グローバルな給与計算の複雑さに先手を打つ 3 つの方法

新たな調査では、雇用主が世界中で直面している課題の変化を示しています。幸い、複数国の複雑な給与計算は戦略的に管理することができます。

グローバルな給与計算の複雑さに先手を打つ 3 つの方法

リモートワークが常態化し、タレント プールが拡大するにつれ、複数国のワークフォースを管理する企業が増えてきています。そのため、給与計算管理は複雑化の一途をたどっています。実際、ここ数年のうちに一部の国では、税制の変化や政府の新たな要件により、給与計算管理の複雑さが増しています。 

このことは、グローバルな給与計算管理事情をつまびらかにする新しい調査ベースのレポートから得た、大きな収穫の一つです。Alight 社の「2023 Global Payroll Complexity Index」では40 か国を順位付けしていますが、ランキング上位 10 か国中 9 か国を含め、25 か国がヨーロッパ・中東の国々となっています。当該指数は、複雑さに拍車をかける主な要因と変化に対応するための確実な戦略を浮き彫りにしています。 

そして間違いなく言えるのは、事態が急速にがらりと変化する可能性があるということです。トルコが良い例です。同国の複雑さは 29% 増加し、順位は 36 位から 7 位に急上昇しました。それはなぜでしょうか。給与計算処理に必要な入力データの増加、社会保障の計算や時間管理規制の変更などが要因として挙げられます。一方、スイスはこの指数について 8 位から 3 位へと順位を上げており、これは手作業による報告や記録保持の義務化により、時間のかかる複雑な工程が増えたのが原因です。

人財、プロセス、規制が絡み合う給与計算業務は、1 か国で事業を展開する企業にとっても重荷となります。ずさんな管理は、雇用主にとって莫大な損失につながり、社員の不満を高めます。多国籍企業ともなれば、給与計算プロセスに影響する可変要素を数多く把握する必要があり、コンプライアンス違反やミスを犯すリスクも高まります。要件が変化していく中、企業はグローバルな給与計算管理戦略を「効率化」「自動化」「データ」の 3 つに集中させることで、先手を打つことができます。

適応への第一歩は、変化を認識することです。まず、複雑さの要因の上位 3 つを確認し、リスク軽減戦略について掘り下げていきます。

複雑さを生み出す要因とは

この重要な問いに対する答えは、「政府の規制」です。これらは見たところ常に変化しているように思われ、複雑度指数上位 10 か国では、とりわけ大きな影響を与えています。 

1.強制控除

国税と地方税の税率は変化します。社会保障と国民保険制度も発展していくものです。各国にはさまざまな強制控除があり、養育費の支払いやその他の給与差し押さえなど、特定の社員に適用されるものとされないものがあります。 

ドイツは、全体的な複雑さが 2% 増加し、2021 年の 4 位から今年は 2 位となりました。その大きな理由は、同国の強制控除の多さにあります。同様に、4 位のイタリアでは裁判所命令による控除が複雑さの一因となっています。

2.社会保障の計算

各国の社会保障制度には、それぞれ独自の要件があります。スイスの制度は特に複雑であり、4 つの公用語と 26 の州で異なる規制があることも相まって、この指数について 3 位となっています。 

3.報告要件

フランスは 2021 年に続き今年も 1 位となっており、報告義務化がいかに複雑さをもたらすかを示しています。同国は、報告しなければならない項目が多く、記録保持が義務付けられている期間が最も長い (20 年以上) 上に、必要な法改正が頻繁に行われています。また、政府への給与計算報告は手作業で行われます。 

成功へ向けた合理化戦略

先進的な企業は、常に進化する給与計算の状況を想定するだけでなく、リスク管理を目的とした給与計算管理戦略に投資することで、レジリエンスを高めています。現代ビジネス全般に言えることですが、適切なテクノロジーにより、将来を見据えたプロセスを確立し、競争力を高めることができます。

もちろん、テクノロジーだけですべてが解決するわけではありません。しかし、給与計算のプロの継続的な教育とトレーニング、専門的知識と組み合わせることで、以下の 3 つの戦略は大きな価値を生み出すことができます。

「基幹業務システムとの合理的な統合により、プロセスを自動化し、給与の正確性、データセキュリティ、コンプライアンスを向上させることができます」。 同時に、このようなテクノロジーへの投資がもたらす重要なメリットがあります。それは、勤労所得、透明性の高い計算、多様な福利厚生にオンデマンドでアクセスできるという、社員主体の文化が醸成されることです。

1.給与計算の効率向上

給与計算の要件は国によって異なりますが、給与計算業務を一元化することで大幅な効率化が可能です。国ごとの活動を一つの基幹業務システムに統合することで、記録管理を簡素化し、勤務地を問わず、すべての社員の給与計算処理を正確かつ迅速に行うことができます。

また、最先端の給与計算プラットフォームには、アナリティクスと AI 機能が搭載されており、別の面で効率化を推進します。最新のシステムは、給与計算の異常にフラグを立てることでチームがミスをより迅速に特定できるようになり、修正に必要な時間とリソースを削減できます。 

2.プロセスの自動化

プロセスが自動化できるのに手作業にこだわる理由はありません。給与計算システムを一元化することで各国でのプロセスを自動化し、ミスを減らし、刻々と変化する規制へのコンプライアンスを確保することができます。 

また、自動化により、オンデマンドでの勤労所得へのアクセスや、福利厚生の控除に関する透明性の確保など、社員中心の人事文化を育むことができます。 

3.データの力を活かす

一部の国では入力データが増加しており、人事部門だけでなくビジネス全体からインサイトへの需要が高まっているため、給与計算はこれまで以上にデータ中心になっています。組み込まれたアナリティクスとオンデマンド方式のグローバル データ アクセスを提供するシステムに投資することで、組織は複雑さに対応することができます。データはアジリティをもたらし、それは成長の原動力となります。 

複雑さとリスクは隣り合わせです。こうしたリスクは、単なる給与計算ミスやコンプライアンス違反にとどまりません。このようなミスや見落としは、修正にコストがかかるだけでなく、社員の士気低下、業績不振、さらには純利益の減少など、幅広い問題につながる可能性があります。多国籍企業が進むべき道は明らかです。それは、給与計算プロセスを改善し、避けられない変化の波に備えるためのテクノロジーへの投資です。

さらに読む