未来からの手紙: 2021 年の CHRO のあり方
2021 年、グローバルに展開する人事部門を率いていくのはどのような人物でしょうか。未来の最高人事責任者 (CHRO) はどうあるべきか、またそれはなぜか、Workday の考えをお伝えします。
2021 年、グローバルに展開する人事部門を率いていくのはどのような人物でしょうか。未来の最高人事責任者 (CHRO) はどうあるべきか、またそれはなぜか、Workday の考えをお伝えします。
未来について口にすることはしばしばありますが、それが具体的にどのようなものか述べることはそれほど多くなかったかもしれません。
2021 年に大きな影響力を持つ人事組織を率いている人物を想像してください。CHRO—あるいはその肩書きは「Chief Employee Experience Officer (最高エンプロイー エクスペリエンス責任者)」や「Chief People Officer (最高人財責任者)」かもしれません—は新しい人財プログラムが直近の収益性の向上にいかに寄与したかという点について、最高経営責任者 (CEO) による説明をサポートするため、収支報告会に参加しようとしています。
そこで人事部門のエグゼクティブは、米国の報道機関向けの説明会のため、東京から VR 会議室に入室します。彼女が少し遅刻してしまったことを日本語で謝罪すると、リアルタイムで翻訳され、音声で参加者に伝達されます。その後彼女は、アジア太平洋地域で常時利用できるワークプレイス ラーニングの活用によりスキル ギャップを克服するという革新的なプランを説明し始めます。それが終わると彼女はヨーロッパの運送業のトップ企業である顧客とのディナーに出かけ、自動運転トラックや配送の完全自動化が彼らの企業文化やビジネスニーズをどのように形成していくのかについて理解を深めます。
こうした未来のシナリオの中では、人事部門のエグゼクティブは現在の最高財務責任者 (CFO) のように、ビジネスの価値を向上させる重要な役割を担っています。Deloitte 社の『Disrupting the CHRO: Following in the CFO’s Footsteps』には、CHRO がロール モデルとするべきは CFO であると述べられています。金銭の移動が企業の価値を生み出すことが明らかになり、CFO が単なる管理者から価値を体現する戦略的パートナーへと生まれ変わったためです。
人財が最重要のリソースとなり、その発掘と維持を担うトップ エグゼクティブの役割は、企業の存続において欠かすことのできないものになります。
グローバル経済が知識とサービスにますます依存するようになり、人財の移動と活用こそが、企業に最大の価値を生み出すのです。事実、1982 年には無形資産が生み出す価値は 40% でしたが、2010 年には 85% を占めるまでになりました。こうした数値は、ここ数年でさらに劇的に増加していることは確実でしょう。
人財が最重要のリソースとなり、その発掘と維持を担うトップ エグゼクティブの役割は、企業の存続において欠かすことのできないものになります。そして、こうした職務を果たすことは、一層困難になっていくでしょう。前述の Deloitte 社の記事では、「人員構成や家族構成の変化、世代間の意識の変化、公共政策の影響などが原因で、企業は成長目標を達成するために求められるスキルを持つ人財を十分に確保できなくなっている」と述べられています。
未来の CHRO がどのように舵を取るべきかを思い描くことができたとして、こうした仮説に基づく未来を生み出すため、今何をすべきなのでしょうか。ハーバード ビジネス レビューの『People Before Strategy: A New Role for the CHRO』では、成果の予測、課題の分析、ビジネスに付加価値をもたらす人事上のアクションの規定という 3 つの要素が、新たな世代において模範となる CHRO の特徴になるとされています。
成果の予測により、重要な役割に適切な人財を配置することがビジネスや予算における目標達成にいかに寄与するかを CFO や CEO が理解しやすくなります。成果を予測し、財務や運用において数値を重視してきた相手に対して収益の確からしさを示すうえで鍵となるのは、分析です。
分析を活用することで、CHRO はデータに基づいて方針やビジネスのアドバイスを示すことができ、これまで人事部門に存在していた「曖昧さ」を取り除くことができます。
では、分析に対する最適なアプローチとは何でしょうか。洪水のように大量のデータからパターンを探し出そうとするよりは、望ましい成果を明確にし、そこから逆算して作業するほうが有効です。分析を始める前にしっかりと問題設定をしないと、大量の情報の中ですぐに途方に暮れることになります。
