CFO×CHRO 連携で企業価値を高める方法:人財データと AI 活用の実践戦略

かつて、CFO(最高財務責任者)は財務の健全性を守る「番人」の役割を担っていました。しかし今、企業には中長期の成長戦略と企業価値の持続的な向上が求められています。本記事では、この変化をリードするCFOとCHROの協働の重要性を解説します。

A CFO and CHRO collaborating at an office desk with a laptop.

CFO が企業価値向上を担う背景

かつて、CFO(最高財務責任者)は財務の健全性を守り、数字を管理する「番人」としての役割を担っていました。ところが今、企業を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。投資家からは中長期の成長戦略が問われ、企業価値の持続的な向上が期待される時代です。そうした中でCFOに求められる役割は、単なる財務管理にとどまらず、非財務的な要素を含めた統合的な視点から経営戦略の実現をリードする存在へとシフトしています。

この変化の背景には、経営基盤の老朽化による競争力低下のリスク(「2025 年の崖」問題など)への対応が一段落したことがあります。多くの企業がシステム刷新を進める中で、IT投資の目的は「コスト削減」から**「未来の成長のための投資」**へと移り変わっています。

そして、この変化を推し進める上で欠かせないのが、CHRO (最高人事責任者) との連携です。人材は企業の成長を左右する最大の資産であり、財務戦略と人材戦略(人的資本)をいかに結びつけるかが企業価値向上のカギを握ります。

人事変革の鍵は「プロフェッショナルなリーダーの存在」

2020 年に経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート」以降、人的資本経営の重要性は広く認識されるようになりました。しかし、現場では制度やツールの導入にとどまり、期待された成果を生み出せない企業が多く見られます。背景には、経営戦略と人事戦略の乖離 (かいり) や、変革を主導できるプロフェッショナルなリーダーの不在があります。

ワークデイが 2025 年 7 月に発表した「HR モダナイゼーション実態調査」によると、人事変革に取り組む企業のうち、明確な成果が出ていると回答したのはわずか 14% にとどまりました。また、調査では「変革を推進する人材が不足している」と答えた企業が 3 割を超えるなど、人的資本経営の実行に不可欠な CHRO や HRBP といったプロフェッショナルなリーダーや専門組織が不足していることが明らかになっています。

【実践戦略】CFO と CHRO が連携して企業価値を高める 3 段階のアプローチ

CFO が企業価値向上という目標を達成するためには、以下の 3 段階のアプローチが有効です。これらの取り組みは相互に関連し合い、最終的に企業価値の向上につながる好循環を生み出します。

Step 1: 守りの業務を「攻め」へシフトさせるためのデータ基盤整備

CFO と CHRO が連携する上で最も重要なのは、両組織が共通で利用できるデータ基盤の整備です。

財務データ(人件費、投資対効果など)と人的資本データ(スキル、エンゲージメント、異動、生産性など)が共通化されれば、2つの組織が重なりあって経営戦略、事業計画、要員計画を考えることができるようになります。データがサイロ化している状態では、CFOは人事への投資効果を測れず、CHROは人事が経営にどう貢献しているかを数字で証明できません。データ基盤の共通化は、**「守りの業務」から「攻めの経営」**へとシフトするための土台となります。

Step 2: 経営に直結するストラテジック・ワークフォース・プランニングの実践

データ基盤が整備された次の段階で実践すべきは、ストラテジック・ワークフォース・プランニング(戦略的な要員計画)です。

これは、単に採用人数を予測する「人数合わせ」の計画ではありません。**「5年後の事業計画達成に必要なスキルや人材が現在どこにいて、今後どう不足するか」**を明確にする、経営戦略の実現に不可欠な計画です。財務と人事を統合したデータがあれば、将来的なリソースの過不足を定量的に把握し、必要な人材への投資や育成を、最適なタイミングで実施できます。

Step 3: AI 活用による業務効率化と経営への貢献

最終的に、業務の効率化には AI の活用が必須になりつつあります。ただし、AI を十分に活用するためには、企業内のデータが AI が活用できる形で相当量蓄積されていることが前提となります(Step 1 のデータ基盤整備が不可欠です)。

AI が、日常の定型的な財務・人事の業務を代行することで、CFO や CHRO、そしてそれぞれのチームは、限られた人的資源と時間を、**より戦略的で付加価値の高い業務(攻めの経営)**へとシフトさせることが可能になります。

まとめ:CHRO・HRBP を中心とした体制構築が鍵

人事変革を成功させるには「人」だけでなく、その人財を牽引するプロフェッショナルなリーダーの存在が不可欠です。強いリーダーシップを持つ CHRO、経営の右腕となる HRBP を中心に据えることが、グローバル競争に打ち勝ち、戦略的な人事機能を実現する確実な方法と言えるでしょう。

ワークデイは、戦略的な人事改革を実現するための包括的な解決策として、企業の HR モダナイゼーション実現を支援しています。日本企業が経営に貢献する戦略的人事を実現できるよう、こうしたプロフェッショナル人財の育成と体制構築をサポートします。

Workday のグローバル調査『人間の可能性を引き出す: AI によるスキル革命』によると、AI に精通している専門家の多くは、職場での AI の役割について楽観的な見方をしています。この調査では、AI が人間のスキルや生産性を向上させる可能性を強調しています。また、参加者は AI を人間の能力を補完するものと捉え、決して置き換えるものではないと考えています。

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