秀な人財を採用できたと思ったのに、うまく活躍してもらえなかった…」という残念な結果を引き起こしてしまうかもしれません。
そういったリスクの生じない人かどうかを見極めたり、もしリスクが残るなら事前に双方のフォローをしておくというのも、人事部の大切な役割のうちの一つです。
上記の他、面接官の役割を現場の社員が担う場合には、マニュアル作りやトレーニングなども必要になります。
次は「人財育成」についてお伝えします。
企業が経営目標を実現させるだけの力をつけるためには、社内の人財の能力を最大限に引き出し、うまく伸ばしていくことが大切です。
社員にとっても自身のスキルアップは昇進・昇給につながるため、企業にも社員にもメリットがあることだといえるでしょう。
人財育成における具体的な業務内容は以下の通りです。
人財採用における具体的な業務内容 |
|
人財育成の業務としては、まずは上記のように「自社の将来のためにどのような能力・スキルが必要か」を考え、育成の計画の全体像を描いていきます。
例えば5年後、10年後に海外事業を拡大させていきたいということであれば、今のうちから20代の若手社員に、事業推進に必要な考え方や海外で通用するビジネススキルを身に着けてもらう必要があるでしょう。
ただし、社員を歯車の一つとみなして会社の方針を押し付けるだけではいけません。
単純に「マネジメント力のある中間層が何人必要」「法的にこんな資格を持った人が必要」というような観点しか持っていないと、社員のモチベーションが低下してうまく育ってくれなかったり、この会社では自分は成長できないと感じて退職してしまったりという事態を招いてしまいます。
そのため人財育成の担当者は、会社の目標と社員の想いが同じ方向を向くように調整することが重要になります。
「社員が自発的にスキルを磨いて業務に取り組む」→「その結果、経営目標が実現する」→「社員のモチベーションが上がる」というポジティブなサイクルを作れると理想的です。
次は「人事評価」についてです。
人事評価とは、社員の業務遂行状況や発揮した能力、業務態度などを成績として評価することです。
人事評価の具体的な業務内容は以下の通りです。
人事評価における具体的な業務内容 |
|
人事評価は、社員のモチベーションに大きく関わるものです。制度自体の公平性や正当性が損なわれていると、社員の意欲が低下して事業の成長も伸び悩んでしまうでしょう。
そのため、業務実績と人件費の費用対効果や競合他社の給与水準など、様々な要素を考慮しつつ適切な評価制度を作成する必要があります。
納得感のある人事評価制度を策定・運用できれば、自然と社員のモチベーションが上がり、業績の向上や退職者の減少などを実現することができるでしょう。
また、評価制度ができたら日々の運用を行います。四半期ごと、半期ごとなど一定期間で区切って社員には目標を設定してもらい、それに対する達成状況を申告してもらいます。
その際、全てを手作業で行うと確認や管理が煩雑になるため、ITツールを導入することが一般的です。そういったシステムの導入を計画したり、社員による円滑な利用を支援することも、人事部の仕事の一つです。
最後に紹介するのは「労務管理」についてです。
労務管理とは、社員の労働時間や給与・福利厚生などを管理する業務のことを指します。
具体的な業務内容は以下の通りです。
労務管理における具体的な業務内容 |
|
上記の通り労務管理では、社員が心身共に健康を害さず快適に働ける環境を作ることが重要となります。
特に就業規則は「会社設立当初に作成したらそれで終わり」というものではなく、法改正や時代・ライフスタイルの変化に応じて改定していく必要があります。
やや地味な業務だと思われるかもしれませんが、社員が日々快適に働くことができなければ生産性が上がらず、業績も伸び悩んでしまうでしょう。
そのため、給与や勤務環境に不満を持たれないような仕組みを作って滞りなく運用していくことは、人事部に課された重要な役割の内の一つだといえるのです。
人事部のあるべき姿と、求められる役割、具体的な業務内容まで詳しくお伝えしてきました。
しかし社員数が多い企業の場合、管理する人の数や扱うデータが非常に多くなってしまうため、手作業で改革を進めようとすると早々に限界を迎えてしまうことでしょう。
そのため、一定以上の規模の企業が理想の組織・会社作りを実現していくためには、テクノロジーをうまく活用して経営戦略に沿った人財管理を行うことが最も重要となります。
「ITシステムなら既に使っている」という企業も多いと思いますが、「ただシステムを導入していれば良い」わけではないという点も考慮が必要なポイントです。
というのは、多くの企業は業務の種類ごとに異なるシステムを使用しているせいで、経営に役立つ充分なデータ活用ができていないというのが現状だからです。
