基本を理解する: エンプロイー エクスペリエンスとは何か
ここ数年間、エンプロイー エクスペリエンスはグローバル ビジネスの優先事項となっていますが、その用語が示す範囲は常に変化しています。エンプロイー エクスペリエンスの基本や、優れた全社的戦略を策定する方法をご確認ください。
ここ数年間、エンプロイー エクスペリエンスはグローバル ビジネスの優先事項となっていますが、その用語が示す範囲は常に変化しています。エンプロイー エクスペリエンスの基本や、優れた全社的戦略を策定する方法をご確認ください。
「エンプロイー エクスペリエンス」という用語の示す範囲を理解することは困難です。言語的には、カスタマー エクスペリエンスと同様の概念を想起させます。そのため、企業は顧客に対応する場合と同様の配慮や取り組みを社員に示しているかどうかを検討することを迫られます。概念的には、この用語は組織心理学に根差しており、社員との関係を支える暗黙の契約の再評価を企業に促します。実質的には、全社的戦略や、社員のビロンギング、幸福、生産性、エンゲージメントを向上させるためのイニシアチブを意味します。今日の状況下で企業が成功するためには、エンプロイー エクスペリエンスについて包括的に理解することが重要です。これは必須です。
冒頭で述べたように、エンプロイー エクスペリエンスが示す範囲はその性質上、常に変化します。エンプロイー エクスペリエンスは人事部門 (HR) の専門分野と考えられていましたが、現在は経営幹部全体が注目するようになっています。これには相応の理由があります。社員のあらゆるエクスペリエンスを考慮する場合、オンボーディングから退職に至るまでに社員が遭遇するあらゆるタッチポイントが必然的に含まれます。これには、社員が人財管理、コミュニケーション、職務パフォーマンスのモニタリングを実行するために使用する社内のテクノロジーやソリューション、社員が直接利用可能な社会的機会や施設、または契約労働時間が家庭生活にもたらす影響が含まれます。このため、エンプロイー エクスペリエンスにおいては、企業が各リーダーの足並みをそろえて目指す方向を一致させる必要があります。一方、全社的な支持を得ることも困難です。
当社が 1,150 人のシニア エグゼクティブを対象に実施したグローバル調査レポート『アクセラレーションのギャップの解消: 持続可能なデジタル トランスフォーメーションに向けて』によると、リーダーのおよそ半数 (49%) が、業務データ、人財データ、財務データをビジネス成果と結びつけられないことが、アジリティを阻む要因になっていると述べています。
この記事では、エンプロイー エクスペリエンスについてより明確に定義するとともに、関連するテクノロジーの概要をご紹介します。その後、優れたエンプロイー エクスペリエンスがもたらすメリットについて詳しく解説するほか、エンプロイー エクスペリエンス戦略を策定する際にビジネスリーダーが重視する必要がある主要なポイントについて総合的に分析します。段階を追って各種レポートの最新の統計情報を紹介し、ビジネスニーズを明らかにして、なぜエンプロイー エクスペリエンスや社員の期待に注目が集まっているのかを探ります。この記事をお読みいただくと、理論的枠組みや専用のリソースについて理解し、強力なケースを作成して、複数のチャネルからエンプロイー エクスペリエンスに総合的に取り組めるようになります。
今日のエンプロイー エクスペリエンスの中核を成す考え方はシンプルです。社員を重要なパートナーまたはステークホルダーとみなします。役職、ジェンダー、人種、宗教などの要因は問いません。エンプロイー エクスペリエンスを定義する際は、互いに尊重することを念頭に置く必要があります。
簡単に言うと、エンプロイー エクスペリエンスとは、特定の企業の在籍期間中にさまざまなタッチポイントを通じて社員が受けた総合的な印象です。しかし、企業が社員に提供するものと捉えるべきではありません。これは各社員の社内でのエクスペリエンスに関係します。各インタラクションが社員の企業に対する見解や感情にどのように影響するかを測定する手段となります。企業文化、仕事の進め方について期待されている方法、人財リーダーなど、企業のあらゆるものに対する社員の認識です。エンプロイー エクスペリエンスの真のイメージを把握するには、職務におけるあらゆるエンプロイー エクスペリエンスについて考慮する必要があります。
