組織のアジリティと CHRO: ワークフォースを未来へと導く
Workday は組織のアジリティに関する調査を通じて、デジタル分野での収益拡大を目指してビジネスを変革するために、すでにアジリティに取り組んでいるリーダー企業が複数存在することを突き止めました。最高人事責任者 (CHRO) はどうしたらアジリティを支える環境を整えることができるのでしょうか。
Workday は組織のアジリティに関する調査を通じて、デジタル分野での収益拡大を目指してビジネスを変革するために、すでにアジリティに取り組んでいるリーダー企業が複数存在することを突き止めました。最高人事責任者 (CHRO) はどうしたらアジリティを支える環境を整えることができるのでしょうか。
Workday が世界中で実施した最近の調査によると、CHRO の 3 分の 1 が、今までの戦略に対する取り組みでは、社外の市場で変化があってもそれに合わせて組織を変えることはできないと考えています。Longitude 社による『組織全体におけるアジリティ: デジタル分野での成長を推進する鍵』では、アジア、ヨーロッパ、北米で約 1,000 人のビジネス リーダーを対象に調査を行いました。さらに、CHRO は人財を大切にすることが使命なので、経営幹部の中でも特に、「ビジネスの成功と従業員の意欲を保つことは直接関係がある」と考える傾向があります。
この調査は、組織がデジタル トランスフォーメーションへの投資から見合った成果を得る方法を明らかにするために実施されました。調査により、デジタル分野での収益拡大と組織のアジリティには強い相関関係があることが明らかになりました。「組織のアジリティ」とは、デジタル分野での収益を拡大しながら、デジタル トランスフォーメーションを 1 回限りのイベントではなく、継続的かつ新しい業務運営手法へと変えていけるような、リーダー企業で特に見受けられる一連の行動特性のことです。
Workday はこの調査を通じて、デジタル分野での収益拡大を目指してビジネスを変革するために、すでに日常業務のレベルでアジリティに取り組んでいるリーダー企業が複数存在することを突き止めました。この「リーダー企業」は、グローバルな調査に回答した企業全体の 15% を占めます。
これに対して、よりアジャイルな業務運営への移行がなかなか進んでいない、または開始していない「遅れている企業」は、全体の半数以上を占めます。組織全体でまだアジリティを発揮できていないもののその途上である「追随する企業」は、全体の残りの 30% を占めます。
調査の結果、以下の 5 つのベストプラクティスがリーダー企業を際立たせていることがわかりました。
継続的なプランニング。リーダー企業は、リアルタイムでプランニングし続けることで、イノベーションの成功に必要なスピード、アジリティ、ダイナミズムを得ています。
流動的な構造とプロセス。リーダー企業は、流動的な構造とプロセスを構築しています。半数近くが、スキルを備えた社員をすばやく必要な場所に配置転換できると回答しています。
将来のワークフォースを育てる。リーダー企業を遅れている企業と比べると、ワークフォースの大多数に対してスキルアップを計画し、社員の労働意欲を高めるために具体的な取り組みを行う傾向が非常に強く見られます。
意思決定の判断材料を増やし、意思決定権の委譲を行う。リーダー企業の 80% では、すべての社員が必要なデータに即座にアクセスできるとともに、適切な意思決定を自身で行う権限を与えられています。
評価とガイダンス。リーダー企業では、デジタル テクノロジーがもたらすイノベーションの成果を評価するツールやメトリクスの開発が大きく進んでいます。そのため「fail fast (早く失敗する)」の精神が根付いており、94% は、プロジェクトが失敗しても迅速に方向転換できると回答しています。
5 つの要素それぞれについて、組織のアジリティ向上に向けて CHRO に何ができるのか見ていきましょう。
Workday の調査では、柔軟に内容を変えられるプランニングができれば、組織は市場の変化や事業への潜在的な脅威にすばやく反応できるようになることがわかりました。企業は、製品やサービスの採算が取れるかどうか、または市場のシェアを獲得できるかどうかを判断するために、12 か月も待つわけにはいきません。売上の大部分がデジタル製品やサービスである企業では特に、迅速かつ継続的なプランニング サイクルが必要になります。
調査に回答した CHRO は、より包括的なリアルタイムのプランニング システムへの移行を妨げる最大の障壁は官僚的な文化だと答えています。
全体として、リアルタイムのプランニングを行う上で最大の障害となるのは、柔軟ではないレガシー テクノロジー (多くのリーダー企業で最大の障害であると回答) と、官僚的な組織文化 (遅れている企業で障害として最も多く回答) であることもわかりました。調査に回答した CHRO は、より包括的なリアルタイムのプランニング システムへの移行を妨げる最大の障壁は官僚的な文化だと答えています。
