AI 時代におけるスキルベース採用の意味
現在は多くの企業が、スキルを重視して優秀な人財を探すことにより、採用方法を見直しています。このブログでは、AI を活用して候補者に新しい機会を提供し、スキルベース採用における効果、公平性、規模を高める方法について説明します。
現在は多くの企業が、スキルを重視して優秀な人財を探すことにより、採用方法を見直しています。このブログでは、AI を活用して候補者に新しい機会を提供し、スキルベース採用における効果、公平性、規模を高める方法について説明します。
このブログでは以下についてご紹介します。
スキルベース採用により、企業が人財を探す方法が変わりつつあります。これまで長い間、大学の学位は採用活動において非常に重要な要素でした。職務記述書には学歴に関する要件が厳格に規定されており、採用マネージャは候補者の資格情報だけを参考にして候補者を選考していました。このような状況では、適切な学歴がない場合、就職することは難しかったでしょう。
しかし現在は、学歴だけで十分だという時代ではありません。学歴は依然として重要な要素ですが、現在のビジネス環境では、候補者のスキルと実社会での経験も、学歴と同じくらいの価値を持つようになっています。現在は多くの企業が、候補者が 4 年制大学で何を学んだかだけでなく、実際に何ができるのかを重視するようになっています。こうした企業は増え続けています。
全米大学雇用者協会が 2025 年に実施した調査によると、調査対象企業の 96% が、特定の職務でスキルベース採用を実施し、その半数以上が「常に」または「ほとんどの場合」スキルベースの採用を実施しているという結果になっています。これは、各候補者をより総合的に評価しようとする各企業の取り組みの変化を明確に表しています。
人工知能 (AI) の普及により、この変化は大きな規模で発生しています。現在は多くの企業が、時代遅れの選考方法を実施するのではなく、AI ベースのツールを活用して、書類上の情報だけでなく、候補者のスキル、経験、潜在能力に基づいて優秀な人財を選考しています。その結果、従来の採用プロセスが、よりスマートで公平で、将来を見据えた採用プロセスへと変化しています。
現在の人事部門は、人工知能による影響を急速に受け始めており、それに伴って採用プロセスが変化しています。これには 2 つの理由があります。1 つは、次世代の仕事においては人間のスキルが非常に重要になるということ、もう 1 つは、AI が登場する前は、総合的な採用アプローチを導入するための時間とリソースが人事部門になかったということです。
スキルベース採用の普及に伴い、AI が果たす役割の重要性が高まっています。採用チームは AI を活用することにより、スマートで総合的な方法で候補者を評価できるようになります。また、AI を活用した採用により、従来の学歴重視という狭い範囲にとらわれることなく、貴重な選択肢を候補者に提供できるようになります。
従来の採用方法では、候補者の経験の全体像を把握できないことがよくあります。高度なスキルを持つ人財の多くは、資格取得プログラム、技能実習制度、実務研修などの方法で専門知識を習得します。しかし、学歴重視の採用方法では、募集職務に適したスキルを持っていたとしても、学歴要件を満たしていない候補者は自動的に除外されてしまいます。
採用基準が過度に厳格な場合、多様な人財に出会う機会が制限されることになります。いくつかの調査では、社会的評価の低い背景を持つ求職者は、一般的な資格を保有している可能性は低いものの、その他の求職者と同等以上のスキルを持っている可能性があるという結果になっています。時代遅れの学歴要件に固執すると、実際のビジネスで活躍できる可能性のある候補者を見逃してしまうリスクがあります。
採用チームは AI ベースのツールを活用することにより、実際のスキル、過去の経験、成長の可能性に基づいて候補者を評価することができます。これにより、職歴や学歴に関係なく、優秀な人財を発掘できるようになります。多くの場合、高い学歴と高いスキルセットの両方をバランスよく持っている候補者が最適な候補者になるため、AI を活用したこのアプローチは非常に重要です。
米国大学協会の雇用者調査では、より包括的な採用プロセスの必要性が指摘されています。この調査では、「一般的な大学卒業生は就職に向けて十分な準備ができている」という設問に対して 10 人中 8 人が「強く同意する」と回答していますが、高い口頭コミュニケーション能力など、重要なスキルが欠けている場合が多いということがわかりました。多くの場合、こうしたスキルは、実際の経験を通じて育成されていきます。