有用な分析テクノロジーやクリーンなデータを最初に用意することは必要ですが、作業するための適切なツールを CHRO が利用でき、統計に関するごく基礎的な知識があれば、一般的な落とし穴を回避することができるでしょう。統計の知識は、人財アナリティクスについてのオンライン コースや、社内の専門家とのワーキング セッションで学ぶことができます。
意思決定に役立つ分析を活用することで、CHRO はデータに基づいて方針やビジネスのアドバイスを示すことができ、これまで人事部門に存在していた「曖昧さ」を取り除くことができます。財務やその他の部門と同様に事実ベースで人事業務を遂行できるようになるのです。
課題の分析は、CHRO が組織やビジネスを取り巻く状況を総合的に理解してはじめて可能になります。ハーバード ビジネス レビューは次のように述べています。「ミスの原因調査においては、CHRO は CEO や CFO と連携すべきです。なぜなら、多くの課題には人の問題が関わってくるのですから。重要なのは、金利の低下や為替評価の変化といった明確な外部要因だけでなく、企業のソーシャル システム、すなわち人々がどのように協働するかについてのインサイトに数値を結びつけることです」
グローバルな観点から組織を理解している CHRO は、より大きな視野で、根本的な組織の欠点を分析することができるでしょう。人事部門のリーダーは、匿名の社員によるフィードバックや、簡単な一問一答形式の社員の意識調査など、部門をこえたリアルタイムのインサイトを得られるツールを利用できるようになりました。
CHRO は、継続的な正規の教育により、事業運営についての知識の基盤を拡張することもできます。Keck Medicine of USC の CHRO である Matt McElrath 氏は次のように語ります。「学校にとどまり、さまざまな学会の資格や大学院の学位を取得した人事プロフェッショナルには大きな信頼を寄せています。事業運営においては、相手と同等のスキルや知識を備えておくべきだからです」
ビジネスに付加価値をもたらす人事上のアクションを規定することで、人事部門のリーダーは自身の重要性を非常に具体的な方法で示すことができます。動的で戦略的な人財配置や、インクルージョンを重視した職場環境と強固な企業文化を実現するために雇用や昇格を行うことは、すべて業績の改善につながります。
インクルージョンやワークフォースのダイバーシティを優先する企業は、経済的な面でも成果が得られます。
McKinsey Quarterly の『How to Put Your Money Where Your Strategy Is』によると、設備投資、運用費、ヒューマン キャピタルなどのリソースの配置を定期的に見直している企業は、15 年後、リソースの柔軟性の低い企業と比べて企業価値が 40% 高くなります。
インクルージョンやワークフォースのダイバーシティを優先する企業は、経済的な面でも成果が得られます。以前お伝えしたように、McKinsey & Company 社は次の事実を明らかにしています。「ジェンダー ダイバーシティで上位 4 分の 1 にある企業の収益は、国内の業界の中央値を上回る傾向が 15% 高く、人種/民族のダイバーシティで上位 4 分の 1 にある企業の場合は 35% 高くなります」
Deloitte 社の『Global Human Capital Trends 2016』の記事では、変化の時期においては、強固な企業文化は特に重要な競争上の強みになるとされています。記事では次のように述べています。「統合、買収、成長、製品サイクルといったものが成功するかどうかは、企業文化とビジネスの方向性との整合性にかかっています」
未来の CHRO についてのストーリーに話を戻しましょう。なぜ CHRO は収支報告会に参加するのでしょうか。それは、彼女がビジネスの重要課題を理解し、分析的なマインドセットにより人事部門の取り組みによる影響を客観的な数値で表すことができるからです。
なぜ CHRO がメディアと話すのでしょうか。それは彼女が、スキル ギャップを埋めるためにどのような取り組みを会社が進めているかを説明する上で最適な人財であり、若い世代が常時利用できるワークプレイス ラーニングを求めていることを理解し、雇用創出にとどまらない社会的責任を会社が負っていることを理解しているからです。
なぜ CHRO が顧客とのディナーを主催するのですか。それは、彼女は現下のビジネスニーズの一歩先を見越す必要があり、そのための最適な方法が顧客の競合環境がどのように変化しているかを理解することだからです。
未来の CHRO として求められるスキルや知識をすべて身につけることは容易ではありませんが、人事、ビジネス、パフォーマンスの真のイノベーターとして、彼女が重要な地位を占めることは間違いありません。
このトピックについての詳細は、『The CHRO of the Future: How to Get There from Here』をご覧ください。
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