興味深いことに、他の経営幹部と比べると、最高情報責任者 (CIO) は官僚的な文化について CHRO と同じ意見である傾向にあります。一方、最高経営責任者 (CEO) および最高財務責任者 (CFO) は、会社のリアルタイムなビジネス プランニングへの移行を妨げているのは官僚主義よりも従業員のスキル不足だと主張する傾向にあります。
ビジネスプランの変更により、組織構造やビジネスプロセスの変更を余儀なくされたり、まったく新しい構造やプロセスの構築が必要になることがよくあります。組織のアジリティが発揮されている企業では、人財と財源という 2 つの最重要資産の割り当てを迅速に調整して変更することができ、組織のニーズを満たすことができます。
今回の調査では、リーダー企業は柔軟な構造やプロセスを構築してビジネスプランの変更に適応し、企業内のスキル ギャップを把握するための仕組みを持っている一方で、遅れている企業はそのような能力も仕組みも持っていないことがわかりました。ここでも、柔軟性に欠けるテクノロジーと官僚的な企業文化が、アジャイルな構造やプロセスの構築を妨げていることがわかりました。
CHRO を含め、調査に回答した経営幹部のほとんどは、ビジネスプロセスの更新を妨げる最大の障壁として柔軟ではないテクノロジーを挙げています。経営幹部のうち CIO だけは、最大の障壁として官僚的な文化を挙げました。
会社のバックオフィス、ミドルオフィス、フロントオフィスのプロセスが「全面的に統合されているか」との問いに経営幹部が答えた内容を見ると、CHRO は 71% がプロセスは全面的に統合されていると回答しており、最も楽観的な見通しを持っています。次に多いのは CEO の 70% でした。
多くの組織では、最近の収益の大部分が、5 年前には存在もしていなかったスキル分野に直接結びついていることが明らかになっています。時代遅れになるスキルもあれば、新しく生まれるスキルもあり、求められるスキルは常に変化し続けています。企業は新しいデジタル収益源を生み育てるために、ワークフォースが新しいスキルを身につけられるよう支援する必要があります。
今回の調査で、「今後の仕事を取り巻く環境に対応する人財を確保するために、ワークフォースの少なくとも 75% をスキルアップする計画がある」と回答した企業の割合を調べたところ、リーダー企業での割合は遅れている企業の 4 倍でした。回答者の 4 分の 3 以上が、優秀な人財の離職を防ぐために、社員の成長と配属において一層柔軟なアプローチが必要であると考えています。
経営幹部がそれぞれの部門について、今後 5 年間に重要になると考えているスキルは異なります。CHRO が人事分野において今後 5 年間最も重要になるスキルとして「新しいツールやテクノロジーを使いこなす能力」を挙げる一方、CEO は「高度な分析能力とデータ可視化能力」を挙げています。興味深いことに、CFO は「絶え間ない変化に対処できる認知的な能力」を挙げており、特に将来を見据えていることがうかがえます。
経営幹部は、市場で成功を収められるかどうかは従業員の意欲を保つことができるかどうかにかかっているという点で大半が同じ意見です。この点について、同じ意見である割合が最も多いのは CHRO でした (88% が同じ意見)。次は CIO で 85% でした。
最終的にビジネス プランを実行して成功させるのはワークフォースです。今回の調査で着目したデジタルの分野でも、そのことは変わりません。社員には、適切なタイミングで適切な情報を提供して、企業にとって最良の決定を下せるような権限を付与する必要があります。
今回の調査で、今後の仕事を取り巻く環境に対応する人財を確保するために、ワークフォースの少なくとも 75% をスキルアップする計画があると回答した企業の割合を調べたところ、リーダー企業での割合は遅れている企業の 4 倍でした。
顧客に寄り添った意思決定をするためには、データが圧倒的に重要になります。遅れている企業は、更新されていない古い情報と縦割りのチームが、意思決定の民主化において大きな障壁になっていると回答しています。リーダー企業の 80% は、すべての社員がすぐに関連データにアクセスでき、必要な情報へのアクセスが阻害されることはないと回答している一方、遅れている企業では 24% に留まりました。
経営幹部の回答だけを確認すると、CEO の 3 分の 2 近く (64%) は社員が職務遂行に必要なデータに何不自由なくアクセスできていると確信しています。他の経営幹部にそこまでの確信はなく、CIO/COO、CHRO、CFO でそう考える割合は半分にも届きません (それぞれ 42%、47%、47%)。
データにアクセスできることが組織にとってより良い決定を下す上でどの程度効果的かについては、経営幹部で意見が割れています。情報とデータへの自由なアクセスが意思決定を円滑にする上で効果的かどうかについては、CHRO の 71% は、情報への自由なアクセスが「効果的」または「非常に効果的」だと考えています。これは、常に明るい見通しを持つ CEO の 84% に次ぐ高い数字です。