エンプロイー エクスペリエンスについて理解するには、エンプロイー エクスペリエンスを累積的なものと捉えることがさらに重要です。各社員は企業の在籍期間中に重要な体験をするかもしれませんが、そのような体験自体がエンプロイー エクスペリエンスを決めるわけではありません。この記事では、各タッチポイント (全社会議の頻度、業務のデジタル化の範囲、企業メッセージの強度など) での社員の認識について解説します。これは社員が日常業務において遭遇するさまざまな状況を明確にすることを目的としています。新しい社員が雇用契約に署名した瞬間から、企業に対する認識は絶え間なく変化します。ポジティブな方向に変化させるには、専用のソリューションを使用して継続的かつ包括的に取り組む必要があります。
企業と社員の関係をより明確にするため、エンプロイー エクスペリエンスは社員への価値提案 (企業と社員との間に存在する暗黙の契約) といったより広範な定義で捉えられることが少なくありません。社員への価値提案とは、歴史的には労働の引き換えに提供される給与や福利厚生を意味していました。しかし、過去 1 世紀の間にその範囲は拡張を続け、キャリアアップからビロンギング、ダイバーシティに至るまで、あらゆるものが含まれるようになりました。エンプロイー エクスペリエンス全般の変更を検討する場合は、社員への価値提案に企業の要件と社員の要件をどのようなバランスで組み込むかを考えてみると良いでしょう。
エンプロイー エクスペリエンスについて考える場合、必然的にカスタマー エクスペリエンスが想起されます。カスタマー エクスペリエンスはそれ自体が、今日の多くのマーケティング手法や営業手法の基盤となっています。エンプロイー エクスペリエンスと同様、カスタマー エクスペリエンスは、顧客がカスタマー ジャーニーを通じて企業から得るメリット全体を意味します。顧客は製品やサービスの品質に満足しているか、ブランドに対してロイヤルティーを感じているか、販売時に顧客に対応する社員とはどのような関係を築いているか、デジタル カスタマー エクスペリエンスは対面のカスタマー エクスペリエンスと違いがあるかなど、このような疑問点はそのまま人財に適用できます。
カスタマー エクスペリエンスとエンプロイー エクスペリエンスとの関連性を明確に表しているのは最後の疑問点です。顧客が顧客を呼ぶということは、「お客様は常に正しい」という格言を含めて理解されていますが、優れたエンプロイー エクスペリエンスがカスタマー エクスペリエンスに直接影響するということも企業は認識するようになりました。真に人財を最優先する手法をとるためには、カスタマー エクスペリエンスに波及効果をもたらすという観点からのみエンプロイー エクスペリエンスを捉えるべきではありません。社員のライフサイクルの各ステージで社員をサポートすることは、測定可能な指標の枠組みを超えた独自の取り組みです。一方、エンプロイー エクスペリエンス戦略の調整がもたらす具体的なビジネス メリットを考慮すると、エンプロイー エクスペリエンスへの総合的かつ持続的な取り組みが生み出す多大な影響力を的確に把握できます。
今日のエンプロイー エクスペリエンスの中核を成す考え方はシンプルです。社員を重要なパートナーまたはステークホルダーとみなします。役職、ジェンダー、人種、宗教などの要因は問いません。
優れたエンプロイー エクスペリエンスがカスタマー エクスペリエンスやビジネス成果にもたらす影響を正確に把握するために実施された 2022 年の調査ではハーバード ビジネス レビューがグローバルな消費者向け小売ブランドを対象に 1,000 か所を超える実店舗のデータ (3 年間分) を比較しました (ブランド評価の変化、より広範な市場原理など、酌量要因を制限するため)。測定した各エンプロイー エクスペリエンス指標 (社員の勤続期間、常勤/パートタイム、社内ローテーション、スキル レベルを含む) において、下位 25% から上位 25% に上昇した店舗では、収益が 50% 以上増加したほか、利益もほぼ同程度増加したことがわかりました。
エンプロイー エクスペリエンスについて調査すると、社員エンゲージメントという言葉を見かけることがあるかもしれません。この用語もエンプロイー エクスペリエンスと密接な関係があります。デジタル環境が絶えず変化する中、企業は両方の概念に改めて注目するようになっています。これらは密接な関係があるため、同じイニシアチブの一環として組み込まれることが少なくありません。しかし、これらは混同しないようにする必要があります。
エンプロイー エクスペリエンスとエンゲージメントは混同されやすいため、エンプロイー エクスペリエンスについて追加の定義を紹介し、これらの 2 つの関係を明らかにする必要があります。
