AI 時代に即した人財ソーシングを実現する
AI は事後対応的な手動プロセスを戦略的プロセスに変換することにより、企業が人財を特定および獲得する方法を大きく変えています。御社は強力かつスケーラブルな採用パイプラインを導入する準備ができていますか?
AI は事後対応的な手動プロセスを戦略的プロセスに変換することにより、企業が人財を特定および獲得する方法を大きく変えています。御社は強力かつスケーラブルな採用パイプラインを導入する準備ができていますか?
企業が人財をソーシングする方法は抜本的に変わりつつあります。人財ソーシングは従来、ブール検索、履歴書のスキャン、LinkedIn での検索など、手動プロセスに大きく依存していました。そのため時間がかかり、事後的な処理に終始し、バイアスが生じることが少なくありませんでした。新たな時代を迎えた今日、採用プロセスは人工知能 (AI) によって加速化が進んでいるだけでなく、抜本的な変化を遂げています。
AI ソーシング ツールは数千件に上るプロファイルを数秒でスキャンし、優秀な受動的候補者を明らかにし、アウトリーチ メッセージの作成に対応します。しかし AI のメリットは自動化だけではありません。AI は予測に基づいてスマートかつインクルーシブに人財を獲得できる方法を提供します。
人事部門の AI 導入は着実に増加しており、2024 年は飛躍的な伸びを見せています。Korn Ferry 社のレポートによると、人事部門リーダーの 67% は、2025 年の人財獲得にみられる最大のトレンドは AI 利用の拡大だと考えています。Workday 主導で作成された『AI に関する CHRO 指標調査レポート』では、人事部門リーダーが AI で即時的価値を実現できると考えている領域のトップ 3 に採用がランクインしています。
AI が人財の獲得方法を変える中、ソーシングは先を見据えてデータドリブンに行い、長期的なワークフォース戦略と連動して行われるようになっています。これらのツールを効果的に活用するチームは、すばやく行動を起こせるだけでなく、ビジネスの成長に合わせて採用の意思決定をスマートかつインクルーシブに行うことができます。
AI にはさまざまなテクノロジーがあり、それぞれが独自の機能セットを提供します。ソーシングに使用される AI も同様です。さまざまなタイプの AI が採用ファネルでどのように使用されているかを具体的に知ることにより、AI が人財ソーシングをいかに変えているかを理解できます。
機械学習 (ML) モデルはデータのパターンを特定し、そのパターンに基づいて予測を行うように構築されています。人財ソーシング ツールは ML アルゴリズムを通じてリクルーターの行動、過去の採用データ、市場シグナルを学習し、以下を実行します。
例: 組織が特定の経歴を持つ優秀なセールス エンジニアを 5 人採用した場合、機械学習システムは彼らに共通する属性を特定し、同様の属性を持つ候補者がいた場合、応募していなかったとしても先回りして彼らを推薦します。
AI システムは自然言語処理 (NLP) を活用して非構造化テキスト (履歴書、職務内容、LinkedIn プロファイルなど) の「読み取り」と解釈を行います。NLP を活用したソーシング ツールは、以下を実行します。
例: 「物流の自動化に対応するスケーラブルな API を構築」した経歴がデータに含まれている場合、職務名に「ソフトウェア エンジニア」と明記されていなくても、NLP は候補者がバックエンド開発スキルを保有していると認識します。この機能はスキルベース採用を行う場合や、標準的なキーワード検索では特定しにくい移転可能なスキルを明らかにする場合に役立ちます。
GPT などの大規模言語モデル (LLM) を活用する生成 AI は、プロンプトやコンテキストに基づいて新しい採用コンテンツを作成できます。人財ソーシングの世界では、すでに生成 AI で以下を実行しています。
例: 生成 AI の使用により、製品マネージャの職務をソーシングするリクルーターは、候補者の経歴や興味に合わせてファースト コンタクト メールのドラフトを作成できます。プロジェクトと関連性の高い情報を候補者の公開プロファイルから収集することもできます。
エイジェンティックAI は、インテリジェント システムの新たな波を象徴するテクノロジーです。このツールは分析やインサイトの生成を行うだけでなく、コンテキストや目標を解釈し、先を見据えてアクションを起こします。このような AI エージェントは、リクルーターと連携して業務を遂行するデジタル アシスタントの役割を果たします。
エイジェンティックAI は以下を実行します。
例: 特定の職務を募集しているときに適切な人財から応募が得られない場合、エイジェンティックAI ツールはこれを検知し、職務内容を変更するようリクルーターを促し、市場データに基づいて変更内容を提案します。これらはすべて自律的に行われます。
成熟度が増すにつれ、AI ツールはソーシングの自動化にとどまらず採用ライフサイクル全体を通じて新たな価値を創出するようになります。Boston Consulting Group 社の調査によると、AI や生成 AI を最もよく使用する部門の上位に人事部門が含まれています。また、92% の企業はすでに AI のメリットを享受しています。