アジリティやスピードは、堅牢かつ正確で、タイムリーな評価とコントロールがあってこそ実現します。企業は、新製品や新サービスが順調かどうかを迅速に知る必要があります。業績が良ければ財務投資や人財投資をすぐに拡大しなければならない可能性があり、業績が悪ければ財務または人財の削減や割り当て変更、製品やサービスの変更や提供終了を検討しなければならないことがわかります。デジタル戦略が組織に与える影響を本当の意味で把握するためには、従来の財務メトリックに加えて、新しい指標が必要になります。
今回の調査では、新しいデジタル時代の仕事に対応した適切な評価フレームワークがないということを組織が認識していることが明らかになりました。実際、デジタル収益の成長の実績を数値化するためのメトリックが組織内で順調に確立しつつあると回答したのは、すべての回答者の 25% にすぎませんでした。評価フレームワークとメトリックはきわめて重要です。というのも、今回の調査により、投資に失敗してもすばやくアクションを起こすことで (プロジェクトを中断する、あるいは成功させるためにリソースを追加投入するなど)、最終的な収益を大きく伸ばせることが明らかになったからです。
現在の主要業績評価指標の有効性 (またはその欠如) に関する CHRO の意見は、他の経営幹部と全体的に一致しています。CHRO が最も確信しているのは、自分たちの組織には失敗から学ぶことを奨励する文化があるということです。この点だけは、CHRO は CEO 以上であり、CEO の78% に対して、CHRO が 80% であることがこれを示しています。
今後 3 年間でデジタル分野での収益の成長率が 50% を超えると予測している企業のほとんど (回答者の 77%) が、新しいテクノロジーへの投資に失敗したとしても、組織は迅速に対応できると回答しています。
全体的に、そして当然のことながら、CHRO は、ビジネスを前進させるためには、モチベーションがあり、意欲があり、十分な情報を与えられた社員の力が重要であると考えています。Workday の最高人財活用責任者である Ashley Goldsmith は、「ビジネスは人なり」という話をよくします。
ブログ投稿では次のように説明しています。「企業にとって最も重要なリソースは人財ですが、現在は優秀な人財をめぐる競争が激化しているため、社員の満足度を高めて各人が能力を最大限に発揮できるような企業文化を作っていくことも、企業にとって重要な責務になっています。経営幹部、特に CHRO は、こうした企業文化の構築がなぜそれほど重要なのかを認識しつつあります。そのような文化はすべての社員にとって有益なだけではなく、企業のビジネス全体にとっても有益であるためです。」
確実なのは、今日の企業は人財を賢く活用してデジタル トランスフォーメーションを実現し、それによってもたらされる成長機会を活かす必要があるということ。経営幹部は足並みを揃えて取り組みを導く必要があります。この調査で明らかになったとおり、デジタル分野での成長が長く続くように牽引しているのは、組織のアジリティを支える 5 つの特性のうち、すべてとは言わないまでも、その多くを獲得することに成功した企業です。遅れている企業は、遅れを取り戻すチャンスはまだあるものの、時間が押し迫っていることを認識する必要があります。
アジリティへの移行は連続的なものです。組織はサイロ構造や官僚主義的なプロセス、従来の働き方から、組織のアジリティを構成する 5 つの特性すべてを取り入れている状態にシフトしていくのです。継続的なプランニング、順応性が高く流動性のある組織の構築、ワークフォースのスキルアップ、データの提供と権限の委譲、適切な評価とガイダンスの導入、これらすべてを実現できる企業は、絶え間なくイノベーションを生み出してデジタル分野での収益を拡大し、企業の将来に向けて備えることができます。
さらに詳しく知りたいですか?本調査に基づく他の記事もお読みください。今後さらに追加していきます。
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Organizational Agility: Making Informed Decisions with Speed (組織のアジリティ: 十分な情報に基づいて素早く意思決定する)
Organizational Agility: Supporting Adaptable People and Processes (組織のアジリティ: 人財とプロセスが変化に対応できるようサポートする)
Organizational Agility: The Power of Continuous Planning (組織のアジリティ: 継続的なプランニングの力)
Organizational Agility: Preparing Your Workforce for Change (組織のアジリティ: ワークフォースを変化に備えさせる)
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