Workday が 1,150 人のシニア エグゼクティブを対象に実施したグローバル調査レポート『アクセラレーションのギャップの解消: 持続可能なデジタル トランスフォーメーションに向けて』では、人事部門リーダーの半数 (50%) が魅力的なエンプロイー エクスペリエンスを重視し、企業全体の変革を加速させていることがわかりました。しかし、エンプロイー エクスペリエンスやエンプロイー エクスペリエンス製品が世界中の企業の最優先事項となっているのはなぜでしょうか。このような人財を最優先する戦略の成果を測定するにはどうすればよいのでしょうか。
エンプロイー エクスペリエンスについて理解するには、社員の企業に対する全般的な感じ方を左右する多くの要因の 1 つに注目する必要があります。パンデミックがもたらした影響への対応が続く中、人事部門で最も重要となっている社員関連のトピックの 1 つがワーク ライフ バランスです。2021 年に発表された LinkedIn 社の『社員の幸福度レポート』では、企業の勤務時間や勤務地の柔軟性に満足している社員について以下のように述べています。
注目すべき点は、このような結果が出ているにもかかわらず、社員の 20% は勤務地の柔軟性を確保されておらず、社員の 25% はこのような柔軟性を求める際の現在の手段に満足していないと LinkedIn 社は報告しています。新たな職場環境 (さらにはその先の働き方) への移行が続く中、人財の意見を取り入れてアクションを起こせる企業が成功を収めることができます。
カスタマー エクスペリエンスとエンプロイー エクスペリエンスとの関連性についてご紹介したセクションで述べましたが、企業がエンプロイー エクスペリエンスに重点を置くと、社員のパフォーマンスは向上し、社員のパフォーマンスが向上すると、従来の業績指標も向上します。最近実施された Gartner 社の調査では、柔軟性の高い企業は、社員のパフォーマンスが優れている可能性がほぼ 3 倍高いことが明らかになっています。
エンプロイー エクスペリエンスは、最高人事責任者 (CHRO) のイニシアチブという枠組みを超えました。最高財務責任者 (CFO)、最高情報責任者 (CIO)、その他の主要なビジネスリーダーは、パーソナライズされたオムニチャネル エクスペリエンスを社員に提供することに注力するようになっています。
エンプロイー エクスペリエンスという用語の示す広範な範囲をすべて考慮すると、経営幹部全体によって決められた優先事項に対応する戦略を策定することは非常に困難です。働き方が企業の中で固定されている場合は特にそうです。幸いなことに、エンプロイー エクスペリエンス戦略をゼロから策定 (または既存の戦略を最適化) する場合、100% 達成できなければ失敗というわけではありません。代わりに、エンプロイー エクスペリエンスのイニシアチブ全体を管理しやすい単位に分類します。
Workday が 1,150 人のシニア エグゼクティブを対象に実施したグローバル調査レポートでは、人事部門リーダーの 50% が魅力的なエンプロイー エクスペリエンスを重視し、企業全体の変革を加速させていることがわかりました。
McKinsey 社が 2021 年に実施した調査では、社員が離職する上位 3 つの理由として、社員が会社 (54%) やマネージャ (52%) から大切にされていると感じられない点と、職場に帰属意識を感じられない (51%) 点を挙げています。McKinsey 社の調査データは、社員の不満が福利厚生や仕事量といったより具体的な要因ではなく、会社で意見を聞いてもらえなかったり、理解してもらえなかったりすることに直接起因することを示しています。成功しているすべてのエンプロイー エクスペリエンス プログラムが、話を聞くことを基盤としているのはこのためです。調査を通じて行うか、対面で行うかは問いません。
Workday では堅牢な社員エンゲージメント調査を推奨しています。この調査は消費者対応レベルのデジタル インターフェイスを使用して定期的な頻度で実施されます。前述のとおり、エンゲージメント スコアは、社員の企業に対する全体的な感情を測定する代替指標として機能します。ただし、エンゲージメント調査では、社員がどのくらい企業の熱心な支持者であるかを示すエンゲージメント指標のみを調査すればよいわけではありません。社員の企業に対する全体的な印象を左右する心理的要因についても考慮する必要があります。こちらで当社のエンゲージメント調査の詳細な分析方法をご確認ください。
