人財の獲得とリクルーティングの違い: 完全ガイド

リクルーティングと人財の獲得を明確に区別することは、即戦力の確保だけでなく、将来を見据えたワークフォース戦略を成功させる鍵となります。このバランスを上手く取ることで、重要なスキル ギャップを埋め、将来の成長を支える人財との関係構築が可能になります。

眼鏡をかけ、膝の上にラップトップを置いて笑顔で座っている人

変動の激しい労働市場において、候補者の期待がますます高まっています。最近の Gartner 社の調査によれば、候補者の約 90% が企業の価値提案と自身の優先事項が一致しないことを理由に、採用プロセスから離脱したという結果が出ています。

このような状況下で企業に求められているのは、即時の採用ニーズに対応しつつ、候補者との関係性を意識的に構築し、将来的なパイプラインを強化する包括的なタレント マネジメントのアプローチです。

ここで重要な役割を果たすのが、人財の獲得とリクルーティングです。人財の獲得は、雇用主としてのブランド構築やパイプラインの整備、ワークフォース管理といったレベルの高い人財戦略を担います。一方でリクルーティングは、目の前の人財配置ニーズに対応する業務です。これらは関連していますが、どちらも人事部門戦略において異なる役割を担っています。

競争が激化する現代の人財市場において、人事部門の組織が人財の獲得とリクルーティングの本質的な違いを理解し、両方を優先するために適切なチーム、ツール、実践を導入することは極めて重要です。

候補者の 90% が企業の価値提案と自身の優先事項が一致しないことを理由に、採用プロセスから離脱したという結果が出ています。

リクルーティングとは

リクルーティングは、企業の即時的な採用ニーズに応えるための戦術的な業務です。重要な役職が空いた際に、採用担当者は迅速に対応し、確立されたプロセスを活用して、適格な候補者の募集、選考、採用を短期間で実施します。

この応答性の高いアプローチは、業務の中断を防ぎ、緊急の人財配置不足を速やかに解消します。主なリクルーティングの活動は次のとおりです。

  • ターゲットを絞った候補者の探索: 求人サイト、ソーシャル メディア、紹介、専門コミュニティの活用
  • 応募者の追跡: 応募者トラッキング システム (ATS) 内で候補者パイプラインの管理、進捗状況の可視化、ステークホルダーへ情報提供
  • 面接の調整: 面接の日程調整と実施、フィードバックの収集、面接プロセスの各段階での候補者の案内
  • 内定管理: 魅力的な内定の提示、条件交渉、候補者の迅速な獲得

スピード、効率性、明確なコミュニケーションを重視することで、リクルーティングはダウンタイムを最小限に抑え、事業の継続を支援します。しかし、広範な長期戦略が欠けている場合、リクルーティングだけでは組織は将来的な人財不足に陥るリスクがあります。

人財の獲得とは

人財の獲得 (TA) は、企業の将来のワークフォースを築く長期的な戦略基盤として機能します。即時の欠員補充に重点を置くリクルーティングとは異なり、TA は将来の人財ニーズの予測、関係性構築、強力な雇用主ブランドの構築を通じて、優秀なプロスペクトの獲得を目指します。

人財の獲得における先を見据えたアプローチは、必要なときに重要なポジションへ即戦力として登用できる、優秀な候補者の安定したパイプラインを構築します。主要な TA の活動内容は以下の通りです。

  • 積極的な人財発掘と関係性の管理: ネットワーク、人財コミュニティ、継続的なアウトリーチを通じて、現在は積極的に求職していない候補者とも接点を持ち、長期的な関心を育む
  • 雇用主ブランドの開発: ソーシャル メディア、イベント、キャリア サイトを活用し、企業の本質的な価値提案を設計、発信することで、優秀な求職者を惹きつける
  • 大学および地域社会との連携: 大学、業界団体、ダイバーシティを推進する組織とつながりを構築することにより、新たなタレント プールを活用する
  • 社内異動プログラム: 現在の社員が新たな役職に挑戦したり、スキルを向上する機会を提供し、社員の意欲を高めることで、既存のワークフォースを貴重なタレント プールに変える
  • タレント リレーションシップ マネジメント (TRM) ツールの活用: 専門プラットフォームを使用して候補者のエンゲージメントを追跡し、パイプラインを管理し、採用ニーズを予測する

人財の獲得の取り組みを、ビジネス目標や市場動向と整合させることで、組織は場当たり的な採用に頼る必要性を減らし、より質の高い候補者を確保し、持続的な成長に必要な専門のスキル セットを確保できます。