そうすると、いくら「自社ならではの人事部のあるべき姿」や「理想の会社の未来像」を鮮明に思い描けていたとしても、スムーズに実現まで漕ぎつけるのは難しいでしょう。
そのためこれからの時代は、人財に関する社内のデータを統合的に管理することで、以下のような戦略的な人事業務を推進することが求められます。
戦略的な人事業務 |
|
データに基づいた人事管理ができると、より組織の力を高めることができ、ひいては会社全体の目標達成に大きく貢献できるようになります。
実際に人事変革に成功している企業は、テクノロジーの力を活用することで人事改革を推進しています。
例えば、半導体製造装置、フラット パネル ディスプレイ (FPD) 製造装置の世界有数のサプライヤである「東京エレクトロン」では、グローバルで人事制度を統一したことにより、国別の人事評価を同一基準で確認しています。具体的には以下のような取り組みを行っています。
東京エレクトロンの人事改革の一部 |
|
人事部に必要なデータの収集・分析・活用を徹底して効率化することで、グローバルで一貫した人財管理とエンゲージメントが可能になり、データ活用が組織に浸透、人事関連業務の生産性が向上する効果が生まれました。
東京エレクトロンの人事では今後も世界でトップを争う半導体製造装置メーカーであり続けるためには、グローバルでの人財の運用やエンゲージメントのさらなる向上が鍵で、人事部のデータの活用はグローバルでの統一と徹底した効率化が必要、と考えています。
人事システムを刷新すると同時に、人事制度を見直し、等級制度、評価制度、組織構成の改革を行っています。 等級や評価をグローバルで統一することで、国を越えた人財評価、人事異動がさらに実施しやすくなりました。
東京エレクトロン以外にも、日立やソニー、楽天、Sansanなどの有名企業も様々な取り組みを行っています。
システムやテクノロジーを活用しながら、自社の人事改革を成功に導きたい方や、他社の成功事例を参考にしたいという方は、下記の電子書籍をぜひご覧ください。
この記事では、人事部のあるべき姿について以下の内容をお伝えしました。
人事部のあるべき姿とは |
|
さらに、そんな人事部に求められる役割として、以下の4つを紹介しました。
① 戦略パートナー (Strategic Partner) |
会社の経営目標を達成するための人事戦略を立てて実現する |
② 変革エージェント (Change Agent) |
企業理念やバリューに沿った人財戦略を推進するために組織の変革を促進する |
③ 管理エキスパート (Administrative Expert) |
組織や人を取りまとめ、適切に業務管理を遂行する |
④ 従業員チャンピオン (Employee Champion) |
現場の意見に耳を傾け、その声を人事戦略や施策に活かすことで社員の意欲や能力の向上を狙う |
そして、人事部の具体的な業務内容として、以下の4つの項目に分けて詳細を解説しました。
人事部の業務 |
|
最後には、人事部のあるべき姿を実現するためにはITテクノロジーを適切に活用することが重要であるということを、実際の企業の事例をもとにお伝えしました。
ここまでお読みいただいたことで、人事部のあるべき姿とはどのようなものなのかがわかり、それを実現するための道筋を具体的にイメージできるようになったのではないでしょうか。
企業戦略に基づいた理想の人事部の実現を目指していきましょう。
さらに読む
「自社の中長期経営計画でグローバル進出が決まり、人事としても対応する必要がある」「一通りのHR知識はあるものの、グローバル人事は勘所が違うため、何の準備をしたらいいか分からない・・・・・・」
「グローバル人事」とは、企業のグローバル戦略を推進していくための人事戦略をいいます。採用・育成・評価などの人材マネジメント全般を「グローバルなビジネスで勝っていける状態になっているか」と総合的な視点で戦略を練る必要があります。
「経営判断のスピードを上げるためには、財務データの分析と予測が不可欠だ」
「でも、うちの会社にはそれを担う専門部署がない……」
多くの企業が直面するこの課題を解決するのが、FP&A(Financial Planning and Analysis)と呼ばれる役割です。
FP&Aは「財務計画と分析」という意味です。米国などの外資系企業ではよく見られる部門・職種ですが、近年では、日本でも導入する企業が増えています。
Workday Peakon Employee Voice の最新のインサイトによると、平均で 27% の社員が組織内で燃え尽き症候群の高いリスクにさらされていることが明らかになりました。Workday は燃え尽き症候群を引き起こす主要な要因を調査し、組織が燃え尽き症候群の悪循環を回避して、優秀な人財を維持するための青写真を提供します。