AI を活用すれば、採用活動においてこうした複雑な要素の識別や分析を行うことができます。これにより、従来の学歴要件だけでなく、過去の経験と将来の可能性を組み合わせて、ビジネスの成功につながる候補者を発見できるようになります。
AI は採用プロセスを加速させるだけでなく、人財の発掘方法や評価方法を見直す場合にも役立ちます。AI を活用すれば、学歴や役職で候補者を絞り込むのではなく、候補者のスキルを分析してワークフォースのニーズを予測することにより、従来の方法では見落とされていた人財を発見することができます。ここからは、履歴書のスマートなスクリーニングや、労働市場に関するリアルタイム インサイトの取得など、採用プロセスのすべてのフェーズを AI で変革する方法を紹介します。
従来の採用システムは、キーワードの正確な一致が前提条件になっているため、採用担当者が期待する正確な表現が履歴書に記載されていない場合、募集職務に適した候補者を見落としてしまう可能性があります。これは、企業と候補者の両方にとって大きな機会損失であり、多くの可能性を逃すことになります。AI は、単純にキーワードをスキャンするのではなく、自然言語処理 (NLP) 技術を使用して単語の背後にある意味を理解し、人間と同じような方法で履歴書を解読します。
例えば、「ビジネス インテリジェンス レポート」という職務経験を持つ候補者が「データ分析」という正確な用語を履歴書に記載しなかった場合、データ分析を担当する職務から除外される可能性があります。AI を使用すれば、これらのスキルが同じものであることを認識し、「データ分析」というキーワードが見つからなくても、この候補者を選考対象として残すことができます。
AI は、単純に一致条件を検出するだけでなく、スキルの関連度に基づいて候補者をランク付けします。これにより採用担当者は、優先順位が付けられたリストを確認するだけで、フィルタリングされていない多くの履歴書を精査する必要がなくなります。その結果、履歴書の確認にかかる時間が短縮され、適切な人財との面接により多くの時間を割くことができるようになります。
ほとんどの企業は、欠員が発生するまで採用について考えることはありませんが、欠員が発生したときにはすでに後れをとっています。AI を活用して、離職率、採用動向、業界の変化についてパターン分析を行い、スキル ギャップが発生する領域を予測することにより、人財に関するニーズを事前に計画することができます。
例えば、サイバー セキュリティ部門の退職者数が着実に増加していることに気付いた場合、AI によってフラグを設定し、重大な問題に発展する前に、社員のスキルアップ、積極的な採用活動、作業負荷の再配分などを推奨事項として提示することができます。
AI は、進化する市場の要求に対応する場合にも役立ちます。AI スペシャリストの需要が増加しているにもかかわらず供給が減少している場合、AI は採用チームに対して早期に警告を通知します。これにより、競争他社よりも先行して人財の獲得に取り組むことができます。
AI により、採用活動におけるバイアスを減らすことができますが、そのためには AI を正しく使用する必要があります。有名大学出身の候補者を優遇したり、氏名や住所に基づいて候補者の背景を推測するなど、採用活動における多くの意思決定は、無意識のバイアスによる影響を受けます。AI を活用すれば、これらの要素を考慮することなく、候補者のスキルと経験だけに焦点を当てることができます。
例えば、AI ベースのブラインド スクリーニングを実行すると、候補者の氏名、卒業年度、住所などの個人情報が除外されるため、候補者の背景ではなく適格性に基づいて評価することができます。AI システムの中には、バイアス検出アルゴリズムを使用して採用に関する意思決定を継続的に監視し、差別を示すパターンが見つかった場合にフラグを設定するシステムもあります。特定の候補者グループが偏って除外されていることが AI によって検出された場合、原因の調査と修正を行うように採用チームに通知することができます。
しかし、AI は完璧な解決策ではありません。AI は、トレーニングで使用されたデータを超える結果を提示することはできません。偏ったパターンが結果に反映されないようにするには、AI モデルを積極的に監視する必要があります。AI と人間による監視を組み合わせて公平性を確保することにより、最良の結果を得ることができます。