人財の獲得とリクルーティングの本質的な違いを理解することで、人事部門チームは独立しながらも相互に補完し合う戦略を策定できます。

人財の獲得とリクルーティングの違い

即時的な採用と将来の人財パイプラインを最適化するためには、リーダー企業は人事部門におけるリクルーティングと人財の獲得の体制を構築する方法について、明確に理解することが重要です。そのためには、両者の機能の違いを把握し、それぞれに対して明確なプロセスと役割を定義する必要があります。以下に挙げる 5 つの違いは、人事部門チームがリクルーティングと人財の獲得の戦略を、それぞれ独立しながらも相互に補完し合う形で策定する際の指針となります。

1.時間枠の統一

リクルーティング チームは、迅速な対応に重点を置いています。求人ポジションに対して、数日から数週間という短期間で候補者の発掘、選考、およびオンボーディングを実施し、迅速に人員不足を解消することで、事業を円滑に継続させます。実際の業務では、常にアクティブな候補者リストを保持し、求人サイトや社内紹介制度といった迅速に対応可能なチャネルを活用します。

人財の獲得チームは、長期的な時間枠で業務を行い、数か月から数年先を見越した収益予測とワークフォース プランニングを実施し、役職に適切な人財を確保できるまで候補者との関係性を育みます。この両方のアプローチを取り入れることで、緊急の採用が必要な場面でも慌てることなく対応でき、同時に持続的なタレント プールを構築することが可能になります。

2.戦略的プランニングへの関与

採用担当者のチームは、短期的な要求を満たすために、精緻な職務内容と即応的な採用要項に従って、明確に定義された採用活動を行います。 

人財の獲得の担当者は、戦略的なプランニングの立案に直接関与し、リーダーたちと連携して、ヘッドカウントの計画をモデル化したり、新たなスキル ギャップを特定したり、事業の優先事項の変化に応じて採用目標を調整したりします。

3.パフォーマンス指標

リクルーティングの成果は、短期的な数値に表れます。たとえば、補充までの期間、採用コスト、離職率および候補者満足度スコアが主な指標です。 

人財の獲得では、より長期的かつ包括的な指標が重視されます。たとえば、採用者の初年度パフォーマンスや定着率に基づく採用の質、パイプラインのコンバージョン率、積極的な人財発掘による役職の充足率が指標となります。

4.人財エンゲージメント

採用担当者は、採用プロセスの各段階で、明確かつタイムリーなコミュニケーションを通じて、候補者とのエンゲージメントを促進し、採用プロセスの流れを維持します。具体的には、面接に関する連絡、即時のフィードバック、簡潔な内定条件の提示が含まれます。実務面では、標準化されたメールのテンプレート、定期的なチェックイン、候補者からの問い合わせへの迅速な対応を行います。

人財の獲得は、エンゲージメントをコミュニティ形成というより広い枠組みで捉えます。企業ブランドを打ち出したイベントの開催、退職者ネットワークの維持、ソーシャル プラットフォームを通じた人財コミュニティの運営といったイニシアチブを通じて、まだ転職を考えていない候補者との接点を持ち続け、一度限りのやり取りを継続的な対話へと発展させていきます。

5.部門横断的な影響力

採用担当者は、採用マネージャや人事部門のビジネス パートナーと密接に連携し、職務要件をアクションにつながる職務プロファイルに落とし込み、コンプライアンスや企業文化への適合も考慮します。

人財の獲得のリーダーは、このコラボレーションを一歩先に進め、部門横断的な採用委員会を構築します。雇用主ブランドの強化に向けてマーケティング部門と連携したり、ワークフォースの予算編成において財務部門と協議したり、キャパシティ プランニングの観点から運用部門と調整したりします。この統合アプローチによって、採用戦略を組織全体の目標と整合させます。

リクルーティングと人財の獲得の連携

現在、人事部門リーダーは、今後発生し得る採用やスキルに関する課題を強く意識しています。Workday の調査によれば、人事部門リーダーの過半数 (51%) が将来的なスキル不足を懸念しており、現在のスキルが将来の成功に必要なスキルだと考えている人は約 3 割 (32%) にとどまっています。組織内のスキルを明確に把握していると答えた人は、わずか 54% でした。

リクルーティングと人財の獲得を連携させることが、ワークフォースにおける透明性とインサイトを高め、人事部門チームが強固なワークフォースを築く上で不可欠です。逆に、これらのチームがサイロ化されている場合、組織は短期的な採用施策と長期的な人財ニーズとの間にミスマッチが生じるリスクが高まります。