多くの場合、AI を活用する最大のメリットは効率性の向上にありますが、ソーシングを事後対応的な戦術的タスクからインサイトドリブンな戦略的タスクへと移行する AI のメリットは、より抜本的な効果をもたらします。AI を活用する人財チームは、将来を見据えて動的なパイプラインを構築し、ビジネスニーズと連動させています。AI で人財ソーシングの効果、インクルージョン、アジリティを高める主要な方法を以下にご紹介します。
AI がもたらす明らかなメリットのひとつは、リクルーターと比較にならないスピードで大量の候補者データを処理できることにあります。AI ソーシング ツールは数千件の履歴書、プロファイル、データベースを数秒でスキャンし、職務要件と最も一致する候補者を自動的に導き出します。
しかしスピードだけでは不十分です。AI が突出している点は、大規模データを正確に処理する能力にあります。適切なキーワードと一致する多数の人財を特定するだけでなく、職務を成功させる可能性が高い優秀な候補者を、スキル、経験、過去の採用データに基づいて明らかにします。
その結果、人財チームは業務の質を損なうことなくより迅速に任務を遂行し、候補者の潜在能力を入社初日から明確に把握できます。
従来のソーシングでは積極的な求職者に意識が向きがちになりますが、優秀な候補者はすでに社内に在職しており、求人募集を閲覧していない場合が少なくありません。AI は職務要件を満たす (または上回る) 優秀な消極的候補者を特定することにより、組織が先を見据えたソーシングを実現できるようサポートします。
先を見据えたソーシングを実現するため、AI は公開情報 (プロジェクトの貢献度、スキル開発レベル、キャリアパスなど) を分析し、適合性やエンゲージメントに基づいて潜在的な候補者をスコアリングします。このようなツールは、従来とは異なる経歴や職務名が原因でリクルーターが見逃しがちなわかりにくいデータを特定することもできます。
AI ソーシングは見逃されていた未開拓の人財を発掘することにより、候補者のダイバーシティを改善し、特定の応募者プールへの依存を減らし、あらゆる検索の対象範囲を拡大します。スキルベース採用が進む中、AI を活用した候補者のソーシングは今後も拡大することが予想されます。
人財チームの最優先事項は現在も迅速な職務補充であることに変わりはありません。手作業でソーシングを行っている環境では重大なペイン ポイントとなります。AI は以下のタスクを実行することにより、採用ファネルの初期フェーズを加速し、採用までの時間を短縮します。
その結果、リクルーターは質の高い候補者をパイプラインに速やかに追加し、採用マネージャは強力な候補者のリストを初期段階で確認できます。同様に重要なことは、手作業を減らすことにより、リクルーターの疲労を軽減し、リクルーターが戦略的業務に時間を割けるようになることです。過剰な仕事量に起因して発症する燃え尽き症候群のリスクを削減することもできます。
ソーシングは必ずしも外部人財の採用を意味するわけではありません。組織は AI によって既存の人財データから価値を再発掘することもできます。つまり現在の社員や過去の応募者の中から職務に適した人財を見つけることができます。
AI ツールは以下を実行します。
このような機能を使用することにより、社内人財の流動性を強化し、ソーシング コストを削減し、すでに投資している人財を最大限に活用できます。定着率、スキルアップ、後継者育成プランニングを重視する企業は、AI から大きなメリットを得ることができます。
AI ソーシングがもたらす最も革新的なメリットは、未加工データを戦略的インサイトに変えることかもしれません。AI プラットフォームは、システム、職務、候補者のデータを集約し、タレント インテリジェンスを生成することにより、データの可視性を高め、長期的なプランニングを適切に行えるようにします。
適切なダッシュボードやレポーティングを使用することにより、人財獲得チームは以下を実行できます。
AI はこのような機能を通じてソーシングをトランザクション活動から戦略的活動へと移行し、ワークフォース プランニング、採用目標、ビジネス成長に役立つ情報を提供します。
AI が採用プロセスに広く導入されるようになると、機械がリクルーターを置き換えるのではないかという疑問が生じます。しかしこのような疑問は無用です。最も効果的な人財ソーシング戦略は、AI 中心でも人間中心でもなく、両者の連携を重視します。AI はリクルーターの能力を高めますが、インサイト、共感、信頼性が求められる業務を代行することはできません。
実際、最も成功を収めているチームは、人財を強化するために AI を活用しています。そうすることで人財が時間を節約し、手作業を削減し、集中力を高め、自身が最も得意とするタスク、つまり人とのつながりの構築に注力できるようサポートしています。