多くの企業が、社内の人財を十分に活用できていない状態で、外部人財の採用に非常に多くの時間と費用をかけています。AI を使用して、他部署で活用できるスキルを持つ社員を特定し、その社員がこれまで考えていなかったキャリアパスを提案することにより、社内人財の流動性を高めることができます。
例えば、高い分析スキルを持つカスタマー サポート担当者がビジネス インテリジェンスの職務に最適な候補者であると AI が判断した場合を考えてみます。この場合、外部の人財を採用するのではなく、このサポート担当社員が新しい職務に移行できるように、対象を絞り込んだスキルアップ プログラムを提供することにより、会社としてのメリットにつながります。
AI を活用して、社員のスキル セットや目標とするキャリアに基づき、メンターシップ プログラム、トレーニング コース、資格取得を推奨することにより、各社員に合わせてキャリア開発をパーソナライズすることもできます。これにより、社員の意欲を高めて離職率を下げ、欠員になっている役職をすばやく埋めることができます。
企業の採用戦略にとって重要なのは、現在の労働市場を適切に理解することです。AI を活用すれば、労働市場の動向をリアルタイムに監視し、現在の需要、給与水準、必要なスキルに基づいて採用戦略を調整することができます。
例えば、機械学習エンジニアの給与が過去 6 か月間で 15% 増加したことが AI によって検出された場合を考えてみます。企業がこの変化に気付かなかった場合、従来の低い給与水準を提示してしまい、人財の獲得に苦労する可能性があります。AI を使用してこの問題を早期に検出することにより、人事チームが採用戦略を調整し、競合他社に先行して優秀な人財を獲得できるようになります。
AI は、これまでは未開拓だったタレント プールを発見する場合にも役立ちます。例えば、ニューヨークではクラウド エンジニアの需要が高くなっていて、オースティンではクラウド エンジニアの供給が多くなっている場合、AI を活用して、より簡単に人財を確保できるオースティンに採用活動の拠点をシフトするように提案することができます。これにより、スマートな採用活動が促進されます。
履歴書は必ずしも、その人のすべてを伝えてくれるわけではありません。履歴書に何らかのスキルが記載されているからといって、その人がそのスキルに熟達しているというわけではありません。AI ベースの評価機能を使用して、候補者の成績に応じて動的に変化する対話型の演習、シミュレーション、課題を実施することにより、候補者の実際のスキルをテストすることができます。
例えば、技術職の採用試験の場合、最初に基本的なコーディング課題を実施し、候補者の成績に基づいて、リアルタイムに難易度を上げていくことができます。候補者が最初の課題を簡単にクリアした場合、AI によってより高度な課題が出題され、実際のスキル レベルが測定されます。
AI を活用したスキルベース採用アプローチに移行するには、新しいテクノロジーを導入するだけでは不十分です。適切な戦略、プロセス、考え方、人間の知能を組み合わせる必要があります。そのための効果的な方法を紹介します。
採用プロセスに AI を導入する前に、それぞれの役割における必須のスキルを明確にしておく必要があります。多くの場合、職務記述書には時代遅れの学歴要件が記載されていますが、募集職務で候補者が成功するためには何が必要かということに焦点を当てる必要があります。
AI は、候補者をマッチングするための明確なスキルベース基準がある場合に最も効果的に機能します。そのため、あいまいな資格情報を、実際の職務で求められる具体的で測定可能なスキルに置き換える必要があります。これにより AI は、資格情報だけでなく能力に基づいて優秀な候補者を特定できるようになります。
AI 採用ツールは、目標と既存のプロセスに適合している場合に最も効果的に機能します。混乱を避けるため、現在のシステムやワークフローに統合できるツールを選択する必要があります。また、効果的な導入に必要なガイダンスとサポートを提供するベンダーを選択する必要があります。
特定の候補者が推薦される理由を採用チームが理解できるように、候補者の評価方法の透明性が確保されているプラットフォームを選択してください。カスタマイズ性も重要です。システムに合わせてプロセスを変更するのではなく、採用戦略に合わせてカスタマイズできる高い柔軟性を持っている AI ツールを使用する必要があります。