最も頻繁に確認される影響要因がいくつかあります。これらの影響要因は、エンプロイー エクスペリエンスの向上に向けた主要なイニシアチブの基盤になります。一方、一般的なトレンドに基づいて画一的な手法をとる場合、それがいかに利便性に優れていても必ず抵抗に遭います。本質的に企業内の多くのグループに影響が及ぶからです。企業が個人に合わせて完全にパーソナライズされたエンプロイー エクスペリエンスを構築するには、企業内の多様なエクスペリエンスについて考慮し、各社員をさまざまな状況に直面している人として認識する必要があります。Deloitte 社の『グローバル ヒューマン キャピタル トレンド 2021』レポートによると、エグゼクティブの 68% は、今後のワークフォース戦略は個人のニーズに合わせてよりカスタマイズされるようになると認めています。高度にパーソナライズされたエンプロイー エクスペリエンスを構築するには、心から共感を持って社員の話に耳を傾け、アクションを起こす必要があります。
必須要件なしでは、これ以外の領域でエンプロイー エクスペリエンスを向上させるための基盤を確保できません。すべての人財が、勤務地、アイデンティティ、背景、職務パフォーマンスを問わず、業務から期待できる基本レベルの要件があります。
前述の社員への価値提案でご紹介したように (「エンプロイー エクスペリエンスとは」を参照)、企業と社員の関係の中核にあるものは労働と給与の交換です。企業が業務に必要なツール、備品、ソリューションを社員に提供する引き換えとして、社員は契約に記載された業務を遂行します。定時に働くか、シフト制で働くか、オンデマンドで働くかは問いません。一方、このモデルは進化を続け、このような初歩的な交換体制の枠組みは取り払われています。
必須要件は画一された備品の提供からはるかに拡張されています。今日の企業は各個人が能力を最大限に発揮する方法を考えています。たとえば、オンボーディング プロセスがデジタル化されているか対面式であるか、個人に最適な作業環境やリモートワーク バランスはどのようなものか、障がいを持つ社員のニーズがどのように満たされているかなどです。どのような場合であれ、すべての人財が自身のニーズを表明できるようにするには、自己報告を行える機会を設けることが重要です。「必須要件」は個人ごとに異なるだけでなく、文化や業界ごとに異なるからです。必須要件を検討する場合も、パーソナライゼーションが鍵になります。
しかし、必須要件の保証は、単なるツールや教育リソースの提供を意味するのではありません。サポート体制を整え、社員の燃え尽きやストレスに対応し、社員の幸福を確保する必要があります。2021 年に実施されたハーバード ビジネス レビューのグローバル調査では、1,500 人の回答者の 89% がワーク ライフが悪化していると述べており、85% がパンデミック以降に幸福度が低下したと述べています。企業が人財を対等なコミュニティとして敬わず、機械の歯のように扱う場合、その影響は拡大するほど致命的なものになります。
業務や業務を遂行する社員は、これまで以上に分散しています。多くのデジタル企業では、地域の社員が定期的かつ強制的に一定の場所に集合することは求めなくなっています。小売店、ヘルスケア企業、製造企業など、これまで対面での業務を優先していた企業も、リモートワークや柔軟な働き方がもたらす機会に新たな可能性を見い出し、人事部門のプロセスや事務の役割を変革しています。
当社の社員エンゲージメント プラットフォームである Workday Peakon Employee Voice (詳細については当社のレポート『社員の期待レポート (2022 年)』を参照) から取得したデータによると、柔軟な働き方に関するコメントが 2019 年から 2020 年の間に 125% 増加したことがわかります。2020 年から 2021 年においては、この数字はほぼ変わっていません。どこで働くか、だれのために働くかを重視する社員は、柔軟な働き方とリモートワークを最優先します。これらは一貫して最重要事項となっています。
2021 年に実施されたハーバード ビジネス レビューのグローバル調査では、1,500 人の回答者の 89% がワーク ライフが悪化していると述べており、85% がパンデミック以降に幸福度が低下したと述べています。