AI ツールは、スピード、一貫性、パターン認識が求められるタスクで優れた効果を発揮します。こうした強みを活用することにより、リクルーターは業務をスマートに行い、質を損なうことなく生産性を高めることができます。
AI は飛躍的に進化しましたが、感情的知性、文脈的ニュアンスを読み取る能力、道徳的判断力は持ち合わせていません。そのためソーシングを倫理的かつ効果的に行うためには、人間の関与が必要不可欠になります。
人財ソーシングに AI を導入するということは、テクノロジーをアップグレードするだけでなく、業務方法を変えることを意味します。AI の活用に成功している組織は、単にツールを導入するだけでなく、全社的な人財戦略にソーシングがいかに関与するかを再考し、リクルーターのワークフローを再定義し、責任あるイノベーションを創出する基盤を構築しています。
このような取り組みを行うためには、慎重かつ段階的なアプローチが必要になります。組織構造に適した試験運用を実施し、常に人財に配慮する必要があります。はじめに行うべき手順は、以下のとおりです。
ソーシング オペレーションの現状を把握することから始めます。リクルーターが最も時間を費やしているのはどのステップでしょうか?反復作業や一貫性のない作業が行われているのはどのステップでしょうか?手作業での履歴書スクリーニング、既知の候補者の再確認、同じ検索クエリの更新など、非効率的な定型業務は自動化の有力候補になります。
このプロセスでは、AI による可視化やコラボレーションによって改善できる摩擦点 (候補者の取りこぼし、採用マネージャの応答の遅れなど) も明らかにします。
AI で即時的価値を実現できるユース ケース (外部候補者のランク付け、アウトリーチ メールの生成、過去の有力な応募者の再発掘など) を特定する際は、慎重を期する必要があります。
まずはパイロット プログラムを策定し、独立したワークフローを使用してテストします。テストと修正を繰り返し、徐々に規模を拡大していきます。この段階では単に業務の自動化を目指すのではなく、AI の効果が現れている領域はより改善し、そうでない領域は排除することを目指します。
AI ツールの力は AI が活用するデータによって決まります。応募者追跡システム (ATS)、候補者関係管理 (CRM) プラットフォーム、社内人財異動システムが断片化されていたり時代遅れであったりする場合、AI の価値を十分に引き出せない可能性があります。
AI を大規模にロールアウトする前にデータ クリーニングに投資し、重複レコードの統合、スキル分類方法の標準化、ソーシング データと採用戦略の成果との明確な関連付けを行うようにします。
最先端の AI採用ツールを導入しても、人が使用方法を理解していなければ効果を引き出すことはできません。リクルーターはプラットフォームの機能を学ぶだけでなく、AI の提案を解釈し、出力を監査し、情報に基づいて意思決定を行う方法を学ぶ必要があります。
AI をデータの番人でなくコパイロットと見なすよう周知します。手間のかかる業務を AI で処理することにより、人財は戦略や候補者との関係構築に注力できるようになるという点をチームに理解してもらいます。
他の戦略的投資と同様、成功するかどうかは成果を追跡して改善できるかどうかで決まります。補充までの期間、採用の質、アウトリーチ エンゲージメント、リクルーターの生産性など、ベースライン メトリックを策定し、AI を導入したワークフローの測定値と比較します。
初めから完璧な成果を期待しないようにします。代わりにフィードバック ループの構築に注力します。つまりリクルーター、採用マネージャ、システムが連動して進化する中で、AI の効果が現れている領域はより改善し、そうでない領域は再調整するようにします。
AI は大きな可能性を切り開く一方で、新たな責任をもたらします。Workday の質問に対し、人事部門リーダーの 42% は、AI を活用する組織体制が十分に整っていないため、新たな AI テクノロジーを適切に活用するためには準備が必要になると回答しています。
人財ソーシングに AI を導入する組織は、公平性、透明性、コンプライアンスの基準を高く設定し、使用するツールおよびツールの使用方法が水準を確実に満たすよう配慮する必要があります。主な考慮事項は、以下のとおりです。
AI はリクルーターの今日の業務を変えているだけではありません。組織が将来的に人財を獲得する方法を形成しています。次世代の AI ソーシングは既存のワークフローを加速させるだけではありません。先を見据えたパイプラインの構築、対話型検索、常時稼働のインテリジェントな人財発掘など、これまでとはまったく異なる機能を提供します。
最も重要なことは、未来の人財ソーシングは加速化するだけでなく、よりスマートになり、連携性が強化され、極めて人間的になるということです。手間のかかる業務のほとんどが AI で処理される環境においてもです。この変化を受け入れることで、組織は今後数年間にわたって競争上の優位性を確保し、適応力を高め、競合他社に先んじることができます。
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