2025 年に小売業界とホスピタリティ業界のトップ企業が注目すべき 4 つの主要トレンド
小売業界とホスピタリティ業界は現在、大きな成長期を迎えています。業界の有力企業が、どのようにしてカスタマー エクスペリエンスを向上させ、ワークフォース育成を強化し、AI の可能性を最大限に活用しているのかをご紹介します。
小売業界とホスピタリティ業界は現在、大きな成長期を迎えています。業界の有力企業が、どのようにしてカスタマー エクスペリエンスを向上させ、ワークフォース育成を強化し、AI の可能性を最大限に活用しているのかをご紹介します。
小売業界やホスピタリティ業界にとって、ここ数年の事業は決して平坦な道のりではありませんでした。サプライチェーンの混乱、40年ぶりのインフレ高騰、そして顧客の購買行動の変化など、消費者向け産業は、絶え間ない試練にさらされてきました。それでもなお、多くの企業はこうした混乱を乗り越え、むしろ強さを増しています。
現在では、堅調な消費支出に支えられて業績は好調です。たとえば 2024 年、ホテルの RevPAR (レブパー: Revenue Per Available Room、販売可能な客室 1 室あたりの収益) は、2023 年の過去最高記録をさらに上回りました。一方、レストランの売上は今年初めて 1 兆ドルを超えると予想され、小売業界の売上も引き続き増大しています。
とはいえ、将来の展望が開けているとは言えません。事業者は、運営コストの増加、不安定なマクロ経済状況、変動する消費者需要といった重大な課題に直面しています。実際、全体として消費者の支出は続いていますが、低所得層の消費者は、家賃や食料品の価格上昇により、旅行や娯楽の支出を控えているという最新のデータもあります。
消費者の需要が目まぐるしく変化する中、小売業界とホスピタリティ業界の事業者は、市場の動きをより敏感に捉えなければなりません。特に、企業は人財配置やコスト管理を行いながら、顧客満足度を維持する必要があります。2025 年を見据え、業界のキーパーソンたちが語る、ホスピタリティ業界と小売業界における今後の 4 つの主要トレンドをご紹介します。
顧客の 4 人に 3 人が「一貫した顧客サービスと体験を提供する店舗により好感を抱く」と回答しています。
オンデマンド サービスの時代において、小売業界とホスピタリティ業界の企業は、顧客の高い期待に応えるために絶え間ないイノベーションが求められます。Workday の小売・ホスピタリティ部門マネージング ディレクター、Keith Pickens は、Workday の顧客イベントである Workday Rising にて次のように述べています。「今の顧客は、欲しい時に欲しい商品やサービスがすぐに手に入ることを私たち業界人に求めています。かつての顧客なら、ブランドに不備があっても許してくださったのですが、今はそんな余裕はなくただ離れていくだけです」
では、小売業界やホスピタリティ業界の有力企業は、今日の顧客が求めるものをどのように提供できるのでしょうか。その答えは、強力なオムニチャネル戦略と、実店舗とオンラインをシームレスにつなぐエクスペリエンスの提供にあります。
例えば、小売業界の顧客がソファを店舗で購入した後、車に向かう途中でランプを買い忘れたことに気付いて店に戻ります。追加注文をしますが、ランプの価格は送料無料の最低購入額に達していません。彼らは「ソファに 1,000 ドルも使ったのに、送料無料にならないのはおかしい」と思うでしょう。KPMG 社米国支部の顧客・小売部門リーダー、Duleep Rodrigo 氏は「こうした顧客の期待を先読みして、より良い顧客エンゲージメントとカスタマー エクスペリエンスを提供する方法を常に考える必要があります」と語ります。
また、対面での買い物体験を好む顧客も増えています。より充実していると感じるからです。「店舗での購買体験の需要が戻ってきています」と Pickens 氏は話します。「消費者は他の人と交流し、商品に触れ、スタッフと会話したいのです」。このような関わりが結果的に業績を大きく左右することもあるからです。実際、顧客の 4 人に 3 人が「一貫した顧客サービスと体験を提供する店舗により好感を抱く」と回答しています。ホスピタリティ業界と小売業界の有力企業は、店舗のあり方と、自動化によって従業員の顧客対応時間を増やす方法を再評価する必要があります。
「店舗での購買体験への需要が戻ってきています。消費者は他の人と交流し、商品に触れ、スタッフと会話したいのです」
Keith Pickens
小売・ホスピタリティ部門マネージング ディレクター
Workday
消費者やゲストの高まる期待と、厳しさを増す労働市場の両方に直面している、ホスピタリティ業界と小売業界の有力企業は、成長を続けるために迅速な対応を迫られています。そこで、Panda Restaurant Group の総報酬・人事テクノロジー担当エグゼクティブ ディレクター、KarYeng Liew 氏は、「業務の簡素化や自動化、そして革新につながる知見を得るために、テクノロジーをどう活用できるか」に注目しています。