ワークフォースの動的な変化は、リモートで働く社員の割合の高さや、リモートワークの継続を求める社員の期待に表れています。このような変化を受け入れるには、デジタル ソリューションに注力する必要があります。リモートワークにより、多くの企業はこれまで想像していた以上に企業文化が堅固ではないことを知りました。企業はシンプルで直感的なインタラクションを通じて必要な情報を社員に提供する方法を考えなければなりません。同時に、リモートで働く社員が 1 人で孤立して業務を行うような状況を回避しなければなりません。リモートでオンボーディングする社員には、対面式でオンボーディングする社員と同等の価値と配慮を提供する必要があります。そのようなエクスペリエンスが必然的に性質の異なるものであってもです。
グローバル ワークフォースを連携させるためには、各社員の勤務地やそれぞれの条件を考慮し、各社員がわかりやすい方法で説明しなければなりません。サポートを利用できる勤務地で働いている社員が、統制されていない独立した人事システムやソリューションに苦慮しているとします。社員のワークフロー全体はこれらのシステムやソリューションを通じて実行されるため、業務を著しく妨げられる社員は不満を募らせます。IT 部門の強みは、社員にパーソナライズされたエクスペリエンスを提供できることです。これにより、生産性の向上、新しいビジネス戦略の調整、エンゲージメントの強化が可能になります。これらはすべて、適応力の高い組織の実現につながります。このような柔軟性をインフラに組み込んでおくことで、企業は将来的に劇的な変化に直面してもはるかに迅速に働き方を整備できます。
社員の分散化が進んで明らかになったことの 1 つは、多くの企業が時代遅れのテクノロジーやソリューションを使用しているということです。多くの企業は現在、各チームがデジタルにやり取りする方法を考える必要があります。当社が世界各国に所在する 267 人の CFO を対象に実施した『CFO 指標調査 (2021年)』では、ほぼすべての回答者 (97%) が、人財を獲得して保持するためにはテクノロジーが欠かせないと述べています。また、半数近くの回答者 (48%) が、今後 5 年間に関連テクノロジーに投資することを積極的に考えていると述べています。
かつてはインターフェイスが使いにくいことが日常茶飯事でしたが、今日の社員は自身のスマートフォンで利用するアプリと同等の使いやすさを企業のソリューションに期待します。つまり、ユーザー インターフェイスがユーザーフレンドリーであること、ソリューション間のインテグレーションが強力であること、企業の Web サイトのユーザー エクスペリエンスがスムーズであること、そして何よりインターフェイスが直感的であることを期待します。社員が職務を遂行するために必要なデータやリソースは、そのまま使用可能な形式ですばやく簡単に入手できる必要があります。
これを実現するには、ユーザーフレンドリーなテクノロジーを消費者向けアプリ レベルのインターフェイスに組み込むだけでなく、機械学習を活用したソリューションが必要となります。職場で働く社員のニーズに真に応えるためには、調査を自動化し、エンプロイー ジャーニーを個人のニーズに合わせて順応させなければなりません。また、セルフサービス オプションを分類し、スマートな検索機能を通じて、適切なデータを適切なタイミングで適切な個人が入手できるようにしなければなりません。テクノロジーに詳しいワークフォースが増える中、人財を獲得して保持するには、現在のテクノロジー開発速度と同じ速度でインサイトやリソースを取得できるようにする必要があります。
Workday の 2021 年のレポート『組織の大再生: 形勢を一変させて社員の離職を防ぐ』では、27% の社員に離職の可能性があることがわかりました。『社員の期待レポート (2022 年)』の作成に伴いエンゲージメント プラットフォームから取得した追加のデータによると、企業に留まる社員の成長スコアの平均値は、離職を決めている社員と比較して 13% 高くなっています。全社員のコメントのうち成長に関するコメントが 2021 年は 8% を占めており、これは 2020 年と比べて 2% 増加しています。社員はスキル開発や人財パフォーマンスについては、自身のニーズを率直に述べていることがわかります。アクションを起こすのは今しかありません。
従来のキャリアアップに関する話し合いの内容は昇給や昇進に限られていましたが、今日の従業員はより身近で小規模な成長機会を得ることを期待しています。たとえば、現在の業務に役立つ新しいスキルの習得、社内での短期間の実務機会、現在の業務では活かせない専門知識を活用できる「スプリント プロジェクト」などです。社員にとって重要なこれらの小規模な機会が、社員の定着率の向上につながります。IT リーダーと CHRO が連携することで、スキルの分類項目を作成し、どこにスキル ギャップが存在するかを特定できます。また、社員は日々のワークロードをはるかに超える成果を達成できるようになるため、金銭的報酬や役職異動のみに頼ることなく、成長を促す文化を推進できます。
