ヘルスケア業界における Siemens Healthineers 社のディスラプションへの取り組み
変貌するヘルスケア業界、業界の変革におけるテクノロジーと人の役割、および強固な企業文化の重要性について、Siemens Healthineers 社の人事部門のグローバル責任者である Andre Heinz 氏に語ってもらいました。
変貌するヘルスケア業界、業界の変革におけるテクノロジーと人の役割、および強固な企業文化の重要性について、Siemens Healthineers 社の人事部門のグローバル責任者である Andre Heinz 氏に語ってもらいました。
ドイツのミュンヘンに本社を構える Siemens Healthineers 社は数多くの医療テクノロジー企業の親会社です。75 か国に 5 万人以上の社員を擁し、医療テクノロジー業界を代表する企業の 1 つとなっています。ヘルスケア業界が劇的な変化を遂げるなか、2018 年 3 月、同社はここ 10 年でドイツ最大規模の新規株式公開を行いました。変貌するヘルスケア業界、業界の変革におけるテクノロジーと人の役割、またビジネスの運用方法を変える際の企業文化の重要性について、Siemens Healthineers 社の人事部門のグローバル責任者である Andre Heinz 氏に語ってもらいました。
ドイツ国内のみならず、おそらく世界中で、ヘルスケア業界は極めて大きな変化に直面しています。先行きについての見解と、この状況下での企業にとってのチャンスについてお話しいただけますか?
ヘルスケア市場は極めて変化が激しく、非常な混乱の中にあります。また、統合が進んでいるため、私たちが子供の頃にあったような昔ながらの小規模で素朴な病院はますます数が減っています。ドイツでは、そういった病院は Fresenius や Alpha のような大規模病院チェーンに取って代わられつつあります。大規模病院チェーンが目指すものは、ヘルスケア業界の産業化であり、患者ケアの質を向上させることが目標です。そういった組織は、脳卒中の治療などの伝統的な治療法を標準化して、できる限り適性に提供する方法を模索しています。
また、私はこれをデータの側面からも捉えています。それは、CT、MRI、超音波、X 線、その他の診断機器のサービスはすべてデジタル データを生成するので、デジタル化がもう一つの重要な領域であるためです。こうしたデータを活用して、どの治療法が患者にとって最も効果的であるかを判断することが極めて重要であり、パーソナライズ医療がその中心となります。
ヘルスケア業界の変化とデジタル化は、業務全般についての考え方にどのような影響を与えていますか?
お客様は私たちのビジネスをソリューション ビジネスと捉えるようになっています。単にデバイスを購入するだけではなく、プロセスを改善して病院を良くしていく上で、私たちがどのようにお役に立てるかということに関心をお持ちですそして何よりも、仕事の仕方が変わりつつあると感じます。具体的には、製品ビジネスからソリューション ビジネスへと移行したことにより、さらにお客様に寄り添った意思決定をするようになりました。お客様にはそれぞれ個別のソリューションが必要とされるためです。これにより大幅に複雑さが増すことになります。そこで、自社の人事戦略がどれくらい綿密で具体的であるか、といったことを考える必要があります。
当社にとっては、アドバイザリー、臨床、デジタルなど、さまざまな分野でのコンピテンシーを持つ必要があるということになります。このような複雑さにどう対処するかという点が、会社として考えるべき最も肝心な問題でした。従来型の会社であれば、この複雑さを前にしたら、「指針を増やして統制を強化しなければならない」と言い出すかもしれません。私たちはまったく逆の考え方をしようとしました。意思決定がなされる現場に、より大きな責任を与え、信頼と企業文化に対する完全に異なるアプローチを推進して行きたいと考えています。
統制を重んじる企業文化をやめて、遥かに民主的な管理体制へと転換するのは勇気のいることです。企業文化の転換のような活動を取りまとめて、成功に導くにはどうすれば良いのですか?