最後に、採用ニーズの変化に応じて、公正で正確で効果的な結果を AI で継続的に提供できるように、継続的な監視と調整を計画する必要があります。
3.適切なデータで AI をトレーニングする
AI の性能は、AI が学習するデータによって決まるため、過去の採用データに偏りがある場合 (特定の経歴や大学が優遇されるなど)、AI はそのパターンを継続します。より公平な採用プロセスにするには、多様で高品質なデータを使用して AI モデルをトレーニングする必要があります。
そのためには、AI のトレーニング データを定期的に監視して偏りをなくし、市場動向に基づいてスキル要件を更新し、候補者の評価の公平性を確保する必要があります。こうした詳細な監視を行わなかった場合、AI は修正すべき偏りをなくすのではなく、逆に強化してしまう可能性があります。
AI によって採用プロセスを効率化できますが、人間の意思決定を AI に任せるべきではありません。AI を活用すれば採用プロセスが効率的になりますが、人間の知能を AI に代替させてはいけません。履歴書のスクリーニング、候補者のランク付け、傾向分析などの作業で AI を活用し、ソフト スキル、企業文化への適合性、長期的な可能性については、採用担当者が評価する必要があります。
AI を活用して最初に履歴書のスクリーニングを行い、採用チームが推奨情報を検証してから最終的な決定を行うことにより、AI を採用プロセスに統合します。採用プロセスにおける人間の介入を維持し、自動化への過度な依存を避け、候補者を公平かつ総合的に評価することが重要です。
AI を活用した採用では、候補者のエクスペリエンスを向上させる必要があります。機械的なエクスペリエンスにしてはいけません。応募者が、自分が不採用になった理由や自分のスキルがどのように評価されたかを理解できない場合、その応募者は、採用プロセスに対する信頼を失ってしまいます。
AI システムにより、明確なフィードバック、別の職務の推奨情報、意思決定の透明性を応募者に提供する必要があります。スキルベースのアプローチにより、候補者に多くの可能性を提供できますが、候補者が「自分も採用プロセスに参加している」と感じなければ意味がありません。
AI を活用した採用プロセスは、一度設定したらそれで終わりというものではありません。公平性、正確性、採用目標との整合性を確保するために、システムを定期的に監査する必要があります。労働市場のニーズの変化に合わせて、AI モデルも進化していく必要があります。
定期的なパフォーマンス レビューを計画し、バイアス、時代遅れのスキル要件、意図しない採用傾向を検出することにより、AI は、意思決定を迅速化するだけでなく、スマートで公平な採用プロセスを推進するためのツールとしても機能します。
これからはスキルベース採用が主流になっていきますが、企業は、公平で効果的で人財を最優先する採用活動を積極的に行う必要があります。
スキルベース採用への移行は一時的な流行ではなく、人財の定義方法を根本的に変えるものです。しかし、スキルベースの採用を正しく行うためには、AI を導入するだけでは不十分です。人財の評価方法、キャリアの開発方法、多様な人財に対する機会の創出方法を見直す必要があります。それを支援するのが AI です。
AI により、スキルの評価方法、候補者と募集職務とのマッチング方法、ワークフォース管理ニーズの予測方法が継続的に改善されていきますが、テクノロジーだけで採用プロセスを改善することはできません。明確な意思を持って AI を活用し、公正で高品質なデータで AI のトレーニングを行い、データに偏りがないかどうかを監視し、採用に関する重要な意思決定は人間が行うことにより、真の優位性を獲得することができます。
採用担当者や採用マネージャは AI を活用して、さまざまな情報に基づいてスマートな選択を行うことができますが、AI が採用担当者や採用マネージャを完全に代替することはできません。つまり、これからはスキルベース採用が主流になっていきますが、企業は、公平で効果的で人財を最優先する採用活動を積極的に行う必要があるということです。正しい方法であれば、優秀な人財を採用できるだけでなく、未来を見据えた、強力で適応力の高いチームを構築することができます。
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