リモートでオンボーディングする社員には、対面式でオンボーディングする社員と同等の価値と配慮を提供する必要があります。そのようなエクスペリエンスが必然的に異なるものであってもです。
スキル開発は社員にとって重要な論点であるだけでなく、人財リーダーにとっては大きな障害にもなります。当社の調査『アクセラレーションのギャップの解消』では、10 人中 4 人 (38%) のリーダーが、トランスフォーメーションの最大の障壁として、ワークフォース関連のスキルの欠如を挙げています。さらに 34% のリーダー (特に財務リーダーや IT リーダー) が、高度な分析とデータの可視化スキルにより、チームは進化するビジネスの要求に継続的に対応できるようになると回答しています。デジタル環境の急速な変化を受け入れるには、新しい社員の採用や外部派遣会社との契約を急ぐ代わりに、既存の社員に再投資する必要があります。
ビロンギングとダイバーシティに賛同しつつ、アクションにつながる持続的な改革に取り組まない企業は、その代償として社員のロイヤルティーや定着率に悪影響が及ぶことになります。Deloitte 社の『Z 世代とミレニアル世代に関するグローバル調査 2022』では、多様で開放的な環境を構築する企業の取り組みに「非常に満足している」と回答したミレニアルの 52% は、今後 5 年以上企業に留まりたいと述べています。2 年以内に離職したいと述べた回答者はわずか 17% でした。「まったく満足していない」と回答したミレニアルでは逆の結果となっています。52% が 2 年以内に転職したいと述べている一方、5 年以上留まりたいと述べた回答者はわずか 11% でした。2030 年にはミレニアルがワークフォースの 75% を占めるようになります。企業は多様な職場環境の構築に対する意識を高める必要があります。
持続可能な改革を実行するには、まず企業が現在どのような位置に立脚しているのかを測定・評価する必要があります。過去および現在の問題を認識する作業は困難であり、苦痛を伴うものかもしれません。このような繊細なトピックの場合は特にそうでしょう。しかし、ダイバーシティの正確な分析なしには、より強力なエンプロイー エクスペリエンス戦略を策定するために必要なデータを入手できません。ひいては、社員がサポートを必要としている領域を真に明らかにできません。2020 年に George Floyd 氏が拘束死された後、当社の社員エンゲージメント プラットフォームでは、ビロンギングとダイバーシティに関するコメントが 2 倍に増加しました。この数字も 2020 年から 2021 年においては減少していません。部門横断的なパートナーシップを結ぶことで、人事部門は IT 部門が取得したデータを使用して調査を行うことができます。これにより採用業務のバイアスを是正し、ビロンギングとダイバーシティに取り組む専門の役割を配置して、すべての社員が帰属意識を感じられる企業文化を育成できます。
すべての個人は独自の性格とアイデンティティで形成されています。職場でコミュニティ意識を育成することは、これらの独自性を無視することではありません。これらの独自の要素や世界観をともに発揮することができる開放的な職場環境を構築することを意味します。人財が雰囲気や文化が原因で最良の自分を安心してさらけ出せない場合は、ビロンギングとダイバーシティに対して新たな手法を試みる必要があります。企業のダイバーシティへのイニシアチブに関する洞察を共有したり、社員が秘密裡にフィードバックを共有したりできる場を確保します。明らかな差別や疎外感によって人財の幸福やパフォーマンスが損なわれることがあってはなりません。
上述の重点分野についてはそれぞれ専用のソリューションや主要業績評価指標が必要になりますが、社員センチメント全般を測定するにはどうすればよいでしょうか。定期的な調査を通じて社員エンゲージメントを測定することで、社員にとって重要な問題 (シニア マネジメントが設定した目標に対する見解、社員満足度全般など) について社員が率直に話す機会を提供できるだけでなく、心理的な安心感やインクルージョンをもたらす文化の育成を促進できます。これにより、社員は自身の意見がより広範な企業のイニシアチブにどのように貢献しているかを積極的に確認できます。社員の声を引き出すことができれば、エンプロイー エクスペリエンスは必ず向上します。