TA の将来を見据えた知見と、リクルーティングの運営のアジリティを統合することで、目の前の人財配置から継続的な人財育成まで、効率性と長期的なワークフォースのレジリエンスを優先する、シームレスな体制を構築できます。その詳細について解説します。

  • 人財パイプラインと求人案件を結びつける: TA による先を見据えた候補者プールを、実際の職務補充依頼と紐づけることで、ポジションが公開された際に採用担当者がすでに関係構築済みのプロスペクトに速やかにアプローチできるようにします。
  • 部門横断的な定期連携: TA の担当者、採用担当者、採用マネージャが毎週または毎月の頻度で定例会議を開催し、パイプラインの状況や今後の採用ニーズについて確認します。
  • 共通の指標の標準化: 補充までの期間、採用の質、パイプラインのコンバージョン率など、共通の重要業績評価指標 (KPI) を設定し、優先事項を統一し、連携の成果を評価します。
  • データ システムの統合: ATS と CRM プラットフォームをシームレスに連携させ、採用担当者が TA プログラムの活動状況を確認できるようにし、TA チームも採用担当者経由で採用案件の進捗を追跡します。
  • 雇用主ブランドの共同構築: 雇用主ブランドのキャンペーンに採用担当者を巻き込み、採用現場でのフィードバックを反映させながら、優秀な人財に響くリアルなメッセージを打ち出します。

リクルーティングと人財の獲得が一体的に機能することで、すべての採用活動が単なる一回限りの取引ではなく、戦略的な資産へとつながります。採用担当者は、TA のイニシアチブが育成したパイプラインを活用して採用を加速し、TA チームはリアルタイムのインサイトから採用動向を把握できます。

このような相乗効果によって、目の前の人財配置ニーズに対応するだけでなく、変化する事業の優先事項をサポートする、生きた人財ネットワークを構築することが可能になります。

リクルーティングと人財の獲得を人財管理プラットフォーム上で統合することで、採用サイクルのあらゆる段階を可視化できます。

成功に向けた適切なツールの導入

リクルーティングと人財の獲得は、それぞれが人事部門の中で重要な役割を担っており、戦略的な採用計画と長期的な事業成果に貢献しています。各チームの責任範囲を明確にし、データを共有し、ワークフォース プランニングを連携させることで、組織はリクルーティングのスピードと TA の先見性の双方の利点を活かすことが可能になります。

リクルーティングと人財の獲得を人財管理プラットフォーム上で統合することで、採用サイクルのあらゆる段階を可視化できます。単一の統合されたシステムにより、人事部門チームはアクティブな応募者と、育成されたプロスペクトの両方の候補者フローを明確に把握でき、すべての意思決定を一元化された正しい情報源に基づいて行えるようになります。

強力な人財管理 (HCM) ソリューションには、以下のような機能が備わっています。

  • 統合された応募者の追跡機能: 補充依頼、面接、内定の進捗状況をリアルタイムで追跡し、情報共有の遅延を防ぎます。
  • タレント リレーションシップ マネジメント: 自動化されたアウトリーチ機能やパーソナライズされたワークフローを通じて、今は積極的に転職を検討していない候補者とも継続的に関係を築きます。
  • 統合型の分析ダッシュボード: 採用までの期間、採用の質、パイプラインの健全性などの人事指標をひとつの画面で可視化し、データドリブンな戦略を立案します。
  • ワークフローの自動化: 面接の日程調整、フィードバック収集、内定の承認といったプロセスを自動化し、人事部門の作業負荷を軽減します。
  • AI を活用したマッチング: 機械学習アルゴリズムや AI 人財ソーシング を活用して、最適な候補者を見つけ出し、企業文化やスキルの適合性の予測を行うことで、採用の質を高めます。
  • スケーラブルなアーキテクチャ: ツールを簡単に適応させて、ヘッドカウント数の増加、新しい事業地の開設、または特別な採用プログラムをサポートします。

統合された人財管理プラットフォーム上でリクルーティングと人財の獲得を管理することで、採用のあらゆる段階で完全な透明性が実現します。一元化された分析機能、シームレスな候補者エンゲージメント、拡張可能なワークフローを備え、企業は現在の優秀な人財を確保しつつ、将来の課題にも対応できる柔軟なワークフォースを構築することができます。

急速な市場の変化が人財戦略を困難にしていますか?この Workday バイヤーズ ガイドでプランを策定する方法をご覧ください。ビジネスの目標を定義し、さまざまなベンダーの評価を行い、適切なスキル テクノロジーを活用してワークフォースの潜在能力を引き出しましょう。

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