システムを最新化してリアルタイムでの単一のデータ ソースを作成することで、ホスピタリティ業界と小売業界の有力企業は、業務効率を向上させ、オペレーショナル エクセレンスに活かせるアクショナブル インサイトを得ることができます。ワークフローの統合、在庫管理の最適化、スケジュール管理の合理化により、人件費高騰の時代において、これらの部門は生産性の向上を達成できます。
スーパーマーケットに特化している Hy-Vee 社では、Workday の統合プラットフォームが日常的な業務の自動化とワークフローの合理化に重要な役割を果たしています。「これを導入して以来、チームは重要な業務に集中できるようになりました。手作業のプロセスを減らせたことが、カスタマー エクスペリエンスやエンプロイー エクスペリエンスの合理化と改善につながっています」と、Hy-Vee 社の HRIS テクノロジー部門ディレクターである Becky Olsen 氏は述べています。
労働力不足は昨年より改善していますが、ホスピタリティ業界や小売業界の企業にとって、人財の確保と定着は依然として大きな課題です。McKinsey 社の調査によると、過去 3 年に仕事を辞めた小売業界社員の 72% が業界から完全に離れてしまったといいます。そのため、有力企業は従業員のニーズに応えるアプローチを検討する必要があります。
社員を確保するために、ホスピタリティ業界や小売業界の有力企業は、従来の交換可能な歯車のような人財管理のアプローチから脱却しなければなりません。代わりに、有力企業では、より良い報酬、トレーニング制度、柔軟な働き方など、社員の最優先事項に応えることで、従業員の意欲を高めることが重視されています。
Rodrigo 氏は「全体として多くの企業が、販売員から店舗運用、バックオフィス、中間管理職まで、あらゆるレベルで人財のトレーニングと育成に力を入れています」と話します。社員の在職期間やフィードバックのデータを収集し、分析することで、定着率の向上に役立つ傾向を把握することも可能です。
Pickens 氏は、「2025 年以降、企業は『なぜ社員はこのブランドで働くのか?どうすれば離職を防げるか?』という 2 つの基本的な問いへの回答を求められます」と述べます。ワークフォース管理に対してさらにパーソナライズされたアプローチを採用し、スキル開発に注力し、テクノロジーを使用して低付加価値業務に費やす社員の労働時間を削減することで、ホスピタリティ業界や小売業界の有力企業は、チームの意欲、満足度、生産性を最大限に高めることができます。
過去 3 年に仕事を辞めた小売業界社員の 72% が業界から完全に離れてしまいました。
AI は、カスタマー エクスペリエンスとエンプロイー エクスペリエンスの両面で大きな可能性を持っています。小売業界とホスピタリティ業界の有力企業では、AI の力を最大限に引き出す取り組みが進んでいます。
消費者向けでは、AI アシスタントが個々の嗜好に基づいて買い物のガイドやパーソナライズされたおすすめを提供できるようになります。飲食業界の有力企業は、需要予測やサービス スピードに関して AI が大きな効果を発揮することを期待しています。また、ホテル業界では、マネージャが AI を使用してスケジュール管理や勤怠管理といった手作業のプロセスを自動化することで、社員やゲストのニーズ対応により多くの時間を割けるようになります。
ハンバーガー チェーン、Whataburger のコーポレート経理責任者 Mark Rowe 氏は「当社では需要予測や顧客動向の把握に加え、注文予測システムの開発の取り組みも継続しています。待ち時間を 10 秒短縮できるだけでも、顧客満足度は大きく向上します」と述べています。
さらに、AI の導入により、業務プロセスの効率とエンプロイー エクスペリエンスの両方が向上します。今日の AI アシスタントは、課題を特定し、イノベーションとリソース効率向上のためのデータ活用を最適化します。また、AI アシスタントはオペレーションの自動化や最適化を目的としてデプロイされることがあります。Walmart 社や Target 社といった小売企業では、生成 AI を活用して製品カタログの改善から、チームへのベストプラクティスの提供、よくある問い合わせへの対応まで幅広く応用されています。
特に、24 時間体制で需要パターンや人財配置ニーズが変動する運用では、AI によるスケジュール管理が有効です。Hy-Vee 社の Olsen 氏は、2025 年には「アルゴリズムが人財配置と業務スケジュールを予測し、必要なリソースが必要なタイミングで揃うようになる」と予測します。
人財配置の最適化、業務運用のサポート、カスタマー エクスペリエンスとエンプロイー エクスペリエンスの向上など、どの目的においても、自動化は小売業界とホスピタリティ業界の持続可能な成功の基盤を構築する上で重要な役割を果たします。成功と失敗を分ける鍵は、信頼できるパートナーを持てるかどうかにかかっています。
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エンタープライズ アーキテクトは、技術設計者からデジタル トランスフォーメーションの戦略的リーダーへと進化しています。実績のあるフレームワークを活用することで、アーキテクチャのビジョンを企業全体に浸透させることができます。