それには 3 つのステップがあります。最初のステップでは、自分たちが実際にどのように業務を構造化および編成しているのかを詳しく調べました。マネージャたちと話す機会を多く持ったことで、マーケティング部門、製品部門、研究開発部門などからなる従来型の組織は自分たちには向いておらず、もっと流動的なアプローチ、つまりより柔軟な対応が可能なプロジェクト構造が必要であるということがわかってきました。その次は、3 万人以上の社員から、さらに社外の 5 千人の社員候補者からも意見を聞きました。目標は人々が働きたいと思える企業になることだからです。
これは非常に興味深く、学ぶことも多くありました。年齢や世代によって望むことが違う点もありましたが、どの世代にも共通していることがありました。それは、自律性を望んでいるということです。より大きな責任を与えられ、キャリアを通じて学び続けられることを望んでいるのです。最後のステップは、社員たちにどのようにあって欲しいか、つまり、どのような社員や従業員に会社で働いてもらいたいかを見極めることです。私たちが目指すのは、社員を信頼して権限を持たせ、親と子供の関係のように監視をするのではなく、社員の自律性を認める、そういう企業になることだと結論しました。このアプローチでは、人事と人財関連のプロセスの管理方法が変わるため、大きな転換が必要です。私たちはプロセスを変更する必要に迫られました。
今の話で触れた「人事と人財関連のプロセスの変更」にどのように取り組まれたのかお話しいただけますか?
私が最も重要だと思う点は、ゴール設定プロセスと年に 1 度の人事考課という従来型のモデルから、社員とリーダーが直接話す場を定期的に持ち、どうやって戦略を実地に移していくかについて考える継続的で連続的なモデルへと移行することです。弊社では、年に 1 度の特別ボーナスをやめて、適宜支給される株式奨励給に置き換えました。年に 1 度のボーナスは創造性やより良い仕事をするための刺激にはならないと判断したためです。また、キャリア開発のアプローチも刷新しました。キャリアのプランニングはなるべく社員の自律性に任せるようにし、社内の別のロールへの人事異動も柔軟に行えるようにしました。
お話しいただいたようにプロセスの変更を推進し、業務の方法を変革する上で、Workday がどのように役立ったのかを教えてください。
まず言えるのは、レガシー システムを使い続けていたら、全世界 300 の人事システムを作り直さなければならなくなっていたということです。5 万人もの社員を抱えているので、これは無理な話です。重要なゴールは 2 つありました。1 つ目はすべての社員データを単一のシステムで管理することです。これはプロセスを標準化し、徹底的にカスタマイズされた従来の働き方から移行することを意味しています。2 つ目の戦略的ゴールは、最新のクラウドベースの IT システムを導入してユーザー エクスペリエンスを刷新することにより、求められている自律的で柔軟な働き方を実現することでした。
CEO は Workday を使い、ミーティングやその他のイベントにおけるエクスペリエンスについて社員にフィードバックを募ることができます。また、社員は Workday 上で社内のロールに自身をノミネートできるようにもなりました。組織図を参照して、特定のポジションへの異動を希望したり、タレント プログラムに参加することができるのです。そのデータは育成ラウンドテーブルで記録され、私たちはそこでエグゼクティブと実際にどのようにチームを育成するか話し合います。実に強力な機能です。
テクノロジーはかつてないペースで進化し続けています。新たなテクノロジーは今後どのように御社を後押ししていくと思われますか?
組織の大きな変化が起こりつつあると思います。今は、ビジネスのさまざまな局面での新しいアジャイルな働き方と、新製品を超高速で市場に投入するための適性な手法を試しているところです。非常に有望ではありますが、注意も必要です。アジリティという言葉が混乱を意味するようなことになってはならないからです。というのも、物事が混乱してしまうと、企業のアジリティに対して不満や疑問の声が出るようになります。この働き方には秩序が求められるのです。
IT または人事の観点からは、デジタル化は今後企業にとって極めて重要になるでしょう。Workday は当社の人事エコシステムのデータとコア コンポーネントのバックボーンです。Workday では Power of One と呼ばれていますが、人事データが 1 箇所に集約されることでまさにその効果が発揮されています。私たちは現在、世の中にある多くのアプリケーションを活用して、Workday を基盤とする独自のエコシステムを構築し、社員のさらなる自律性を実現してビジネス全体の効率を向上させるにはどうしたら良いかということに注目しているところです。
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