Workday が作成した『社員の期待レポート (2021 年)』では、会社に留まる社員のエンゲージメント スコアは、退職する社員の平均スコアより 13% 高いという結果になりました。
社員の声を引き出すには、具体的に何を行えばよいのでしょうか。
まず、定期的に調査を行うシステムが必要です。機械学習を活用し、適切な質問が行われるようにします。社員に適切なタイミングで適切な質問を行うことで、調査疲れを軽減できるだけでなく、社員は (数か月先まで待たずに) 調査中にその場で問題を報告できます。調査はエンゲージメントの取り組みの 1 つに過ぎません。ライン マネージャとの 1 対 1 のミーティング、より大規模な社内ミーティングなど、社員が懸念事項を話すことができる複数の手段を用意する必要があります。機密性を確保することで、社員はこれまで話せなかったアイデアについても話すことができるようになります。
次に、人財リーダーがリアルタイムな社員センチメント データにアクセスできるプラットフォームが必要です。これにより、人財リーダーはチームが抱える最も喫緊の問題にタイムリーかつ効率的に対処できます。Workday Peakon Employee Voice では、トピック、業界、国など、影響要因別にエンゲージメント スコアを分類できるだけでなく、市場基準と照らし合わせてスコアを評価することができます。これをマネージャ向けに自動生成される推奨アクションと組み合わせることで、社員が自身の意見に耳を傾け、受け止められていると感じられる環境を構築できます。
Workday が作成した『社員の期待レポート (2021 年)』では、会社に留まる社員のエンゲージメント スコアは、退職する社員の平均スコアより 13% 高いという結果になりました。日常的な業務の一環として社員の意見に定期的に耳を傾け、その結果実行されたアクションを明らかにすることで、はるかに広範なインサイトを取得し、エンプロイー エクスペリエンス プログラムがどのように進行しているか、次はどこに向かうべきかを特定できます。
エンプロイー エクスペリエンスがもたらす価値を明らかにする場合は、業績指標や生産性指標の観点から試みることが少なくありません。しかしこのような観点からでは、優れたエンプロイー エクスペリエンスがもたらす真の価値、つまり共感と誠意を基盤とした企業文化の構築という側面を捉えることができません。最近実施された McKinsey 社の調査では、過去 2 年間の離職者のうち、同じ業界で新たな職務を見つけたのは世界全体でわずか 35% であることがわかりました。人々は新しい活動の場を求め、新しい課題に挑もうとしています。これらのニーズに社内で応えている企業は、今後最高レベルの定着率を達成できます。
この記事で 1 つ覚えておくべき重要点があるとすれば、企業にとって最も必要なインサイトは、オンライン上では見つかるわけではなく、社員の中に存在するということです。これはエンプロイー エクスペリエンスの最新トレンドの調査内容を無視してよいということではありません。社員のライフサイクルのステージごとに社員と関わっていく必要があることを意味します。社員が自身の意見を述べる場を提供し、企業が社員のキャリア開発や個人的な成長に投資していることを示します。特定のアクションに取り組む場合は、成功しているかどうかにかかわらず、進捗状況を社員に通知します。
エンプロイー エクスペリエンスは、人事部門のみが取り組む専門分野ではありません。データを年に一度収集すれば対処できるものでもありません。戦略については、CFO、CIO を含め、企業のあらゆる部門が人財を最優先する手法をとる必要があります。そうしなければ、社員は必ず業務のどこかで障壁に直面することになります。最良のエンプロイー エクスペリエンスは認識されにくいものです。各社員は、自分たちのニーズが何の抵抗もなく満たされ、リクエストやタスクは業務の中で日常的に行われるものだと感じているからです。不要な負担を解消することで、社員一人ひとりが自身を最大限に高められる環境を構築できます。これは、企業の成功にもつながります。
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Workday の最高学習責任者を務める Chris Ernst が、Workday のスキルベース人財戦略への移行を経験したことから得たインサイトを共有します。
当社は McKinsey 社の 2 人の専門家にらせん型組織モデルについて話を伺いました。このモデルが流動的なビジネスの需要に適応できるワークフォースの育成にどのように役立つかをご確認ください。